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手紙からはじまる物語 ― 見えない糸でつながる心たち ―  作者: 草花みおん
負けヒロイン

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その癖のある君

拝啓 その癖のあった君へ。


もしこの手紙が届くころ、

あなたはもう、あの仕草をやめているでしょうね。

それでも私は、あの癖のある君を思い出します。

あの頃、教室の光の中で、

あなたの指先を見つめていた私のことを――。


世界が変わる音は、だいたい無音だ。

大事件や運命の告白じゃなくて、視界の端でわずかに傾く首とか、指先が耳のあたりに触れる、その一瞬の気配みたいなもので、ひっそりと始まって、ひっそりと終わる。

これは、そういう静かな出来事の記録だ。

名前も、派手な出来事もいらない。ただ、毎日同じ席に座って、同じ方向を向いていた誰かがいて、私はその人の「考えるときの癖」を、誰より先に覚えてしまった。

恋、と呼ぶほど大げさじゃないかもしれない。けれど、あの癖があるだけで、私の一日はゆっくり輪郭を取り戻した。

その癖を、私はたまらなく好きだった。

そして――その癖が消えた日、私の世界は音もなく少しだけ形を変えた。

放課後の光は、黒板に残ったチョークの粉をやわらかく浮かび上がらせる。窓は西の低い陽を受けて鈍く明るく、教室の空気は、部活に向かう足音の前の、浅く長い息のように緩んでいる。

六列五席。座席表は、毎日同じ風景を保証してくれる地図みたいなものだ。私は左から三列目の四番目。机の角は少し丸く、天板には私のじゃない鉛筆の跡が薄く残っている。

前を向けば、窓際左から二列目の二番目に、彼がいる。たぶん、誰にとってもそこは「窓から二番目の男子」という記号の席で、誰にとっても同じ距離で見えているはずの人だ。けれど私にとっては違っていた。私は、そこにいる「彼」を毎日同じ角度で見ていた。


最初はただの偶然だった。先生の声が黒板の文字に追いつかない日、視線が迷子になって、黒板と窓のあいだでふわふわしていた。彼が少し首を傾げて、耳のあたりをチョンと掻いた。その一瞬、教室のざわめきがわずかに遠くなる感覚があった。

何でもない動作。痒かったのかもしれないし、ただの癖なのかもしれない。けれど、その仕草には小さなリズムがあった。先生の問いかけのあと、彼はすぐに答えない。半拍おくみたいに息を吸って、首を少し傾け、指先が耳のあたりに触れる。ほんの一秒もない。そこに「考えている」があった。私はそれを、見た。


翌日も、その次の日も、彼は同じように首を傾け、同じように耳のあたりを掻いた。毎日同じ時刻に鳴る遠い電車のように、気づけば私はその音を待つ人になっていた。

黒板を見ながら、ノートに日付を書き、空欄の行を一つ飛ばす。その間に、彼が「考える」。耳に触れる。私はペンを持ったまま、何となく心が整うのを感じる。

その仕草は、私にとっての合図だった。「今日も世界は昨日の続きをしているよ」と、誰にも聞こえない声で知らせてくれる合図。


もちろん、彼と話したことはない。名前は出席番号で知っているけれど、声の高さも、笑うときの癖も、私は知らない。知っているのは、首の傾きと指先の軌道だけ。

それで十分だった。少なくとも、最初のうちは。


「ねえ、次の現代文、また小テストあるのかな」

隣の席の友だち――舞が横から小声でささやく。私は教科書のページをたぐりながら、視線だけを前に残した。

「あるんじゃない。先生、好きだし、そういうの」

「だよねえ」

舞は私の目線の先を追うふうにちら、と前方を見る。

「……あの人さ、よく耳触るよね」

心臓が、机の下でちいさく跳ねる。

「え?」

「いや、ほら。先生がなんか問うた後とか。癖なのかなって」

「そう、かな。気づかなかった」

言い終えて、舌の先が少し苦くなる。私は気づいていた。いつからだって言えるくらい、知っていた。けれど口に出してしまった瞬間、私の「世界の合図」は、世界の共有物に変わってしまう気がした。

