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爆乳ハーレム島の錬金術師  作者: 生姜寧也


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43/339

43:拳で抵抗される

 ビャッコの森、2層目。森の1層目と丘の木々が種類や密度を異にしたのと同様、この2層目も1層目とは様相をガラリと変えた。

 まあゲームだし、分かりやすくて良いけどね。ソロで採取してる時に間違えて深入りしてしまうってこともないし。


 ガジュマルのような所々にコブのある幹をした高木。シダ植物らしき、鳥の羽根を思わせる葉をつけた木々。更には遠くに水場も見え、そこにはマングローブのような水上植物の姿も。

 ヤベえ。ワクワクするな。アウトドア好きの血が騒ぐ。


「なんか色々と素材になりそうな物があるね」


 バナナっぽい果物も見られる。


「アレは種を持ち帰って、フィニス農園で栽培してるぞ」


「マジか。じゃあ市にも出回ってるのか」


「高いがな。果物は総じて高い」


 意外と所帯じみてるというか、「野菜が高い」とボヤく日本の主婦と変わらんな。

 俺の生暖かい視線に、エレザは少しムッとしたのか、


「変な生物も増えてくる。気をつけろよ」


 そんな風に釘を刺してきた。まあ確かに、層を進んだんだし、余所見や雑談に気を取られてる場合ではないよな。

 ポーラがヤラれた植物もあることだし、野生動物やモンスター以外にも注意しないとな。


 慎重に辺りを見回し、目的のファイティングフラワーを探す。名前から察するに、フラワー(小麦)をドロップするんだとは思うけど。ジャングルに小麦……まあ、そこら辺の生態は考えるだけ無駄か。


「エレザは、ファイティングフラワーとかいうのは見たことあるの?」


「いや。私もここまで来ることは、ほとんどないからな。見たこともない」


 地図帳付録のモンスター図鑑では確かにこの層に居るハズだが……あ。


「アレか……」


 俺の胴くらいまでの丈の植物だが、茎が異様に太く、葉っぱが団子状になっている。柿の葉寿司みたいにも見えるが……大きさは人の拳くらいありそう。


「見るからに殴ってきそうだな」


「うん。シャベルだとインファイトは避けられないか」


「私が斬ろうか?」


「いや、そこまで頼むのは……」


 流石に忍びない。

 俺はシャベルを構えて、ソロソロと忍び足で近づく。草の天辺には穂がなっているんだけど、なんとなく垂れてる方向が前かなと思い、その後ろから回り込む。

 

「……」


 あと数歩の距離まで詰め、そこで一気に飛び込んだ。スライムの時と同様、槍の要領で突き刺しにかかる。取った。

 ――そう思った瞬間、


「かはっ!」


 腹に衝撃。勝手に息が漏れた。

 視線を下げると、葉っぱを丸めて出来た拳が土手っ腹にめり込んでいた。クソッ。前後とかなかったっぽい。 狙いすましたカウンターだ。吐きそうになるが、グッと歯を食いしばる。そして構えていたシャベルをゼロ距離から横薙ぎに振るう。

 だが、


「っ!」


 もう1つの拳で防がれた。シャベルの横側に当てられ、ゴンと鈍い音。

 厄介だ。こっちはシャベル1本なのに、向こうは葉の拳が複数あるんだもんな。

 が、そこで。


「任せろ!」


 エレザが挟み撃ちの要領で、反対側から剣を振るった。フラワーの拳は間に合わず、茎が真っ二つに。ズルリと上半分が滑り落ちる。地面に落下すると、ドスンと大きな音を立てた。結構、重たいらしい。


「ふう……終わったか」


「ナイスガッツだったぞ。殴られてもタダでは死なん。戦士の才能があるな」


「そいつはどうも」


 腹をさする。まあパンチで良かったよな。アレが切り裂く系の攻撃だったら、ハラワタをブチ撒けることになってたかも。


「エレザもフォロー、ありがとう」


「なに。偶然だが、アキラが囮になったようなものだからな。簡単な仕事だった」


「いや、それでも。咄嗟の機転、拳の迎撃より速い一閃。やっぱり見事だったよ」


「そ、そうか? う、うむ。そうか」


 ちょっと嬉しそう。引き締めてるつもりだろうが、口元が緩んでる。


「ほ、ほら。アイテムが落ちてるぞ。素材になるんじゃないか?」


 照れ臭さを誤魔化すように、エレザが指さした先。麦の穂が数十束単位で落ちていた。いや、さっきの1体からこの量はおかしいでしょ。

 ……まあこれも気にしたら負けやね。採取効率が良いのは助かるし。


「しかし、雑草にしか見えんが」


「いやあ。コイツがあれば、飯のバリエーションは飛躍的に上がるよ」


 小麦粉が手に入るんなら、パン、麺類、揚げ物と。まさに食事革命が起こせる。

 いやらしいけど、選挙が終わるまでは製造方法とかは独占させてもらうつもりだ。フラワーの文字を見た時から決めていた。


「そうなのか? 雑草飯……」


 これをふりかけみたいに白米にまぶす光景でも思い浮かべてるんだろう。エレザは渋面を作っていた。


「もっと美味しい物だよ。さて、あとは巨大豆という素材だが……」


 こいつはモンスターじゃないと思うんだよね。地図帳付属のモンスター図鑑的なヤツには載ってなかったし。


「うーん」


 周囲を見回しても、中々どうして。それらしい姿が見えない。もしかして、この層じゃないのか? 第1層で見落としたか、はたまた更に森の奥、3層以降とか?


「そもそも巨大豆。キョダイズ、で合ってるんだよな。キョダイマメ、の方だと……」


「ダイズっていう物が、私には分からないんだが……」


 まあそうか。ていうか、俺も大豆の植物自体は見たことないんだよな。薄褐色の豆は見たことあっても。

 多分、小さな苗みたいな……でも名前に「巨大」と付いてるし。


「…………」


 周囲を歩いて探す。腰を曲げて地面に視線を落としながら。巨大とはいえ、豆のサイズ比で言えば、草はせいぜいが俺の腰くらいまでの丈じゃないかと。

 その想定で動いていたら、ドンとお尻に何かが当たった。エレザかな、と振り返るが……


「なんだこれは……」


 樹の幹、じゃない。ブロッコリーの茎でもない。緑色の極太い……


「巨大な……草か?」


 エレザも近づいてきて、空を見上げながら。俺も釣られて首を動かす。

 天まで届こうかという異常な長さの草茎。

 半ば直感で、レシピ帳をアポートで取り寄せる。ページを開くと、「巨大豆」の字が虹色の微光を帯びており。目の前の巨大植物もまた、それに共鳴して僅かに虹色を放っているのだった。

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