第一話
えー、小説初心者の文章です。昔から構想だけ考えて文にしてこなかったのを頑張って文字にしています。目標は物語の簡潔です。諦めるつもりはないので、よろしければ応援お願いします。
母親の死から二ヶ月。
親は駆け落ち夫婦なので、勘当も当然。辛うじて葬式はしたが、紅葉の面倒など誰も見ようとしなかった。むしろそれは紅葉にとって好都合の話だった。
紅葉は手当たり次第に探し回った。親が高校、大学のためと残した銀行口座の金を使って、裏の人間から情報を買うこともした。しかし、まともな情報はなく、時折は騙され、危ないことをされそうになったこともあった。それでも、何とか逃げ延びて上手いこと生きてきた。そうやって旅を続けていたのだ。
そんなある日、路地裏にて、
「ねぇ、あなたたちは青髪の男で、人を殺したことのある奴を知ってますか?」
紅葉は適当な男に話しかける。
「あぁ?知らねぇな。それより嬢ちゃん。良いからだしてんねぇ。おっちゃんらと遊ぼうや。」
男は少しずつ紅葉に体を寄せる。
(またか…今回も、ダメそう。)
「いや、それならいいです。」
いつものように引き返そうとしたとき、背筋に悪寒が走った。
(しまった。気づかなかった。入り口にも他の男が。…まずい。)
いつもなら抜けられるかもしれないが、今日は違った。路地裏がいつもよりも狭い。
「ちょいと遊ぼうやぁ」
一人の男が紅葉の腕を掴み胸まで引き寄せようとした。
「いや、止めて!」
紅葉が反射的に男の顔にビンタを食らわした。しかし、それは悪手だった。
「っ!あぁ!?このガキ、舐めやがって!」
男が拳を振り上げる
「きゃっ!」
右頬に一撃、ズシンと重みが加わった。
「グッ、うぅ…」
「へっ、もう一発!」再度男が拳を振り上げる。
その時、
ドッ!!
「グブッ!!」悲鳴と共に男が跪く。
後ろを見れば、筋骨隆々のスーツ男が立っていた。
「なっ、なんだてめぇ!」男の仲間が倒れた男を支えながら叫んだ。
裏路地の入り口にいた男は外に投げ出されて伸びていた。
スーツの男は
「ここは俺たちのシマだ。去れ。」
と言った。紅葉には言葉の意味が分からなかったが、どうやら言葉を理解したらしい男たちは苦々しい顔でその場を立ち去った。
「あっありがとうございます。」紅葉が礼をすると、スーツの男は「礼なんてするな。するならここの守り神にしろ。」と言って立ち去ろうとしたが、紅葉の右頬の傷に気づき、「…はぁ、俺についてこい。話がある。」と歩きだした。
紅葉がそれについていくと、どうやら少し大きく平べったい広い館?の様な建物についた。四つの狛犬の石像。威圧感があり、常にこちらを監視しているよな、不思議な気分だ。物珍しい顔で辺りを見回す紅葉に、スーツが言った。
「中に入れ。怪我してるだろ。あと、どうしてあんなところにいたのか、理由を聞かせてもらおう。」
改めて男を見ると、恐々した顔つき。気圧された紅葉はただ頷くしかなかった。
建物の中は外の和風な外観に比べ、職員室のような感じだった。これをオフィスというのか。そんな場違いなことを思う紅葉を尻目にスーツ男は部下と思しき者になにやら耳打ちしていた。
その後、軽い治療をして貰うと
「こい。話して貰う。」と呼ばれた。
応接室と書かれた部屋に入り、スーツの男が質問する。
「俺は藤堂というものだ。君があそこにいた理由を聞かせて貰おうか。」
「えっと、助けてくださってありがとうございま…」
「礼などいらん。早く答えろ。」
「すいませ…」
「早く」
「…三ヶ月ほど前、夫婦別日殺人事件が起こったの。知ってますか?」
藤堂は少し上を向き、
「あぁ、あったな。確か。」と答える。
「被害者は中年夫婦でしたよね。」
「そうだったような…」
「私、その二人の子供なんです。」
「…なに?」
藤堂の眉が少しつり上がった。
「メディアは両親の名前は公表しませんでした。」
紅葉は続ける。
「父は人混みの中背中を刺され、失血死。母はその日の夕方に家を放火され焼け死にました。」
藤堂の顔がみるみる険しくなる。
「…」