舞はあっさりと頷いて、プリントの角をそろえる作業に戻った。

「まあ、どうでもいいけど」

その「どうでもいい」は、舞のやさしさでもあり、世界の広さの残酷さでもあった。誰かにとって大事なものが、他の誰かには完全に透明なままでいる――教室はそういう場所だ。


日々は淡々と続く。私は特に変わらず、三列目の四番目に座る。前方二列目二番の彼は、相変わらず「考えるときの癖」をする。

小さなテスト用紙が配られる音、窓の桟に当たる風のうなり、机が少し擦れる鈍い音。そういうものの中に混じって、彼の指先が耳に触れる。

その瞬間、彼の時間と私の時間が、ほんのわずかに重なる。彼は私なんか知らないのに、私は彼の「迷い」を、ひとかけらぶん一緒に吸い込む。

それを恋と呼ぶのは、何だか照れくさいし、図々しいような気もする。けれど私は、あの仕草を待って一日を閉じるようになっていた。日没みたいに、それが終わると、今日の輪郭が決まる。


ある雨の日、教室の光は淡く白かった。窓の外を細い筋が斜めに走り続け、廊下の匂いがいつもより湿っている。先生は欠席で、自習になった。教室の音はばらけて、ページをめくる音と、ペン先が紙を擦る音と、誰かの笑いが遠くで立ち上がっては消えた。

彼はノートを開いて、しばらく何も書かなかった。私は数式を眺めて、意味のない図形を余白に描いた。

彼が、いつものように首を傾げた。指先が耳のあたりへ――そのとき、彼はふいに顔を上げて、黒板の左上を見た。そこには何も書かれていない。視線が宙で止まって、空白に焦点が合う。

その「」が、やけに長く感じられた。

そして、指先が耳に触れた。

ああ、と私は胸の奥で息を吐く。世界は雨でも、今日も今日の音を鳴らしている。


「ねえ」

また舞の声。

「最近、よく前見てるよね」

「前見ないと、黒板見えないし」

「いや、そうなんだけどさ」

舞は少し笑って、目を細める。からかっているわけじゃない。やわらかい、それでも的確な観察だ。

私は返事の代わりに、ペンで余白の円を塗りつぶした。黒が深くなるほど、言葉は薄くなる。


週が変わって、体育祭の準備が始まる。教室はいつもよりざわざわして、席から立つ人が増えた。彼も委員で前に出ることが多くなり、私は背中を見ている時間が長くなった。

背中には表情がない。それでも、首の付け根の筋が少し緊張していること、話を聞くときと話すときで肩の位置がわずかに変わること、そういう小さな変化を私は拾ってしまう。拾いたくなんかないのに、目は勝手に拾う。

「興味のないものは、見えても見えない」――誰かが言っていた。逆に言えば、見えてしまうのは、もう興味の中にあるということだ。私は、彼の仕草を見ていた。見ないふりをして、ちゃんと見ていた。


その日、委員の話し合いが終わって、彼は席に戻ってきた。机に鞄を落ち着ける所作はいつも丁寧で、椅子を引く音をできるだけ立てないように気を配る。そういうところも、彼の「考える」に繋がっている気がする。

私がノートを閉じるとき、紙の端が少しだけ手に引っかかった。顔を上げる。

彼が、こちらを振り返っていた。

目が合う。

世界がほんの少しだけ静かになる。

私は何も言えない。何も言う必要がないのに、言葉が必要な場面のようでもあり、必要のない場面のようでもある。

彼は、ただ、確認するように私を見た。

それだけのこと。

なのに、私の心臓は机の下で、今にも机を押し上げそうなほど熱くなった。

彼はすぐに視線を外して、前を向く。いつも通り。

けれど、机の上の光が、少しだけ形を変えたように見えた。


家に帰る道で、私はその瞬間を何度もなぞる。どうして、彼は振り返ったんだろう。私のノートの音が大きかったから? 気が向いたから? それとも、私が見ていたから?

