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爆乳ハーレム島の錬金術師  作者: 生姜寧也


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235/339

235:やったか!?

 腹這いになったエレザが岸から頭だけを出す。俺はその下半身をガッチリ押さえ、滑落を防ぐ係。当然、彼女はハーネスも着用済みなので、二重の事故防止体制を敷いている格好だ。


「もう少し前に出るぞ」


 そう言った後、エレザは腰の辺りまで崖の延長、中空に晒してしまった。そしてそこから体勢を変えて横を向く。丸太橋を正面に捉え、目を凝らしている様子だ。

 岸から丸太中央の大穴内部に矢を撃ち込むには、こういう無理な体勢を強いられるのは分かってはいたが。


「ぐ……」


 エレザの腰とお尻を押さえこむように、体重をかける。ムチムチの感触を楽しむ余裕もなく、落とさないために全力だ。


「……あ、アレか。見えたぞ」


「よし。それじゃあ、すぐに射る体勢に入ってくれ」


 俺の限界が来る前に、と付け加えたくなったが、格好悪いのでやめておく。

 というか、エレザもまた腹斜筋で上体を起こし続けている状態なので、言われずともだろう。


「……」


 彼女は肩に着けたホルダーから弓を抜いた。傍で控えていたニチカが、かがんで毒矢を渡す。矢筒に入れてると落っことしそうだったので、この形を採った。


「ふう…………」


 大きく深呼吸するエレザ。ニチカは音を立てないように下がり、俺も身動ぎ1つせずに待った。

 5秒、10秒、20秒……


「っ!」


 長い長い集中の後、エレザは矢を放った。


「やったか!?」


 湧き立った漁師たち。だが、その言葉を引き金にしたように、大穴からハチが数匹飛び出してくる。


「すまない。外した。もう一射」


 ニチカが慌てて矢筒から、もう1本取り出して渡す。


 ――ブブブブ


 羽音が大きくなってきた。斥候に出てきた兵隊バチは……5匹ほどか。黒の体に黄色い縞模様。やっぱりスズメバチに似てるな。


「……」


 エレザは構えたまま、まだ撃たない。極限まで引き絞られたゴム部、指先は微動だにしない。ハチの姿は、もうハッキリと見える。大きなアゴは……アレで木を食い破るのか。人間も噛むのかは分からないけど、やられたら皮膚なんて、ひとたまりもなさそうだ。つまり大穴を布で塞いで凌ぐ作戦なんて、ハナから無理だったっぽい。また見通し甘男だったか。


「お、おい。エレ」


 痺れを切らしたニチカが声を掛けようとしたのと同時。エレザは唐突に矢を放った。そしてそれは今度こそ大穴の最奥まで届いたらしく……押さえている彼女の体から緊張が抜けるのが分かった。


「当たったのか?」


「ああ。ど真ん中を撃ち抜いた。引っ張り戻してくれ」


 言われた通り、エレザの腰を掴んで、岸側へと引き込む。まずは彼女を滑落の危険から遠ざけて一安心、と言いたいところだけど。


「来るぞ! どうする!?」


 ニチカの鋭い声に、再び丸太橋の方を見やれば、既にハチ5匹は目と鼻の先まで迫っていた。


「どうするも何も……はたき落とすぞ! 噛まれるとヤベえ!」

  

 幸い、見たところ大きなアゴが重いのか、動きは遅そうだ。はたき落として、確実に殺せば5匹くらいなら、何とかなる。多分。

 俺はシャベルを構え、アティも同じく。漁師たちには避難して状況を見守ってもらう。エレザも剣を携えて、いざ。


「おらああ!」


 思い切りシャベルを振り下ろして、ハチの体を叩く。カツンと良い音がしたが……マジか。アゴで受けたらしい。地面にはたき落としはしたけど、顔が上を向いている。すぐにブーンと音を立てて飛び上がってきた。


「うお!?」


 慌てて顔を反らして避ける。耳のすぐ近くで羽音がして鳥肌が立った。あと数センチ違えばアゴが突き刺さってたかも。


「ふっ!」


 エレザは流石というか、キレイに真っ二つにしていた。

 もう1匹、俺の方へ向かってきたので、それを避ける。やはり速度としては大したことはないな。さっきみたいに、至近距離からアゴアタックされたら怖いけど、距離があれば大丈夫だ。

 斥候の5匹以上の援軍は無い(あったら漁師たちが教えてくれるハズ)ようだし、あと4匹を……


「アキラー!! 後ろだ!!」


 え? 慌てて振り向く。するとそこには。


「ロスマリー!?」


 こちらに近付いてきている。俺がさっき躱した1匹が飛んで行く方向だ。マズイ。見えてないのか。ここに来て視力の悪さが仇となった。


「っ!」


 駆ける。俺の鬼気迫るダッシュにロスマリーもようやく何事か緊急事態が起こっていることを察し、


「あ」


 ハチに気付いたようだ。目を見開いて、しかし咄嗟に動けずに固まっている。

 だが大丈夫。俺が追いついた。ハチの後ろから思い切り、体をぶっ叩く。ベシンと墜落したところを、靴で踏みつけた。にじるようにして確実に命を刈り取る。

 やった。高揚感と安堵と。その矢先だった。


「アキラー!!」


 再度のニチカの叫び声と同時、肩に激痛が走った。振り向いて確認。ハチのアゴがガッツリと肩口に食い込んでいた。クソッ。俺の更に後ろから追尾してやがったのか。


「クソッ!」


 ハチの腹を掴み、握り潰す。グシュッと嫌な音と感触。だが言ってられない。潰れた腹を更に引きちぎり、捨てる。だがまだハチのアゴは肩に食い込んだまま。


「いっ!」


 最後の足掻きか、むしろ食い込みが強くなった気がする。

 だがそこで。駆け寄って来た漁師の1人がアゴを開くように左右から引っ張ってくれて、ようやく肉を抉る痛みが引く。彼女はアゴを外すと、そのままそれを地面に捨てた。そして俺の創部を確認すると、


「うわあ」


 若干引いたような声を出した。

 うん、俺も感覚で分かるけど……結構深い。


「アキラ!」


 残りを片付けて来たのであろうエレザとアティも合流する。


「向こうの増援は?」


「無い……と思う……ニチカが見張って……くれてる」


 それは良かった。これ以上の数を相手にするのは無理だった。

 軽く安堵の息をつき、巣の方を見やった時だった。


「!?」


 黒い……モヤ。逃げるように丸太から飛び出し、いずこかへ消えて行った。

 また、か。本当に、いつもいつも……


「アキラ、止血と手当を」


「え? あ、ああ」


 意識が傷口に戻ると……クソ痛い。気絶しそうだ。


「誰か、ケアケアジェル軟膏を!」


 エレザの声を聞きながら、俺は立っていられず、その場にへたり込むのだった。 

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