330:充填完了と急転直下
もはや誰のものかも分からない乳頭を頬張りながら、6発目を発射する。誰かが俺の乳頭を舐めてくれている。他の人より舌のザラザラが強いから、クローチェだろうか。そして誰かが俺のキンタマをしゃぶってくれていて、スティックの方は多分エレザかな? ハス貸しかも。もう分かんないや。
「あ……ああ……」
とにかく出した。全部出した。もう一滴も残っちゃない。ミイラみたいな見た目になってても驚かないよ。
「アキラ? 大丈夫ですの?」
「ヤバいっす。目が閉じそうっす」
「体が休息を求めてるんだよ」
「そうだな。体力を使い果たしたんだろう」
「なら少し寝かせてあげましょう」
フワフワのおっぱいに両頬を包まれながら、俺は急速に意識が遠のいていくの感じていた。そうか。休ませてもらえるのか。
……ああ。気持ち良い。柔らかな膝枕とおっぱい。瞼が重い。抗えない。
そうして俺は、事切れるように意識を手放した。
………………
…………
……
ふ、と。
耳が何かの音を拾った。眠りの間隙を縫って滑り込むように。
――チン……丸。
ん。
――チンポコ丸。
俺を呼ぶ声。女神さん……ではないけど、女の人の声。
――低所得写生チンポコ丸。
涼やかに響く美しい声に、俺の意識がゆっくりと覚醒する。
――気が付きましたね? チンポコ丸。
アナタは一体?
――すぐ傍にあります、小聖樹です。
なんと。以前、ポーラがその声を聞いたことがあったけど。俺にまで聞こえてくるとは。もしかして半覚醒のような今だけかも知れないけど……
――聖樹に危機が迫っています。お願いです、チンポコ丸……どうか。
そこで声が遠くなる。聞き返そうと、意識をハッキリ持った瞬間、
「あ」
瞼が開いた。そして声も気配も消えてしまうのを感じた。パスが切れた、ということを理屈でもなく感じ取る。
「アキラ。起きたのね?」
俺はマットレスの上に寝かされていたみたいで、他の面々は自分のスケベ下着を畳んでいるところだった。恐らく着替えて、マットレス付近の汚れ等も清掃して……その後という状況か。
「……何分くらい眠ってましたか?」
「30分程度よ」
「いびきかいてたよ~~」
30分。もう女神さんの修正パッチは大詰めの頃なんじゃないのか。あるいは難航しているのか。
ていうか、そうだ。聖樹に危機が迫ってるって。
「ああ、もう」
落ち着こう。まずは1つ1つ。
(女神さん。女神さん)
呼びかけるが、しばらく返事が無い。嫌な汗をかき始めたところで、ようやく。
『……アキラ? 呼んだ?』
良かった。繋がったことにまずは安堵する。
『ゴメンゴメン。今度はガチでプログラミングを手伝わせてたんだ。大天使に』
あ、自分がやってたんじゃないんだね。
『まあ元をただせば、あの子のせいだしね。サボらないよう監視してたんだよ』
(なるほど)
って。悠長に話してる場合じゃなかった。繋がったんなら、いの一番に訊ねなくちゃいけないこと。
(女神さん、聖樹様の様子を見て。何かおかしなことが起きてる?)
『ん? ウィドナの屋敷は定期的に見てたけど……聖樹の方?』
訝しげな声を出しながらも、そっちを覗いてくれているのか、少しの沈黙。そして……
『あー、やられたね。キングは別の場所に居たのか』
(え?)
『聖樹のすぐ傍まで高反発スライムたちが進軍してる』
(マ、マジで!?)
『新種の深緑のヤツまで居るよ』
泣きっ面にハチ状態か。
(行かないと!)
『いや、マズイなこれ』
(え?)
更に何かあるのか。
『畠山のヤツは、島民を引き連れてセフレ川の方へ向かってる!』
嫌な予感しかしない。
どうする? 前門の虎、後門の狼。ていうか、これだけ俺の隙をついて行動を起こしてくるって、やっぱ間者が紛れ込んでると見て良いな。突き止めたいけど、今はその余裕すら無い。
「みんな、すぐ出発だ!」
と言いつつ、どっちを先に行くべきか。
『二正面作戦だよ。ほぼ同時くらいに進行してるから! 車でスライム軍を止める班、小麦粉を持って島民たちの動きを止める班!』
ありがたい。やっぱり何だかんだ、頼れる神様だよ。
「どうしたの!? 何かあったの?」
「ああ。スライム軍が聖樹様を狙ってる」
そりゃ大変だ、とみんな血相を変える。
「それと、畠山のヤツが残りの島民たちを川の方へ連れ出してるみたいだ」
「なんと! もう勝ち目が薄いから、道連れにしようとしとるんじゃないか!?」
メロウさんの推測は、正解かも知れない。
ただ、あまりに本人の意思と乖離した行動は取らせられないハズ。投身自殺なんて無理じゃないか。けど、あの狡猾な床オナ畠山のこと、何かその無理をさせるための策があるのかも知れない。
「アティは車に乗ってスライム軍に体当たり。ニチカは俺の鎧を着て、銛で高反発を削って! エレザはスリングショットと剣で!」
指示した全員が即座に動き出し、準備を進める。アティも俺が留守の間、運転の練習をしていたらしいし、何より器用だ。きっと大丈夫。
ニチカも鎧着用での戦闘は初めてだが、ここも信じて送り出すしかない。
「俺とフィニス、クローチェは丘の東から回り込んで、小麦粉を撒く。海風に乗せるんだ」
2人も頷き返してくる。
「ワ、ワタクシも! おばあ様に言葉を掛けてみますわ!」
ロスマリーの提案に、俺は逡巡する。創作物なら、孫の言葉が暴走を止めるなんて展開もあるだろうが。ここは創作物の世界であっても、俺や畠山は異分子だ。
……けどまあ最悪、全く効果が無かったとしても、ライトの操作くらいはしてもらえるか。
「分かった! ついて来て!」
これで各班のメンバーが固まる。
「ボクたちは……」
「ポーラは小聖樹が何か伝えてくるかも知れないから、ここに残っていて! 他のみんなも待機で!」
小聖樹の言葉が聞けるのは彼女だけだからね。
そうして俺たちは行動を開始。まずは別働隊の3人にキスをして。車ごと転移していくのを、祈りを込めて見送った。合流までどうか無事で居て、と。