「私、父が殺されたとき、隣にいたんです。青い髪の男が。警察にも話しました。頑張ってくれていますが、今一つ確証はとれていないし、捕まえられそうにないです。それで私、自分の目にみた情報だけを頼りに探しだし、復讐してやるんだ。と決意しました。そこからはネットの情報を頼りにああいう危ないところでお金を払って情報を拾っていましたが、何にも得られない。少しでもとだんだん深入りした結果。今日みたいになった訳です。」
紅葉は話していると、目に涙が浮かんだ。
「分かってます。そんなことしても、見つかるわけないって。でも、私はどうしてとあいつを殺したい。お父さんやお母さんとの大切な時間を奪った奴に、倍以上の苦しみを与えたい。あいつだけじゃない!調べたんです。近所の人が気づいたときには炎が全体に燃え広がった状態だったらしいです。それにかかる灯油の量も尋常じゃないはず。ごめんねお父さん…悔しいよ…お母さん…うっ、うぅ…」
藤堂は目を覆い嗚咽を漏らす紅葉を、険しい表情で静かに見守っていた。
しばらくたち、紅葉は落ち着き、藤堂に向き直った。
「すいません。とりみだし…」
「紅葉。」
藤堂は紅葉の言葉を遮り、真面目な顔でとある提案をした。
「復讐する力、欲しいか?」
突然すぎる提案。紅葉も聞き返してしまった。
「えっ?」
「え。じゃない。欲しいのか、どうだ。」
何故聞かれているのか分からないが、とりあえず答える。
「欲しい…です…」
「そうか。…一応、提案こそしたものの、君が入れるかは、まだ決まらん。そして…そろそろだ。」
藤堂が何かをいうとすぐ、外から大声が聞こえてきた。藤堂は紅葉に目をくれ、
「君に現実を見せつける。来い。」
といい、紅葉の手を引き外にでる。
外に行く最中、藤堂は背の高くフリルのついたタキシードの女に
「情桜。こいつを守れ。」
と命令。
女は「ん?あぁ、りょ。」と藤堂に返事し、紅葉に「大丈夫。身の安全は保証するわ。心の安全は…まぁ…ね。」と不安な言葉を渡し、共に外にでる。
外には裏路地での輩と見知らぬ顔の男達が十何人といた。
「おせぇぇんだよぉ!」
と藤堂に殴られた男が大きな絆創膏を張って紅葉たちに激昂した。
「なんのようだ?」
藤堂は蔑むように彼らをみる。
それを挑発ととったのか、男は服から危険なモノを取り出した。
「おいおい、俺達を舐めんなよ?殺せるからな?殺れるからな?あぁ!?もう何十人も殺したんだぜ!?」
それに対し藤堂は「フッ…」と嘲笑。
男は「舐めやがってぇ…!」と怒りをさらにため、大声で叫ぶ。
「殺せるもんなら殺してみろ。地獄を見せてやる。」
その言葉に連中は激昂した。
「てめぇらぁ!殺っちまえぇ!」
その合図を皮切りに、ナイフやパールなどを持った連中が藤堂に向かう。
「え、ちょっと、待っムグッ!」
制止の声を出そうとした紅葉の口を情桜が塞ぐ。
「ダーメ。行く末をきちんと観なさい。」
連中を相手に藤堂は…無傷だった。一人一人の顔面を正確に、確実にぶん殴る。そして、一人からナイフを奪い、「殺そうとしたんだ。文句はないよな。」と、奪った男の腹に思いっきり突き刺し、捻るように切り裂く。
「ゴベェェ…」と情けない声を出し、臓物を出しながら倒れこむ男。さらにもう何人もの男の首、腹を切り裂く。
断末魔が聞こえる。逃げようとする男が一人。足を刺して藤堂が使っていたナイフが抜けなくなる。ならば、と足を刺した男の首を捻り、脛椎を折って殺す。ただ淡々と殺す。敵を殺す。
気づけば紅葉は吐いてしまっていた。父の刺されたときよりもさらに壮絶だ。例えるなら……地獄絵図
そうして叫び声、断末魔がなくなった頃。藤堂が久々に口を開く。
「よく目に焼き付けろ。」
恐怖に従い目を閉じようとした紅葉の目を情桜がこじ開ける。
「うっ、うぁぁ…」
凄惨な現場を見て、紅葉の視界は暗くなった。
「あらあら、のびちゃったわ。」
情桜が心配そうな声を出す。
「来客室のソファーに寝かせろ。俺はごみ処理をしておく。」
「はぁ、りょーかい。」
情桜は失神している紅葉を背負い、死体を引きずる藤堂を尻目に事務所に戻った。