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God Blood  作者: 総統ヤバイ
3/3

第二話

〝うわぁ!!お母さん!お父さぁん!!〟

〝ゴベェェ…〟

〝ギヤァ!!〟

〝…これが覚悟だ。〟



ペンペンペンペン

「んぐっ!うぅ…あれ?」

頬を叩かれ紅葉が起きる。

「あっ、起きた~?」

だんだんとはっきりしてくる視界。悪夢を見ていた。余程うなされたのだろう。汗が滝のように吹き出している。しかも、大分長いこと寝ていたらしい。

目の前には知らない少女が一人。

「あぅ…誰?」

「藤堂ー。情桜ー。起きたよー!」

癖ッ毛の白髪に大きな瞳。可愛げはあるが少し輝きのない瞳孔。少しの不気味さと可愛さが丁度マッチして美しいとさえ思う。

「寝ながら泣いてたよ?フフン。誰って?人に名乗らせる時は自分から名乗るのが基本だよ?」

少女が得意気に紅葉を指差し話すと藤堂が少女の頭をべしっと叩く。

「独狼さま、バカいわないでください。寝起きですよ。」

「アハハ。分かってるよ。うん。私は儁奔独狼すぐはしどくろ。よろしくね。」

「あぁ、私は紅桜紅葉。よろしく。」

「ざっくりは情桜に話して貰ってたよ。」

互いに軽い握手をする。独狼の手はひんやり冷たかった。

握手が終わると、「…すまんが、早いとこ返事を聞いておきたい。決断しろ。」と藤堂が途端に話を切り出す。

「すいません。覚悟を決める前に、あなたたち、何者なんですか?あんなに簡単に人を殺して、心がないみたい。」

「ん?あぁ、そうか。まだ説明してなかった。」

「もしかして忠正、その説明なしにあんなの見せたの?それもうキチガイの域だよ!?一般人じゃないのぐらい説明したら良かっでしょ!あぁもう、そんなことならあんなこと…ごめんね、紅葉ちゃん。おいこらトンチキ!なんとか言え!」

情桜が藤堂を詰める。

詰められた藤堂がしどろもどろになる。

「あ、いや、それは…その…連中の来るのだろうと予想した時間が…」

「そんなんも考えないで、よく支部長張れてるね。」

独狼がピシャリ。

「ぐっ」

藤堂はガクッとうな垂れる。

藤堂を尻目に情桜が話す。

「ホントにごめん。でも、見たからには…ね。説明するわ。静かに聞いてね。質問は話し終わった後。あなたが話すのは次の返事の声だけ。いい?」

「はい。」

紅葉のはっきりとした返答に、安心した情桜は説明を始める。

「うん。いい返事。

…まずここ土地は、日本でも有数の歓楽街なの。

毎日夜店に屋台、その他諸々の娯楽で賑わう街。当然、裏も栄えてる。風俗、水商売、闇金、賭博。だから、ここにはお金がたくさん落ちるの。

そして、国際交流の風潮に伴って増加する海外の危ない連中、他にもここの利益を奪おうとする日本の組織も多い。そういうのは大抵暴力で土地を支配してくる。

だから、それを阻止するために私たちは、そんな奴らを暴力で制圧する。それには、さっきのような殺しも厭わない。それが私たちの組織の実体。」

情桜が水を一杯飲む。

「ふぅ。次に、組織の構成について詳しく説明するわ。組織の名は"不惜詔会"。構成員は約三千六百名。本部はこの街の中心から7キロほど離れたところに位置するわ。そして、本部を囲むように五角形を作り、そこの頂点に一つずつ大支部がある。そして、各地に散らばる支部が二百ほど。まぁ、支部ってのはいわゆる交番のようなものね。こうして、網状に絡まる情報網で危険な組織をいち早く見つけ、壊滅させることができる。まぁでも…」

ここで情桜がすこしため息をつく。

「…実のところ、それでも、まだまだ足りないの。資金力と実力は十分だけど、最近は人材不足に悩まされててね。海外から増える悪人に対して対処しきれていない。だから、こうしてあなたのような人をスカウトしてるの。