考えても答えは出ない。考えている間にも夕方は進んで、商店街の魚屋の氷はとけ、スーパーの袋を持つ人の影が長くなる。

ふと、思う。

もし、いつか彼に話しかけられたら、私は何を言うんだろう。

――耳を、よく触るよね。

いや、それは変だ。変だし、失礼だし、何より、私だけの合図が、言葉にした途端に別のものに変わってしまいそうだ。

やめよう。言わないでおこう。

心の中で、何度もそう繰り返した。


翌日、朝の空気は澄んでいて、黒板の白がやけにくっきり見えた。私はいつも通りの席に座り、いつも通り前を向く。

先生が問いかける。

半拍の間。

首の傾き。

――指先が、動く。

耳のあたりに、チョン。

ああ、今日も。

胸の奥で、小さく、ひそやかに、何かが整う。

私はそれで十分だった。

そう思っていた。


昼休み、舞がパンの袋を歯で開けながら、ふいに言った。

「ねえ、知ってる? 委員の子、今度のリレー出るんだって」

「へえ」

「走るところ、見えるかな。席から」

「どうだろう」

私たちは他愛ない会話を続ける。パンの袋のビニールがかさかさ鳴る音と、誰かの笑い声と、机の下で揺れる足のリズム。

私は前を向く。

彼は、ノートを閉じて、水筒の蓋をひねる。

そして、ふいに、再び振り返った。


目が合う。

今度は、一秒分くらい長く。

彼が口を開く気配がした。


昼休みが終わる少し前、教室の窓際の光が白っぽく霞んでいた。

曇り空の午後は、誰の声も届きにくくなる。

その曖昧な光の中で、私はノートを閉じる音を小さく響かせた。

その音に気づいたのか、前の席の彼が、ふいに振り返った。


「ねえ、次って数学だっけ?」


目が合った。

彼の声を初めて近くで聞いた。思っていたよりも少し低く、柔らかい。

私は、頷くだけで精一杯だった。

返事をしなきゃいけないのに、喉の奥で言葉がつかえる。


「うん……たしか、数学。」


自分の声が、思っていたよりも高く響いた。

彼は軽く笑って、「助かる」と言った。

それだけで、空気が少し動いた。


机に置かれたペンが転がって、床に落ちた。

彼が拾おうとして身を屈め、指先が床を探す。

私は思わず立ち上がって――同時にそのペンを拾い上げた。


「ありがとう。」

「ううん。」


その短い会話のあと、沈黙。

私は何かを話さなきゃいけないような気がして、

けれど何を言えばいいか分からなかった。


彼がペンを持ちながら、首を少し傾げる。

その瞬間――指先が耳のあたりに触れた。

いつもの癖。

目の前で、たった数十センチの距離で、それを見る。


心臓の鼓動が、音になって聞こえそうだった。


咄嗟に出た言葉は、

考えるより先に口から滑り出ていた。


「……よく、やるよね、それ。」


彼が顔を上げた。

「え?」

「耳、かくやつ。考えてるとき。」


言いながら、しまった、と思った。

その言葉は、決して悪意のあるものじゃなかった。

ただ、いつものように観察していた“事実”を、そのまま声にしただけ。

でも、言ってしまった瞬間に、世界の輪郭が変わった。


「……そうかな。」

彼は、笑った。けれど、その笑いはほんの少しだけ、照れくさそうに歪んでいた。

「たぶん、癖なんだろうね。恥ずかしいな。」

「そんなことないよ。」

口の中が乾く。

「なんか……考えてるんだなって、わかる感じで。」


それは精一杯のフォローだったけれど、

彼は「そっか」と短く言って、前を向いた。

その背中の沈黙が、やけに遠くに感じた。


午後の数学の時間。

ノートを取る手のリズムが、いつもより落ち着かない。

視線を上げるたびに、

彼の後ろ姿が見える。

でも――

彼は首を傾げても、耳に手をやらなかった。


その事実が、黒板の数式よりもはっきり見えた。


“言ってしまった”。

その後悔が、じわりと指先に広がる。

