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13:ブラン乳デイ

 ハンモックに登り、仰向けに転がる。「灯りを消すわね」という言葉に、そういえば夜なのに普通に室内が明るかったことに気付く。今の今まで、全く意識の外だった。やっぱ冷静なつもりでも、周りを見る余裕がなかったみたいだ。まあ……おっぱいに気を取られてたのもあるだろうけど。

 灯りの正体は……光る石だった。糸で縛られ、天井から吊り下げられている。


「アレって、もしや光石(こうせき)というヤツですか?」


 例の牢屋兼洞窟の奥でポーラに名前だけ聞いていたが。


「そうよ。刺激を与えると光って、もう一度与えると消えるの」


 言いながら、シェレンさんが慣れた手つきで長い木棒を操り、コツンと石の底を叩いた。途端、白光が消える。壁の上部にもいくつか光石が入ったカゴが掛かってるみたいで、コツンコツンと叩いて回る。


「おやすみ。不安で眠れなかったら、私のベッドに来なさい。添い寝してあげるわ」


 そっちの方が間違いなく眠れないんだよなあ。彼女的には、俺を子供扱いして場を和ませようとしたんだろうけど。


「おやすみなさい」


 自分の寝室へと入っていくシェレンさんを、暗闇の中で見送る。ドアの閉まる音がすると、静寂が訪れた。


 ………………

 …………

 ……


 怒涛の1日が終わろうとしている。とんでもねえ、生涯忘れ得ない1日だ。

 だって朝はさ。俺、スーツ着て出社してたんだからな。それが夕方にはエロゲに殺されて、すぐさまそのエロゲの世界に入って。いきなり捕縛されて牢にブチ込まれて、そこでポーラと出会った。医者でも薬剤師でもないのに、謎の錬金釜で薬を作る羽目になって……あれよあれよと、彼女の家に保護されることに。そして母娘のおっぱいをモニュモニュ味わって就寝。


「良い事と悪い事が入り乱れたけど……まあ……」


 おっぱいきもちよかったです。

 この感想が真っ先に出るあたり、自分で思ってた以上に、俺って逞しい(というか図太い?)のかも知れない。

 でも実際、シェレンさんとポーラ、エレザと他2人……1日で5人の女性と密着できるなんて、生前では考えられなかった幸運だからな。多少のハードラックは目をつぶれるよ。


「ただ……選挙に関してはキツイよな」


 錬金釜があるとはいえ……アレも明日、特訓してみないとな。ジェル軟膏を作った1回きりだったって可能性もゼロじゃないんだし。


「……ふあ」


 あくびが出る。風呂入れなかったなあ。地球でも外国なんかじゃ数日に1回とかもザラらしいし、ここは日本基準で考えすぎない方が良いだろうな。

 てか、眠い。心も体も限界だ。意識が朦朧としてくる。足の指先がピクピクしてる。よほど疲れてるんだな、なんて僅かに思考して……それを最後に俺の意識は途絶えた。






 翌朝。カーテン(窓ガラスは無くて、これで換気窓を塞いでいる)越しに差す日光の眩しさで目を覚ました。グッスリだったな。毛布も着てないのに、昨晩は快適な気温だった。


「くあっ」


 伸びをする。と、体が揺れた。


「うおわ」


 ベッドが揺れた……んじゃなかった。ハンモックだったわ。てかやっぱ現実なんだな。寝て起きたら、全部バカな夢でしたなんてオチもあるかなと、少しだけ思ってたけど。全くの現実だ。少しだけ腕や足に食い込んだ縄の痛み。嗅ぎ慣れない他所の家のニオイ。


「……」


 一両日中に出さなきゃいけなかった見積書も。あと数回の利用で貯まる、近所の中華料理屋のポイントカードも。漫然と続けてた携帯キャリアが推してる毎日のポイ活も。母さんに返し損ねたレインも。

 ……もう全て、今の俺にはどうすることも出来ないんだよな。


「起きよう」


 今の俺がすべきは、この島での市民権獲得だ。困惑も感傷も昨日に置いてきて、今日からは新しい朝を始めるんだ。

 俺はハンモックから下り、


「おはよ~」


 同じタイミングで部屋から出てきたポーラとかち合った。上半身裸だった。立ち止まった拍子にプルンと跳ねた爆乳。その中央に、ライトブラウンのぽっち。昨日もご対面したけど、薄暗い洞窟の中だったから、そこまでハッキリとは見えなかった。けど今は、日光の入った部屋の中。かなり細部まで見えてしまっている。


「ポ、ポーラ……」


 驚きのあまりパクパクと口が動くだけで、二の句が出てこない。とにかく目が釘付けになってしまう。AV以外で初めてマトモに見た。

 ……土下座したら、ちょっと吸わせてくれたりしないか、これ。年長者の威厳とか、放り捨ててでも、今このチャンスを……


「ポーラ。はい、そこに立って。塗るわよ」


 後から居間に出てきたシェレンさんの声に、煮え滾っていた欲望がサッと引く。流石に母親の前で、娘さんに土下座する勇気はなかった模様。


「あ、はーい。なんだよ」


 ポーラが移動してしまう。ああ残念……じゃなかった。塗るって言ってたな。


「何を塗るんですか?」


「アナタが作ってくれたケアケアジェル軟膏だったかしら? アレをね」


 玄関先に置きっぱなしだった錬金釜と、ジェルの塊。そうか。言われてポーラの背中を見る。爛れこそ引いたが、まだ完全に赤みまでは消えてない。


「……」


 しまったな。欲望の目で見るあまり、こういう所を見落としてしまっていた。


「ん? あれ? これって……」


「あ、そのジェル、少し指で抉るみたいに掬うんです。スライムの特性も残ってるみたいで」


 液体寄りの固形と捉えておいた方が良いかも。そのおかげで、この温暖な気候の中にあって、溶け出したりもしないんだけど。


「あ、こんな感じね」


 コツを掴んだみたいで、シェレンさんが塊から指先大をこそぎ取った。それを娘の背中に塗布していく。


「ん。くすぐったいんだよ」


「我慢しなさい」


 母娘の仲睦まじい姿とプルプルおっぱい。朝から色々と眼福だった。

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