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爆乳ハーレム島の錬金術師  作者: 生姜寧也


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333/339

333:大砲の応酬

「アキラ! ここは任せろ! 誰一人、崖には落とさせはしない!」


「行って〜〜! 聖樹様の下へ〜〜」


「そこで迎え撃つっす!」


 それしか……ないのか。こっちは50%だけど、それでも。

 

(女神さん!)


『もう少し、もう少し待って!』


 くっ。仕方ない。ヤツの方も半端なエネルギーで撃つんだ。こっちもやってやれんことは無いハズ。


「ヘシカ!」


 ――フィー!


 エレザから離れて駆けてくる放屁鹿に飛び乗る。パッと一度振り返ると、黒砲は更にドス黒いオーラを纏っていた。今にも撃ち始めてしまいそうだ。


「急いでくれ!」


 既に、風のように疾走するヘシカを急かすのは大変心苦しいが。


 ――ぷぼっ!


 大きな塊っ屁を放って、加速してくれる。

 グンと慣性の力が掛かって、咄嗟に体勢を低くした。

 そしてそのまま、俺たちは丘を北上、聖樹様の下へと辿り着いた。


「アキラ!」


 銛を振るう鎧武者と、木造りのオンボロカー。スライムの死骸(赤黒い物と深緑の物の2種類)が大量に転がっている。そして生体の残りは結構少ない。状況は優勢のようだ。


「2人とも、ありがとう!」


 持ち堪えてるどころか、押し返してくれてるなんて。

 と思ったのだが、2人の雰囲気は暗い。


「……」


 黙ってニチカが指さした先。ボロボロになった聖樹様の樹肌があった。もう中の組織まで見えてしまってるようで、樹液が血のようにダラダラと流れ続けている。


「そうか……」


 持ち堪えたという表現は、この聖樹様にこそ相応しいもので。2人の心境としては、いわばあの部分を捨てたおかげで善戦できたという感じだろう。

 犠牲は、小さくない犠牲は、既に払ってしまってるんだ。


「それより! そっちは良いのか!? 敵の親玉を放っておいて!」


 鎧の中から大声を張り上げて訊ねてくるニチカ。

 そうだ。今は一刻を争う。諸々は置いて、こちらの事情を優先させてもらう。


「ニチカ、アティ! 俺は今から粗チン砲を撃つ。その間、そのスライムたちを近づけないようにしてくれ!」


「な!?」


 2人の驚愕は分かってる。まだ半分のエネルギーしか貯まってないのに、撃って良いのか、と。


「説明してる暇は無い! 頼んだ!」


 俺は粗チン砲を肩に担ぐ。素人でも容易に扱えそうな、そういう頼りない軽さ。

 比して。前方遥か数百メートル先でも良く見える聖滅の黒砲。まるきり、粗チンVS黒光りする巨チンの構図だ。

 ……勝てるのか? こんな粗末なチンポコで。


「っ!?」


 こちらの葛藤など待ってくれるハズも無く、遂に黒砲の口から、


 ――ドウン!


 鈍く重たい音を伴って、ビームが発射された。俺の方も、慌てて。


「粗チン砲、発射!」


 引き金を握り込んだ。こっちは恐らく白いレーザーが飛び出すと思うんだけど……


「なんかモッタリしてる……」


 動きが遅い。自転車くらいの速度しか出てない気がする。そしてそのまま、黒い光線とぶつかった。ベチャッと少し広がった感じに見えて、瞬く間に押され気味。


「マズイ! なんか当たりが弱いし、全体的にショボい」


 よく見れば、なんか真っ白じゃなくて軽く濁ってるし。これ、ほとんど男汁なんじゃないの? 

 俺は思わず背後を振り返る。懸命に戦っているニチカとアティ。車と銛の連携で、スライムをこちらに来させないようにしてくれてる。

 もし押し切られたら彼女たちまで、黒い濁流に呑まれてしまう。そして聖樹様、更にはその地下に控える小聖樹まで。

 

「くそっ!」


 ここまで来て、やっぱりダメなのか。


 ――ははははは! 


 畠山の哄笑がここまで響いてくる。

 そして更にビームの力が強くなった気がする。もしかして、ロスマリーたち周囲の不安や焦りも吸い取っているんだろうか。


「っ!!」


 どんどん押し込まれてくる。白い層のすぐ向こう側に黒い塊が見えた。


「アキラ!!」


 ――フィー!


 背後のみんなを思うと、涙が出そうになる。ダメだ、嫌だ。守りたい。こんなところで終わりたくない。もう1回、ちゃんと選挙をやって勝つんだ。それで、この島で暮らすんだ。

 シェレンさんの手料理を食べて、ポーラに勉強を教えて。エレザに剣を教えてもらって、たまにはニチカと漁に出て。アティにベッドを作ってもらわないといけないし、フィニスとピアップルの栽培も頑張ってみたい。クローチェと島民の和解も手伝ってあげたいし、ロスマリーの現場作業デビューは冷かさないと。ハス貸しがハリアンさんの足跡を追うのも手伝うし、放屁鹿たちは腸に絶対何かしらの問題を抱えてるから診てやりたい。


「……終われない。負けられない」


 悪感情が黒砲に力を与えるというのなら。ポジティブな感情は、粗チン砲に力を与えてくれるんじゃないか。

 俺は思いっきり息を吸い込んだ。そして、


「俺は、この島が大好きだー!!!」


 喉が裂けても構わない。それくらいの気持ちで、あらん限りに叫んだ。


「シェレンさんが好きだ!! ポーラが好きだ!!」


 最高の母娘だ。とっくの昔に第2の家族だ。


「アティが好きだ!! ニチカが好きだ!!」


 不器用な子たちだけど、愛おしい。

 背後から2人の視線を感じるけど、気にしない。


 ――ぎゃはははは! 遂に敗北目前で気が狂ったか!? コイツは傑作だ!!


 雑音が耳に入るが、それも完全に無視。

 猛る想いのままに、


「エレザが好きだ!! フィニスが好きだ!!」


 強くて優しくて、でも時々弱っちくなるエレザ。フワフワで掴み所が無いようで、芯のシッカリしたフィニス。どちらも魅力的すぎて目が離せない。


「ロスマリーが好きだ!! クローチェが好きだ!!」


 祖母のことや視力のこと、見た目のこと、生まれのこと。2人とも色んなものと戦いながらも優しさを失わない素敵な少女たちだ。


「ハス貸しが好きだ!! ホーヒーとヘシカも、メロウさんたちも! 漁師や農園の人たちも! みんな、みんな大好きだ!!」


 モブもサブも。俺にとっては、みんな島の仲間だ。

 と。そこまで吠え散らかしたところで。


 ――な、なんだ!?


 畠山の慌てたような声。俺も気付いている。

 粗チン砲から放たれる白い塊が、力強いレーザーへと変わっていること。そしてその白い光が徐々に黒い光を押し返し始めていることに。

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