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いずれ最果てへ至る神殿師  作者: きりきりきりたんぽ
第一章 王立セントリア学院編
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パーティーメンバー

「さて、集まったか。」


 俺は学院順位8位の特権である学院内のコテージの中にいた。ベランダ付き二階建ての木製のコテージでは当然寝泊まりもできるし、小さければ何かイベントだってできるだろう。


 他にも上位10位までの生徒には同様のコテージと周囲の土地が与えられており、自由に使っている。自分だけの研究所にしたり、敷地内に畑を作ったりとやりたい放題だ。中には自分が作った魔道具の販売所にしている猛者もいるらしい。


 だが、俺はここをあえてパーティーの詰め所として使っていた。こんなところを一人で使えるとは思えなかったし、そもそも使えたとしても一人だったら寂しいだけだ。なら信頼できるパーティーメンバーくらいには解放しておいた方がいい。


「当然どーしたの?この後話したいことがあるとか言われたからてっきり告白でもされるのかと思ったけど、全員いるってことはそうじゃないんでしょ、テル?」


 緑色の髪をハーフアップにした少女は揶揄うような笑みを浮かべながら迫ってくる。この制服を校則ギリギリまで着崩している少女の名前はシャル=ビバレット。会うたびに誘惑をしてくるために、今では慣れてしまった。


「そうだな。今日は後輩から頼まれたことについて共有しておきたいと思ってな。」


 シャルは目を見開き、セリフが出てこないようだ。さすがにショックだぞ、この野郎。


「後輩……?同級生にも友達がまともにいないテルに、後輩?

 ……そっか、想像ね。大丈夫だよ、テル。私達は友達だから。」


 シャル以上にひどいことを言いながら、薄い金の髪の毛をボサボサにしたまま起き上がってきたのは最後のパーティーメンバーのティナ=ファウムだ。さっきまで寝ていたのだろう、目を眠そうに擦りながら俺に近づいてくると頭を撫でてこようとしている。


「勝手に慰めんな。それにお前の身長じゃ俺の頭には届かん。」


「でも私も信じられないよ?テルに声をかけるような図太い後輩がいるなんて。同級生だって声かけないのに。」


「ほっとけ。……おい、デュラン。お前から説明しろ。」


 一応リーダーってことになっているが、それはただ俺がたまたま学院順位で8位だってだけだ。実質的なリーダーはデュランと言っても過言ではない。


「わーったよ、しょうがねぇな。」


 渋々と言いたげにデュランが立ち上がった。そしてその様子を多少の事情は知っているだろうルカはやれやれと言わんばかりに首を振っている。


 ……本当に俺がリーダーなのか?だとしたら扱い酷くね?


 リーダーとは何かについて、思考の海に潜りかけた所でデュランの説明が終わったようだ。


「あー、やっぱり今朝の子だったんだー。」


「ルカちーは知ってたの?」


「今朝テルと同じ授業だったからさ、一緒に移動してたんだけど、そこでその後輩君と会ったんだよー。その時は逃げようとするテルを後輩君が熱烈なプロポーズで引き留めてたんだけどー。結果はデュランが決めたみたいだねー。」


「……昨日の順位戦が原因っぽい?やっぱり受けない方がよかったんじゃ?」


「それは無理ってやつだな、ティナ。そもそもあの場をセッティングしたのは我らが生徒会長様だ。順位戦の通知なんて普通手紙でされるところをわざと役員を使って直接渡しに来たぞ。」


「……むー。ならしょうがなし。」


 俺だけじゃなく、このパーティーに所属するメンバーは基本的に生徒会長に目をつけられている。だって神殿師なのに神殿を召喚しないようなのがリーダーなんだぜ?ならメンバーもお察しだよな。


 っていうか俺が一番まともまである。神殿を召喚どころか加護すらほとんど使わず剣メインで戦うデュラン、制服や研究で校則ギリギリを責めるシャル、まともに授業で起きていないティナ、才能に物を言わせ勝手なことをしているルカ。

 この学校の最高権力機関である生徒会に目を付けられるのにも納得の問題児どもだ。なまじ優秀なのがよりたちが悪い。治安維持を務める風紀委員会からも余程のことがないと手出しができないレベルにいる。


