304:年長組と合流
さてと。それじゃあ、ここから反撃開始だ。
と、その前に。フラフラと銀妖精さんが飛んでくるのが見えた。何事か、と身構えたが。
「凄いね。ハリアンより速かったよ。約束通り、ルナストーンの欠片をあげるね」
まさかのサブイベントクリアのお知らせだった。けど、何故だ? 俺はさっき転移装置を使って樹上に行ったのに。以前「ワープは無効」と言ってたハズだが。
と、そこで。ポーラが閃いたという顔になり、
「クローチェなんだよ! さっき凄いスピードで登ってたんだよ!」
「あ……」
なるほど。そういうことか。そして今のタイミングでやって来たのは、クローチェが完全に味方になったことで、完了フラグが立ったからかな。
「え? ウチ? え?」
事情を全く知らない当の本人は、ひたすら困惑している。
ただ、
「大手柄なんだよ!」
「ありがとう! 助かったよ!」
よく分からないながらも、俺たちに感謝され、照れ笑いを浮かべた。
しかしこれで、『粗チン砲』の素材が1つクリアされたな。我が家に帰れるか不透明な今、ここで現地調達できたのは助かる。
「それで、次は何をしますの?」
一段落したところで、ロスマリーが訊ねてくる。俺は1つ頷いた。まあ次やることは決まりきってるよね。
「捕らえられている人たち以外のみんなと合流する」
「お母さんなんだよ!」
「うん。後は一緒に居るというハス貸し。そしてセイリュウ2層に逃げ込んでるアティ&ニチカ組と合流するんだ。そして最後は、牢を破ってフィニス家とアティ家の面々を救出する」
その際には、エレザかコレッタの妨害が予想される。エレザとは戦いたくないが、同時に「取り戻す」チャンスでもあるんだよな。
……まあ今は取り敢えず、みんなの救出に向かおう。
「まずは一番手っ取り早い、ウロの先の石室に向かうよ」
なにげに妖精郷側から行くのは初めてだね。
「了解なんだよ。お母さん、意外とへこたれやすいんだよ。早く合流するんだよ」
まあうん。可愛い人だもんな。ウロの先に逃げ延びたは良いけど、そこから途方に暮れてションボリしてる可能性は大いにある。
というワケで、俺たちは気持ち早歩きで目的地へと向かった。石室に繋がる装置の前に陣取り、
「2人とも悪いけど、シャツを脱いで幕を作ってね」
「ハリアンライトの光を籠らせるっすね?」
道すがら、ある程度の説明はしておいたので、初見のクローチェもスムーズに協力(ドレスのロスマリーは不参加)してくれた。プルンプルンと瑞々しい乳房が4つ。そっと賢者の石を握って、平常心を保つと。
「よし、じゃあ所定の位置について」
俺はライトを2つ転がした傍に座り込み、みんなは装置とライトと俺を覆うようにシャツを広げる。
コツンコツンと叩いて、光を出し……俺たちは無事、石室へと転移した。
と、すぐに。
「アキラ! ポーラも!」
「ロスマリー!? クローチェ!?」
シェレンさんとハス貸しは、俺たちの姿を認めると、ひたすら人名を叫ぶボットと化してしまった。
駆け寄ってきて、きつくハグされる。シェレンさん、やっぱり心細かった模様だ。
「よしよし」
年上だけど可愛すぎる彼女の頭を優しく撫でる。
まあ実際、女神アイの存在を知らない彼女たちからすると、俺が見つけてくれるかどうか不安で仕方なかっただろうし、無理からぬことだけどね。
「来てくれるにしても、だいぶ後だと思ってたよ。あの温泉前の石を主体に使うと思ってたから」
ハス貸しもそんなことを言う。確かにこの石室からのルートはお役御免感あったもんね。
まあとにかく、こうして2人と無事に合流できたのは幸いだった。
「2人を運んでくれたのは、放屁鹿の2体なんだよね?」
「え、ええ。あのアキラくらい大きなオナラをする鹿たちよ」
……いや、あんなにデカいのはしたことないと思うけど。まあ今は良いや。
「送り届けてくれた後、2体は林の中へ逃げて行ったよ」
ハス貸しが顛末を教えてくれる。そうか、逃げおおせたか。ホッと胸を撫で下ろす。もういつの間にやら、ホーヒーとヘシカもすっかりファミリー認定してるよね。
「ボクもまた触りたいんだよ。オナラは勘弁して欲しいけど」
オナラはセットだから、それは無理なんだけどね。触ってるうちに絶対こく。
「無事に全部終わったら、みんなでお礼をしに行きましょう」
「そうですね。無事に全部終わったら」
そのためには、引き続き仲間を解放して、戦力を取り戻さないといけない。そして全員で畠山に打ち勝つんだ。
「次はニチカとアティですわね」
ロスマリーが例によって例の如く、仕切りたがりを発揮するが……
「そういえば。なんでロスマリーとクローチェが居るんだい?」
「そうよね。何というか、ウィドナさん勢力よね?」
おっと。そこの説明からか。
俺は手短に、転移からここまでの流れを話した。
「そう。私たちが居ない間に、そっちも色々と奮闘していたのね」
「主におちんちんが奮闘してたんだよ」
まあ合ってるけど。
「とにかく、クローチェはこれからは自分の意思で生きられるんだね?」
ハス貸しが熱のこもった声で確認してくる。同じ湯を分かち合った同士、それに同じく黒い乳頭を持つ者同士、それなりに気にかけてはいたんだろうな。娘のコレッタも操られているから、他人事ではないしね。
「うん。これからは仲間だよ」
「アキラ……」
「というか、床オナを倒して、もう一度ちゃんと選挙してアキラが勝てば……敵も味方も無いんだよ!」
そうだな。それが最高の展開だ。そして実現しなくちゃいけない未来だ。
「……行きましょう。次はセイリュウの2層ですわ」
やっぱり最終的にキミが仕切るんだね、と少しだけ笑ってしまった。




