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爆乳ハーレム島の錬金術師  作者: 生姜寧也


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26:ようやく風呂に入れた

 ふと腕時計を見ると、既にあれから1時間以上経っていた。9時半を回っている。これならもう、誰も入ってないだろう。


「あ……」


 ハンモックの下、居間を見ると、ポーラは既に居なかった。寝室に行ったんだろう。シェレンさんがチクチクと針仕事をしている微かな音だけがしていた。


「あら? もう良いの?」


「え、ええ。明日も早いですから」


 投光器なんてあるハズもないこの島。土木工事は日のあるうちしか出来ないんだから、午前は出来るだけ早く動きたい。


「それは?」


 音を立てないようにハンモックから下り、シェレンさんの傍へ。糸で仮縫いしているのは……


「エレザの服よ」


「ああ、そうか。そうですよね」


 半分くらいは俺にも責任があるヤツだ。申し訳ない。

 しかし、本当にシェレンさんは働き者だな。教師業の合間に俺の選挙関連の交渉もしてくれて……帰ってきたら家事。オマケに、こうして服飾も。


「俺も頑張ります。この家にお金を入れられるように、一生懸命働きます」


 つい宣言してしまった。聞かれてもないのに、恥ずかしい。だけど、シェレンさんは少しだけ目を丸くした後、


「はい。頼りにしてるわね」


 と、優しく微笑んでくれた。ここにも女神が居るなあ。






 片手で松明を持ち、もう片方の手で水桶と、香料の入った小瓶を胸に抱える。この香料、キンモクセイのような良い香りがする。花を絞って出したエキスらしいが、これを体に塗り、香りを付けるそうだ。

 石鹸より香水に近い物かな。


「汚れを落とす系のアイテムも錬成したいところだな」


 本当に作りたい物が多すぎて困る。まずは明日のレンガ敷設が上手くいくかどうかが先だろうに。


 道を進んでいく。月や星の灯りと、松明のオレンジに照らされながら、夜道を1人。なんか異世界なのを忘れそうになるな。趣のある日本の田舎道みたいだ。

 やがて目的地に着いた。人っ子一人いない。


「おお。貸し切りだな」


 早速、服を脱いで全裸になる。不測の事態に備えて、桶でスティックの方は隠しながら、湖へと入る。冷たいのかと思ったら、微妙にぬくい。湯気は立ってないので、温泉未満の温度だとは思うが。


「なんにせよ、水風呂じゃないのは助かるな」


 全身を浸かった。気持ち良い。かなり水深は浅いみたいだし、これは確かに風呂利用に打ってつけだな。特に今みたいな暖かい季節なら……


「って」


 斜め前方。誰かがやって来た。


「ま、マズイ!?」


 周囲を見回す。少し離れた所に、水底から突き出した岩石があった。その裏に慌てて隠れる。なるべく水音を立てないように慎重に。


 ワガママ言ってまで、下半身の秘密を守り通したのに。ここまで来て、見られたらアホだよ。

 息を殺せ。誰か分かんないけど、あの方角から来たなら、仮に岩の手前まで来られたって見えないハズだ。


 ――ジャバ、パシャ、パシャ


 って、本当にこっちに来たよね。なんでだ。


「ふう。ここは落ち着きますわね」


 ん? この声、この話し方。


「後ろは岩ですから、誰にも回り込まれないという安心感が良いですわ」


 岩の後ろに人が居るんだよなあ。申し訳ないことに。


 俺はそっと岩の上から向こうを覗いてみる。美しく豊かな金髪が見えた。日本人が染めてるヤツじゃない。天然の光沢があった。

 やっぱ、ロスマリーか。


「……」


 慎重にしゃがみ直す。音を立てないように。心臓の鼓動が極限レベルまで速くなってる。

 日本じゃないから、居るのがバレてもノゾキ犯と罵られることはないんだろうけど。だからって、そう簡単に開き直れるモンじゃないよね。


「それにしてもシェレンさんったら……やけに侵入者の肩を持ちますわよね」


 ん。独り言なんだろうけど……これは昼間、シェレンさんが交渉に行った時の話か。


「……ワタクシも。2週間は厳しすぎるとは思いますわ」


 え? それじゃあ!


「でも。ルールはルールですわ」


 ありゃ。


「島に侵入者ある時、そしてその者に直ちに危険なき場合……2週間の猶予を与えて働きを見よ」


 そんな決まりがあるのか。ロスマリーの自由裁量で仮釈放やその期間を決めたワケではないようだ。

 以前にも、侵入者が居たってことだろうな。


「お祖母様も……賛成なさいましたし。仕方のないこと、ですの」


 声の響きからして、罪悪感から目を逸らそうとしてるような雰囲気があった。彼女は俺が選挙で負けて、島外追放(=高確率の死)の憂き目に遭うと思っているようだ。


 その独り言を最後に、ロスマリーは無言になった。その代わり、パシャパシャと体や髪を洗っているだろう水音が聞こえてくる。


「……」


 ロスマリーも冷酷なワケじゃない。でも秩序を保つ、か。


「はあ。サッパリしましたわ」


 バシャッと一際大きな音がして、ロスマリーが立ち上がった気配。そのまま水音を立てながら歩き去っていくようだ。

 またそっと岩から顔を出し、確認する。背中までかかる長い髪が、月明かりに照らされていて、絵画のようだった。


 帰りは俺の脱ぎ散らかした服が散乱してる辺りの岸を上っていたから、ヒヤヒヤしたけど、ロスマリーは気付かなかったようだ。暗かったからかな?

 まあ何はともあれ。


「なんとか……なったか」


 胸を撫で下ろす。危機は去りました。

 俺も少ししてから、湖を上がる。体拭き用に持ってきた布で拭いてみたが、中々水気が落ちなかった。タオルって地味に凄いんだなあ。失って初めて有り難みに気付いたよね。


 家に帰ると、灯りが消えていた。忍び足で中に入り、カゴの中の小さな光石だけ叩いて点けた。

 やはり居間は無人。シェレンさんも既に床に就いているようだった。そして、テーブルの上にズロースとも股引ともつかない下着が置いてあった。使え、ということだろう。


「パンツも2日履いてるもんな」


 日本に居た頃じゃ考えられない。ありがたく使わせてもらおう。

 履き直し、歯も磨いて。「パジャマも欲しいな」なんて調子乗ったことを考えながら、ハンモックに入ると、一瞬で眠りに就いていた。

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