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いずれ最果てへ至る神殿師  作者: きりきりきりたんぽ
第二章 神殿祈祷祭編
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魔道具師

 トライアは右手で杖を構え、左手に魔石の使い捨て魔道具を握りこんでいる。杖や剣を元にした魔道具で相手との間合いを維持し、爆発力の高い使い捨ての魔道具で勝負を決めるという魔道具師の基本的な戦闘スタイルに忠実に構えている。


 対するノスターはただ剣を無気力に構えている。


「……」


 ノスターはそのままゆっくりとトライアとの距離を詰めていく。これまでの彼の戦闘からは考えられないほど静かな始まりになった。


 そしてその歩みを止めることなく、とうとうトライアの間合いに入った。直後―――


「風来扇、起動。」


 トライアの持つ杖の先が輝いた。地面を穿つような重低音の衝撃と共にノスターの身体が宙に浮かんだ。


「ッ!」


 そしてその全身を包むように杖の先から風属性の魔術がノスターに放たれた。空中に投げ出された形になっていたノスターに回避の術はなく、両手で顔を守るようにその攻撃を受けた。


 しかし、来ると思っていた衝撃は来ず、代わりに彼の視界には微かに輝く何かが見えた。


 ―――魔術はブラフ、本命はそれか。


 ノスターはトライアの攻撃を魔石による攻撃であると判断し、空中で体勢を整えながら剣を構えた。


 ―――それは去年見た。その手の魔道具は一度しか使えない代わりに見た目以上の威力がある。至近距離で喰らえば防御も回避もできない。だが、発動前はただの魔石だ。その時に斬ってしまえばいい。


 剣を振り上げ、自分に近づいてきている魔石の気配を探り、それらを全て切り捨てた。


―――なるほど。これは風の魔術に魔石を乗せていたな。魔道具師の分際で神殿師のようなことをしてくるのか。だが、


「中途半端だな。多少動けたところでそれ止まりだ。対処法さえ知っていればお前達などどうとでもなる。」


 攻撃を未然に防いで見せたノスターはどこまでも不機嫌だった。


「そもそもこれまでがおかしかったんだ。他の神殿師たちは誰もがお前達の土俵で戦うことを強制されてきた。そのせいで俺は去年負けた。」


 今年は同じヘマはしない。彼の怒りながらも相手の一挙手すら見落とさんとする態度がそれを雄弁に物語っていた。


 その言葉に同調するような空気が一部から流れた。彼らもまた同じように辛酸をなめさせられた経験があるのだろう。


「分かったろ。お前はこれで終わりだ。諦めて腕を差し出せ。」


 静かに歩みを進めるノスターにトライアは震えながらも確かな声で応えた。


「いいや。分かっていないのはお前だ。俺は魔道具師だぞ。誰よりも準備の大切さを知り、尊んできた。勝負にだってそれは同じだ。初手を打った時には既に詰みまで見据えている。


 お前達が負けたのは俺たちの土俵で戦っていたからじゃない。準備が足りていなかったからだ。勝手に僻むのはやめろ。」


 その声からはもはや恐怖は感じられず、その視線はまっすぐノスターの目を射貫いていた。


「それに勝負はもうついている。」


 トライアの手から落ちただけの魔石がまるで磁石のようにノスターへとまっすぐ迫った。


 その攻撃はノスターのよって造作もなく斬り落とされたが、それでもそれを見ていただけの傍聴席の生徒たちにも衝撃が大きかった。


「風来扇の付与している魔術式は完全追尾だ。だからああいうこともできる。


 さて、ここで問題だ。この魔術式の効果対象は何だと思う?」


 ―――正解は俺の魔力とつながっている物すべてだ。


 一人で答え合わせをしながら腰につけていたバックパックから魔石を十数個取り出した。


 攻撃をさせまいと一気に距離を詰めたノスターであったが、そこに無造作に魔石が投げられた。


 ―――何度も同じことを。無駄だ。


 ノスターはそれを剣で切り裂いた、はずだった。しかし、それは剣が触れる前に輝きを放ち始め、剣が触れると同時に暴風の嵐を起こした。


「そしてお前はさっき言ったな。対処法を知っていると。確かに魔石は発動前に斬られてしまえばそこら辺の石と同じだ。


 だが、そこで俺はまた考えた。なら剣で触れる時には既に発動させてしまえばいいのではないかとな。」


 突如現れた嵐にノスターが大きく後退し、そしてその間もトライアは話し続ける。


「どうだろう。お前に対処しきれるかな。」


 タイミングが不明の攻撃が完全追尾の魔術式によって必ず当たる。まさに先手必勝の策。攻撃の軌道と起動の両方が不明の攻撃を捌くのはそもそもかなり難易度が高いし、そしてもしそれができたとしても攻勢に出るのは極めて難しい。


 これこそが魔道具師トライア=ウェルスの4年間の集大成。彼が考える最強の魔道具である。

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