もし入ってくれるなら、あなたに力と頑丈な精神を授けるわ。銃も使えるわ。


ただ、あなたには殺人の業を背負わせる。


もし、さっきみたいに殺しに対して恐れを持ち、イヤだな。って思うなら、私たちの関係はここでおしまい。どう?もう話していいわ。」

情桜が真剣な眼差しで紅葉を見つめる。紅葉は自分にとって一番重要な質問を投げ掛ける。

「私は、青い髪の男に復讐できますか?」

それに対する情桜の答えは、

「それは分からない。そいつらがこの先私たちに牙を向けるなら全然あり得る。でも、そうじゃなければ…」

返答はすこし自信の無い様子だが、殺せる可能性は格段に上がった。藁にも縋る思いで紅葉は答える。

「…分かりました。お願いします。」

「いいか!命がかかるんだぞ?殺しの世界だ、常に生死の狭間といっても過言じゃない!」

さっきまでうな垂れていた藤堂が突然声を荒げる。その顔は鬼のようだ。気迫に押されそうになるが、ここで折れたら自分は終わる。紅葉は勇気をだして声を振り絞る。

「どうせこの先青い髪の男を見つけても、殺されるかもしれないんです。だったら、この組織で力を付けて、確実に男を殺す。その方が確実と思います。」

「さっきまでお前は…」

「忠正。」

静かに事の顛末を見ていた独狼が口を開く。

藤堂が独狼の声で静まる。

「独狼さま…」

「いいじゃん。入るといいさ。ようこそ。不惜詔会へ。」

紅葉の目は覚悟に満ちていた。さっきのような情けない雰囲気は一切無い。

藤堂は優しい顔になり

「悪いな。少し試させてもらった。」と謝罪した。

独狼が手をたたく。

「よーし、決まり!諸々の手続きは忠正がしてくれるから、しばらくはここを見学して少しでも雰囲気に慣れるといいよ。」

「はっ?俺がするんですか?情桜?」

「無理よ。上司の命令でしょ?」

またもや藤堂がうな垂れる。

「わりと手間がかかるんだよな…あれ。」

紅葉が質問する。

「今までにもこんな感じに入ってきた人がいるんですか?」

「あぁ、この支部の二割程の奴らはこんな感じで入った。」

「へぇー結構いるんですね。」

「だがまぁ、あんな地獄絵図見せたのはお前だけだ。失神なんかしちまって。…ハハハ。ようこそだな。」

「…フフッ、ありがとうございます!」


二日後、独狼名義の推薦により、一年間の研修、藤堂支部一同の指導に加え現場で活躍できる技能を与えることを条件に申請は受理された。

その日から紅葉は強くなるために鍛え始めた。


研修中に知ったことはたくさんあった。まず、独狼は紅葉が思っているよりも位が高いらしい。上から数えたら五指に入るほどらしい。藤堂もなかなかの地位らしいが、そんな藤堂ですら様付けで名前を呼ぶほどだ。また、ここは不惜詔会の大支部の一つらしい。館のようとは言ったが、中身はかなり広く、寮から食堂から道上まで、幅広い設備が置かれてある。食堂では情桜が飯を作ってくれて、格別に美味しい。カレーなんかはスパイスからこだわっていて、ルーを使わず一から作るらしい。支部の人間はみんな優しく、ノリがいい。独狼曰くモットーは自由気ままに気の向くままに。時折それが藤堂の胃を痛めるそうだ。




そんなこんなでわりと平穏に半年が過ぎた。

ドッ、ガッ、バキッ

「ハッ、フッ…」

丸太を殴り続ける紅葉に藤堂が声をかける。

「どうだ、紅葉。俺直伝の鍛え方。きついだろ。」

「うん、きついよ。いくらなんでも丸太をひたすら殴って壊すなんて、普通じゃない。」

藤堂が面白そうに笑いながら答える。

「ハハ。最初に警棒やっただろ。素手じゃないだけマシだ。それに、続けていたら、俺みたいに強くなれるさ。他にも情桜の警棒の棒術に、独狼さま直伝のナイフ術。並の研修生じゃできない特別指導だ。他にもうちの選りすぐりの構成員が暇さえあれば実践に付き合ってくれるんだ。恵まれてるぞ。」

「いや、それは―そうだけど、やっぱりしんどいよ。」

「ハハハハハ。あぁ、そうだ。大事な連絡がある。」

突然藤堂の笑顔で話しを変える。

「うん?なに?」

「この支部が不惜詔会のトップの娘を一時預かることになった。曰く、7才の少女らしく、特に気を遣う必要もないらしい。軽く遊んであげてくれ。っていうのと、本部の人間、幇奉歌楽ホウホウカラク舞楽ブラクという姉弟がやってくる。二人とも俺たちの昔馴染みだ。話はしている。気楽に接しろよ。」

「うん、分かった。楽しみにしてるね。」

「あぁ。ただ、幼児が来たからと言ってサボらないで、訓練は欠かさずしろよ。」

「…ハァイ」

「そして、嬉しいニュースだ。」

「えっなに!?」

「お前とほぼ同期の奴がこっちにくる。」

「ウソ!…ん?てことは、研修生?」

「いや、実技試験を通ったエリートだ。」

「えぇ、すごいけど、エリートって聞いたら気が引く…」

「まぁ、大丈夫だろ。あの感じなら仲良くなれるんじゃないか?」

「うーん、そうかの?」

「あぁ。それじゃ。」

「うん!」

藤堂が去った後、紅葉はもうすぐ起きる出会いにワクワクしていた。しかし、その出会いは後に、組織最大の大事件へと足を運ぶことになる。


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