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爆乳ハーレム島の錬金術師  作者: 生姜寧也


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17:勉強が全てじゃないよね

 アティの家を出ると、太陽は中天に昇っていた。少し暑い。30℃はないと思うけど。まあ日本みたいに、まとわりつくような湿気がない分、全然過ごしやすいけどね。


「終わったか」


「……エレザ」


 家の外で待っていたのか。一緒に入れば良かったのに。というのが顔に出てたのか、


「島の人間との交流にまで干渉する権利はないからな。オマエが誰かに危害を加えそうになった時に止めるのが役目だ」


 なるほど。多分、ロスマリーとの契約内容がそうなんだろうけど。ザ・仕事人って感じでクールだ。


「なんか良いね」


「何がだ?」


「一歩離れた立ち位置の人が居るのも安心する」


「……私を抱き込もうとは思わんのか?」


「エレザに限らず、島民自身が納得して永住賛成に投票してくんなきゃ意味ないからな」


 お情けで置かせてもらっても、扱いは徐々に悪くなるだろうし。結局、俺が島の役に立つというのを証明しないことにはジリ貧だと思う。


「ふむ。なんか良いな」


 エレザはさっきの俺の言葉を返してきた。少し口角が上がっている。

 まあ……彼女にも嫌われてはないようだ。






 家に帰り、昼ご飯をいただいた。メニューは干し魚だった。そしてやっぱり塩が強すぎた。食生活も要改善だよな。高血圧になってしまう。

 母娘2人は学校の途中で昼抜けしただけなので、午後から再び戻るということだったのだが……俺がレンガを作ろうとしていると知るや、ポーラの旺盛な好奇心がこちらへ傾くのが分かった。当然シェレンさんにも筒抜けで、


「気になるんでしょう? 行ってらっしゃい」


 と、気前よく午後の授業免除が言い渡される。


「……で、でも。ボク、お勉強も頑張らないと……」


 そんなことを言いながらも、視線は錬金釜と母の間を行ったり来たりだ。


「良いのよ、ポーラは。お勉強より元気に遊び回る方が合っているわ」


 確かにそんなタイプに見える。現代日本と違って、学歴がないと将来困るとか、そういう社会でもないし。性に合わないお勉強を無理にするより、体力系の仕事を見据えて野山で足腰鍛えるのもアリかもな。


「わ、分かったんだよ……わ、わーい。遊んでくるんだよ!」


 ポーラは錬金釜を持つと、俺より先に家を飛び出して行った。ボヤボヤしてると、置いてかれるな。


「それじゃあシェレンさん、いってきます」


「はい。いってらっしゃい」


 俺も外へ出て、ポーラにすぐ追いつく。

 

「こらこら。先にポーラだけ行っても、その釜使えないでしょ」


「えへへ。分からないんだよ? もしかしたら、イケるかも」


 言いながらも、無理っぽそうなのは自分で分かってる様子。あの七色の光が見えないと、無理ではないかという女神さんの話だったしな。


「それで、素材を集めるんだけど……」


 闇雲に探しても、効率悪そうなんだよな。ケアケアジェル軟膏については、(チュートリアルの)メタ読みでトライしたらアタリだったけど、何らのヒントもない状態からでは勝手が違う。

 どこに足を踏み出すべきか。粘土質の土と……砂とかも入れるんだったかな。あとは……


「アキラ。あの牢屋にまた行ってみるんだよ」


「ん?」


 考え込んでいたところに、ポーラが意外な提案をしてきた。牢屋って……何故?


「あの時はロクに探さなかったけど、釜があるなら、他の錬金術関連の道具もきっとあるんだよ! ボクも子供の頃はオモチャはまとめて置いてたんだよ」


「あー」


 なるほど。有り得る。というかチュートリアルまである親切なゲームなんだから、用意してそうだ。


「ポーラ、頭良いな」


 本心から言った言葉だったが、ポーラは虚を突かれたように固まった。


「どした?」


「ボ、ボク。頭良いなんて……初めて言われたんだよ」


「そ、そうなのか?」


「みんなボクをおバカだと思ってるし、ボク自身……お勉強ダメダメなのは分かってるんだよ……」


 ああ、それでさっき俺との同行を渋ってたのか。本音は遊びに行きたい(しかも錬金術の素材集めなんていう斬新な遊びだ)ハズなのに、勉強の方も気にかけていた。


「お母さんの娘なのに……」


 ん〜。ここら辺もコンプレックスになってるみたいだな。良く出来た親、兄や姉なんかと比べてしまう。世界は違えど、普遍的な悩みなのかも知れない。

 なんか解決策を考えてあげたいよな。


「あ、ゴメン。と、とにかく牢屋にゴーなんだよ!」


 ポーラも気持ちを切り替えたいようだ。まあ勉強よりこっちを選んだ以上、全力で当たらないと損だしな。


「ああ、行こう」


 ということで、牢屋に案内してもらう。

 道中、目印になるような物もないので、ポーラ頼りだ。一応、下草なんかは刈られ、道っぽくはなってるけど、ここもボコボコ。獣道と大差ない感じだ。


 20分ほど歩いて、昨日の洞窟に到着。汗が額を濡らしている。過ごしやすいけど、やっぱり夏だなあ。

 早速中に入る。途中、丈夫な木で造られた門構えを通った。もう中に誰もいないから、施錠はされてないらしい。

 そのまま進む。日光はほとんど入ってこないのに、やはり奥に行くにつれ明るくなっている。


「あのゴミ山なんだよ」


 ポーラが生活空間にしていた区画の、更に奥に広がる不要物の投棄場。

 2人でそこへ分け入っていく。割れた焼き物が一番危ねえな。俺は革靴だからアレだけど、ポーラの靴は動物の皮を縫い合わせた簡素な造りだ。正直、踏んだら貫通しそうで怖い。


「釜があったのは結構手前だったけど……」


 その近くにヒントになるような物は……ん? 本がある。分厚いけど、女神さんに見せられた『爆乳ハーレム島の錬金術師』よりは薄い。てか、よう考えたら、今あれの中に居るんだよな。マジで実感湧かないけど。

 っとと。今はそんなこと考えてる場合じゃないな。


「この本……」


「気になるの? ボクには古ぼけた紙の束にしか見えないんだよ」


「マジか」


 確かに中身は古い紙の束なんだろうけども……エンジ色の上品な装丁が見えていない様子だ。

 ……この時点で、錬金術に関係する書物なのは確定だな。 

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