言葉は風のようなものだと思っていた。

でも、風は残る。

透明なのに、触れた場所の空気を確かに変える。


放課後、窓際の机に夕陽が落ちて、

彼の横顔を少しだけ照らしていた。

その横顔には、あの仕草の影もなかった。


次の日。

授業中、彼は何度か迷うような素振りを見せた。

だけど、手は動かない。

意識しているのが、見ているだけでわかる。

人は意識した瞬間に、無意識を失う。

その無意識が、彼の魅力だったのに。


私はノートに、何も書けなかった。

まるで、あの癖が教室から消えたことで、

“観察する理由”まで消えてしまったみたいだった。


昼休み、舞がパンを食べながら、

「ねえ、昨日さ、あの人と喋ってたよね?」と言った。

私は、ペンのキャップを回す指を止めた。

「ちょっとだけ。」

「へえ、珍しいね。なんか話してるの初めて見た。」

「うん。たいした話じゃないけど。」

「そうなんだ。」

舞は興味を失ったように笑って、パンの袋を丸めた。

私は何も言わずに頷いた。

たいした話じゃない――たしかに、そうだった。

でも、私の中では、もう何もかも違っていた。


授業の合間。

彼がノートを開いて、また少しだけ考えるように首を傾げる。

私は無意識に息を止めた。

手が――動かない。

耳に触れない。

そのたびに、胸の奥が小さく痛む。


「直そうとしてるんだ。」

ふと、そう思った。

私の一言で。

私が壊してしまったのかもしれない。


その思いが、喉の奥で苦く溶けた。


放課後、彼は教室のドアを出る前に一度だけこちらを見た。

視線は短く、何かを言いかけてやめるような、そんな表情だった。

そのまま、廊下に消える。


教室の中には、夕方の光と、

私の中に残った“言葉の後悔”だけが残った。


机に手を置くと、

昨日までそこにあったはずの空気が、

ほんの少しだけ冷たく感じられた。


家に帰る途中、

私は信号待ちの間にふと立ち止まって、

空を見上げた。

街灯がまだ点かない灰色の空。

あの人の仕草が、もう見られなくなるかもしれない。

そう思った瞬間、

胸の奥で何かがすっと引いていくような静けさがあった。


“見ていたこと”が、

“知られてしまったこと”に変わった。


そしてその瞬間、

恋は、少しだけ現実に近づいた。


朝の光が、いつもより白く感じた。

教室の窓は開いていて、風がカーテンを揺らすたびに、

ページの端がぱらりと音を立てた。


前の席。

彼の姿は、相変わらずそこにあった。

だけど、もう――あの動きはない。


首を傾げることはある。

けれど、指先は机の上に止まったまま。

迷ったように一度動いて、それでも、触れない。


彼の“考える瞬間”を、

私は知っていたはずだった。

だけど今はもう、その合図を読み取ることができない。

音もなく、世界がひとつ静かになった気がした。


昼休み、舞が話しかけてくる。

「ねえ、あの人さ、あんたに話しかけた日、ちょっと照れてなかった?」

「え?」

「だって、次の日からずっと、なんか落ち着かない感じだったじゃん。気にしてるよ、絶対。」

「……そんなこと、ないよ。」

「ほんと?」

「ほんと。」


舞は、納得していないようにパンをちぎって、

「ま、あんたがそう言うなら」と笑って席を立った。


残されたパン屑を指で払う。

机の上の小さな欠片を、そっと集めるみたいに。

私の中でも、同じように、

“昨日までのあの瞬間”の欠片を拾い集めていた。


放課後、誰もいない教室。

夕陽が差し込み、床の上に細長い光の帯が落ちている。

その光の端に、彼の机の脚が影を落とす。


私は、自分の席に座ったまま、

ノートを開く。

そこに何も書かず、

ただ、机の上の空気を見ていた。


「あの仕草を、もうしないんだね。」


声に出してみた。

小さな声。