 俺?俺は神殿を一切出さないのが煽りに見えるんだってさ。知ってるか?こいつらよりも俺の評判の方が悪いんだぜ?信じられねぇよ。そんな尖った部分なんてないのにさ。


「まあ、後悔してももう遅い。後輩の魔物討伐の監督をするかどうかだ。ちなみにデュランは強制参加だ。三人は参加したければでいい。」


「あたしはパス。後輩なんて興味ないし。そんな時間があったら研究したいことがあるんだ。」


「……私も。そんな時間があったら寝てる。」


「あー、私もいいや。神童って言われてたから興味はあったけど、正直そこまでだったし。所詮は噂だったってことだよねー。」


 こいつらが自主的に参加してくるとは思ってなかったが、まさかゼロか。もう自分は関係なしと言わんばかりにソファーでくつろぎ始めやがった。でもパーティーで面倒を見るって言った以上、俺とデュラン二人で行ったら約束を違えることになっちまうな。


 ……仕方ない。奥の手を使うか。


「そうか。ならいい。

……そういえばデュラン。確かその監督の依頼が入ってる日は生徒会主導の研究発表があったよな?」


 研究発表。その単語を聞いた直後、三人の体がピクリと動いた。


 学年別に集められる研究成果の共有が目的のイベントである。さすがに教え合うという形式ではなく、模擬戦の中で学び取るという形式であるが、このイベントの欠点は声をかけられた側に拒否権がないことだ。

 声をかけられたが最後、その相手と模擬戦をする羽目になる。しかも成績上位者は多くの生徒から狙いの的になり、一日中模擬戦という名のリンチを受けるのだ。彼らの目的は上位者と戦いを通して、新たな学びにつなげたいということが大部分であるが、中には意図的に削りにくるのもいる。特にそんな輩が俺には多かった。ふざけんな。

 だから真面目な一部を除いて上位者になればなるほどこのイベントをどう休むかについて考えることになるのだ。当然サボれるものならサボってしまいたいが、主催は生徒会である。彼らに睨まれては、まともな学園生活を送るのは困難だろう。特に代替わりしてより厳しくなったしな。実際俺たちも8位っていうのに助けられてる部分が大きい。

 まあ実際はほとんど却下されて参加させられるらしいけどな。


 だが、今年の俺たちはこのイベントをサボる正当な理由ができたんだよな。後輩の監督っていう立派な仕事が。


「ああ、あったな。あの名ばかりの研究発表だろ?実態はただの模擬戦を一日中やるだけやるっていう脳筋イベント。よくやるよなぁ、あんなの。」


 意味ねぇだろと毒づくデュランの背後でくつろぎ始めていたはずの三人が強張った笑みを浮かべながら立ち上がっている。


「どうした、話すことは終わったから自由行動だぞ。」


「いやー、ちょっと後輩の面倒を見てやってもいいかなー、なんて思ったりー?」


「……右に同じ。もしかしたら面白いかもしれない。」


「いやー、あたしも後輩に校則のギリギリを攻めるやり方を教えてあげよっかな、って。」


 ……現金なやつらだな。少し揶揄ってみるか。


「いや、俺とデュランの二人で大丈夫そうだぞ。これでも一応8位だしな。だから神殿を召喚できるデュランが一人いれば後輩の指導に不足はない。」


「いやいや!後輩ちゃんもいるかもしれないじゃん!むさい男どもだけじゃかわいそうだよ!」


「……それに、契約してる神殿も数が多い方が良い。」


「その通りだよ!あたしたち全員で行けば五つの神殿全部揃えることができるじゃない!」


 三人の必死な言い訳にやれやれと思ったが、実際五人で行った方が良いと思っていた。俺もデュランも近距離メインだし、そもそも普段は神殿を召喚しないし。結果としては想定通りに落ち着いたな。


「分かった。そこまで言うなら五人で行こう。研究発表の欠席連絡は俺の方から出しておく。」


 笑顔で嬉しそうに抱き合う三人を前に俺とデュランは小さくため息を吐いた。

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