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いずれ最果てへ至る神殿師  作者: きりきりきりたんぽ
第二章 神殿祈祷祭編
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乱入

 自身の攻撃を必ず当てることができる魔道具と自作の魔石型の攻撃魔道具。そしてそれだけではない。


 ―――俺は今、アイツらの魂も背負ってここに立っている。


 他者の魔道具を使うという、魔道具師の常識から外れた行動をとっていると分かっている。だが、それでも彼は切磋琢磨した彼らの作り出した血と汗の結晶を埋もれさせたままにするのはできなかった。


 彼の手に握られている魔石は自分が作ったのだけではない。目の前の男、ノスターに打倒された仲間の作った魔石だ。


 その証拠にその魔石に込められた魔術式は彼の適性以外の属性のものとなっている。


「饒舌だな。そんな余裕があるなら攻撃すればいいものを、ヘドが出る。」


 嵐が消えた奥からノスターの声が聞こえてくる。攻撃的な言葉であるが、その声はやはり平坦であった。


「あいにく俺は魔道具師でね。この試合で勝つこと以上に大切なことがある。」


 その言葉を聞いたノスターは表情を歪ませた。


「だからお前達のことは気に食わない。」


 ノスターが対抗戦開始時にした宣言は加護を使わずに魔道具師を負かすことを意味していた。しかし、トライアの発言は彼の唯一といっていい逆鱗に触れていた。


 ―――勝つこと以上に大切なことだと?そんなものはあるわけがない。あってはならない。


 あまりの不快感にノスターは自分に課した制限を一部取り払うことにした。


 ―――疾風、起動。


 ノスターの持つ二つの加護の内の一つ。移動速度、動体視力、反射神経など、行動速度に関わる全ての能力を向上させる加護である。


 その加護を発動させたノスターは地面を大きく踏み込み、そして次の瞬間にはトライアの目の前に立っていた。


「ッ!?」


 一陣の風が吹く間に迫られたトライアは左手に持った魔石を手から放しながら大きく後ろに後退した。しかし、


 ―――間に合わない!魔石の攻撃が起こる前にアイツの手が俺に届く……!


 トライアがどんなに逃げようとしたところでノスターの剣は確実に届くだろう。それこそ手から落ちた完全追尾の魔石も切り裂いて。


 だが、次の瞬間目の前からノスターは消えていた。


 ―――また消えた!?いや、おかしいことじゃない。さっきまで使っていた加護だろう。俺には使ってこないのかと思っていたが、これまで使ってなかっただけ、なのか?


 完全追尾の魔石が進行方向を大きく変えた。その方向を見ると確かにノスターがいた。


 ノスターは自分に迫る魔石を一瞥すると、無造作に剣を振った。剣から放たれた斬撃が空中の魔石を切り裂いた。


「斬撃だと!?お前、そんなことまでッ!!」


 トライアが言い切る前にノスターは再度姿を消していた。


「クソッ!だが、この攻撃を捌けるならやってみろ!」


 トライアは左手に持っていた魔石五つを宙に放り投げた。その隙に腰につけているアイテム袋らしき魔道具から魔石を取り出し、それも放り投げた。


 合計十個ほどの魔石が空中で一時停止し、何かに引っ張られるかのように軌道を変え突進した。


 その進行方向にいるノスターはただ静かに剣で魔石を斬りはらった。だが、さすがに数が多かったようで、いくつかの魔石が起動する。


 一つが爆発し、その中に水の槍が放たれ、嵐が飲み込んだ。


 ―――やったか!?


「なんて顔してんだよ。この程度で俺がやられると思っていたのか?」


 トライアの耳元でそんな声がした。


 振り返るが、次の瞬間にはやはり気配後と消えており、しかし、声だけが聞こえてくる。


「そういうところだ。俺とお前の実力差がまったく分からないんだろ?圧倒的経験不足。部屋の中で素材をいじることしかしてこなかったからだ。」


 トライアの魔石だけがノスターの居場所を突き止め、攻撃を仕掛けるがノスターに傷つけることすらできない。


「敗北とは、すなわち死だ。そんなことが分からないから勝つことより重要なことがあるとか言える。」


 炎、風、水、光、闇。五つの花が裁断の間に咲き乱れる。しかし、それに臆することなく声は響き続ける。


「それにお前達の方が準備してたから勝てたって?んなわけあるかよ。俺たちはこの世界で生き抜くために、この四年間かけて準備してきてたんだ。この対抗戦に勝てばいいとか言ってる引きこもりとは見てる世界が違う。」


 そしてついにトライアの攻撃の手が止まった。魔道具の中にはもう魔石はなく、右手に握った杖を縋るように強く握っている。


「終わったな。」


 静かにトライアの前に現れると、握った剣を振るった。


「ま、まい―――」


 あまりに圧倒的だった。傍聴席から対抗戦を見ていた学生でもノスターの動きが見えた人は少ない。魔道具師であるトライアがノスターの動きを目で追えなかったのも当然と言える。


「行きなさい。」


 だが、降参しようとしている敵を切ろうとしている狼藉を許さない者たちがいた。


 その人間は雷の如く速さで両者の間に体を滑り込ませ、ノスターの凶刃を受け止めて見せた。

 そしてもう一人はトライアを後ろに寝かせながら右手をノスターに向けている。


「テル=ガーディ。それにガリバー=ディータ……!」


 割り込んだ二人の生徒の名前を呟いた。

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