空気の中に溶けていくような声。

答える人はいない。


でも、言葉にしたことで、

少しだけ胸の中の痛みが形になった。


日が落ちて、カーテンの影が長くなっていく。

窓の外では運動部の声が風に混じっている。

その喧噪の中で、私はふと気づく。


――あの仕草が好きだったのは、

彼が“無意識で考えている時間”が、

世界でいちばん静かに見えたからだ。


迷っている人を見ていた。

答えを探している誰かを見ていた。

その瞬間だけ、彼は世界と一対一だった。


そしてたぶん、私は、

そんな“生きている瞬間”に恋をしていた。


翌週、彼が誰かと一緒に登校してきた。

クラスの空気が、少しだけ賑やかになる。

名前を呼ぶ声、笑う声。

彼が誰かと笑い合うその横顔を見て、

胸の奥で、静かに何かがほどけた。


寂しさでも、嫉妬でもない。――そう思いたかった。

けれど、ほんの少しだけ、

その笑顔の中に自分がいないことを、

体のどこかがちゃんと知っていた。


それでも、“もう彼は大丈夫だ”と思った。

無意識を取り戻すように、

彼は今を生きている。

私はそれを、遠くから静かに見ている。


授業の終わり、

彼が一瞬だけこちらを見た。

視線がぶつかっても、もう焦らない。

私も、小さく笑った。


彼の手は、耳には触れなかったけれど、

その代わり、ノートの上をまっすぐに動いていた。


「その癖が、たまらなく好きだった。

でも、もうあの癖をやらない君も、

ちゃんと素敵だと思う。」


心の中でつぶやいた言葉は、

チョークの粉みたいにやわらかく沈んでいく。


家に帰る道。

空は群青で、街灯がひとつずつ灯り始めていた。

歩きながら、私は思う。


あの頃の私は、

“誰かをまっすぐに見つめる”ことができる自分を知らなかった。

でも、知ってしまった今は、

もうそれを怖がらなくていい。


誰かを見て、感じて、

その気持ちを大事にできたなら、

それで十分なんだと思う。


窓の外で、夜が深くなる。

カーテンを閉める前に、一度だけ空を見上げる。

風が少し冷たい。


「その癖が、たまらなく好きだった。

あの仕草を覚えている私も、

ちょっとだけ、大人になったんだと思う。」


静かに息を吸い込む。

その空気の中に、

あの人の仕草が、まだほんの少し、

香りのように残っていた。


これを書きながら、

少しだけ昔の私に触れた気がします。

あなたを見ていたあの頃の私も、

もう大丈夫です。


その癖が、たまらなく好きだった。


今でも、教室の光の中に、

その仕草がひっそりと息づいています。


敬具。


この物語を書いているあいだ、何度も「観察」という言葉について考えました。

誰かを見つめることは、時に優しさであり、同時に少しの残酷さでもあると思います。

相手を見つけ、気づいてしまった瞬間に、その人の「無意識」はもう戻らない。

でも、それを恐れて見ないふりをしていたら――

私たちはきっと、誰のことも本当には好きになれないのかもしれません。


この「その癖のある君」は、そういう**“見てしまった”恋**の記録です。

恋というより、思春期の“発見”に近い。

誰かの一瞬の仕草に心を奪われて、

それが消えてしまったあとも、確かに世界が変わってしまうような、

そんな経験を持つ人が、少しでもこの物語に共鳴してくれたら嬉しいです。


恋の終わりは、失うことじゃなくて、

「そのときの自分を受け入れること」。

それに気づけたとき、

私たちは少しだけ、自分を好きになれるのだと思います。


その癖が、たまらなく好きだった。


でも――その癖を好きになれた自分も、

今なら、ちゃんと好きだと言える。


草花みおん

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