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12:島のトイレ事情

 食後、ついにこの時がやってきた。


「あら? おトイレ?」


 そう。催してしまったのだ。小の方だけど。

 ポーラが椅子から立ち上がり、「案内するんだよ!」と俺の手を引っ張る。さっき、一瞬見えた憂いの表情は気のせいだったか? 元気そのものだ。


「あ、ありがとう」


 確か、外と言ってたが。まあこの時点で水洗とかは期待できなさそうよね。ウォシュレットなんて以ての外だ。


 ポーラに手を引かれたまま、家の外に出て……2分近く歩いて、小屋のような建物に連れてこられる。少しだけ距離があるな。下痢の時とかは早めの行動が望ましそう。


「うん? 意外とニオイがしないな」


 あ、しまった。つい。家の住人の前で言うことじゃなかった。ただポーラは気にした風もなく、


「雑食ミミズのおかげなんだよ」


「雑食ミミズ?」


 オウム返ししつつ、改めて目の前のトイレ施設を観察。

 木板を組んで作った三方の囲い。ドアはない。土の上に、そのまま木造りの便器が鎮座している。大きな木の幹をくり抜いて作ってあるんだろう。オマルみたいだ。


「あの便器の下には大きな穴が掘ってあって、その下に雑食ミミズを放ってるんだよ」


「そのミミズが?」


「うん。オシッコもウンチも食べてくれるんだよ。その上、ニオイも出さないから、とっても快適なんだよ」


 そいつは良いなあ。繁殖に成功すれば、ビジネスチャンス……あ、そっか。日本じゃないんだよな。どんなお宝があっても、ここは絶海の孤島・セフレ島。外部に持ち出すことは出来ない。


「じゃあ、ボクは先に戻ってるから」


「うん、ありがとう」


「あ、その便器脇の棚にある葉っぱは柔らかいから、オシッコの後はそれで拭くと良いんだよ」


 そう言い残して、ポーラは去っていく。うーん。オシッコの後に拭くのは女性だけ……ああ、そうか。俺も女性だと思われてるんだったか。というか、人間に性別なんてものがあることすら知らないんだもんな。


「便器脇の棚ね」


 こちらも木造りの物で、割と年季が入ってる。棚は2段あり、上の棚に結構大きめ(俺の掌の2倍くらいかな)の葉が何枚も積まれていた。触れると、表面はビロードのように細かい起毛があった。


「まあ地球ですら手で拭く所もあるらしいからな」


 途上国の村々なんかでは、珍しくもないと聞く。そう考えると、ニオイも衛生もマトモで、尻も拭けるなら、恵まれてる方だろう。


「まあ和式はキツイけどな」


 下を丸出しにして、便器を跨ぐようにしゃがむ。たくし上げたスラックスがコブみたいになって、膝裏が痛い。


「この便器も、せめて洋風を作りたいなあ」


 錬金術で作ったら、みんな喜ぶんじゃないか。それで、「コイツ結構役に立つじゃん」って流れになって。


 ――ジョボボボ


 取り敢えず、ションベンはどんな時でも出るよね。

 ただ音がかなり遠いから、穴は結構深いんだろうな。ボットン便所、俺は初体験だが、不思議な感じだ。


「ふう」


 と、そこで。トランクスの股間部が少しだけ湿っているのに気付いた。いわゆる一つの先走った斥候兵たちだ。まあ、今日は奮い立ってばっかだったもんな。


「最悪はこの葉っぱを使って、処理しないとなのか」


 なんというか、シェレンさんやポーラの感触で致してしまうと……一緒に暮らしていく相手だけに、気まず過ぎるよなあ。


「まあ、いよいよになってから考えるか」


 残尿を切って、立ち上がる。服を整えて、家に戻った。






 家に入ると、ポーラが床でうたた寝をしていた。健康的なお腹と爆乳が、規則正しく上下している。


「おかえりなさい。おトイレは異世界と変わらなかったかしら?」


「ええ。概ね。ありがとうございます」


 本当は数世代前の形式だっが、わざわざ言う必要もない。


「ポーラ、オネムなんですね」


「ふふ。まだ(ピー)歳だもの。夜遅くまで起きていられないわ」


 修正音は夜遅くまで仕事するなあ。


「本当に……ありがとうね。あの子が帰ってきてくれて、安心したわ」


「いえ。こちらこそ、お家に泊めてもらえて凄く助かってます」


「いつまでも居て良いのよ? もちろん、島に慣れたら働いてはもらうけど」


 それは当然だ。タダ飯食らいになるつもりは元よりない。


「ただその前に、この島に住んでも良いという民意を得なくては」


「そうね。私、明日になったら、ロスマリーに交渉してみるわ。いくらなんでも2週間は短すぎるもの」


「あ、ありがとうございます」


 もし延びたら助かる。けど、正直あのロスマリーの様子では引きそうにないなとも思ってしまう。


「とにかく、そろそろ寝ましょうか。あ、枕も用意しといたわよ」


「ありがとうございます」


 居間の隅に架かったハンモックの縄の目の上、大きな枕が乗っていた。2人用くらいありそうだ。と、思っていたら、


「ゴメンなさいね。ポーラが小さかった時の添い寝用のヤツなの。アレしか余りがなくて」 


「いえいえ。用意していただけるだけで」


 それにあれくらい大きかったら、夜中に寝返り打った時、縄の目に落ちて痛い思いしなくて済みそうだし。むしろベストかも知らん。


「あとは歯を磨いてね。ハブラシの予備があったハズだから、すぐ出すわ」


 その後、ポーラを起こしてみんなで歯磨き。ちなみに、ブラシ部分は何かの植物の茎を割いた物をキレイに整えて作られていた。ちょっと硬めだけど、普通に使える品質でちょっと感動したよね。

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