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いずれ最果てへ至る神殿師  作者: きりきりきりたんぽ
第二章 神殿祈祷祭編
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先輩達

 養成学校ブレイバーとボーダー魔術学院の対抗戦が始まった。その様子を俺たちセントリア学院の生徒は控室で眺めていた。


 とはいえ、三年生は俺と生徒会長のみ。それ以外は全員先輩で誰も話す相手がいない。それだけならまだいいのだが、その先輩のうち半分近くは俺が対抗戦で打ち負かした相手なのだ。すごい居心地が悪い。しかも生徒会長は代表かなんかの仕事で席外してるし。


 つまり、俺ぼっち。


 まだ加護の研究とかできたらよかったんだが、あれは少なからず魔力を使うから今はできないし。仕方ないから鞘から半分ほど抜いた剣の刃に写る自分の姿を見つめながらボーっとしていた。


 順位戦前とかの緊張した時とかよくやってたけど、やっぱりなんか心が落ち着くな。体から余分な力が抜けていく感じがする。そう、周囲の雑音も消えて、自我がゆっくり自分の中に溶け込むような。


*****


「……おい、だれか話しかけに行けよ。アイツなんか怖えぞ。」

「無理無理。近づいたら即刻斬られるって。何あの覇気?こんなところで出すもんじゃないだろ。一応味方だぞ。」

「いつの時代の剣客だよ。あんな修羅みたいなやつには勝てねぇわ。後輩とか通り越してただ尊敬しちまう。」


 控室で一人抜き身の剣で周囲を威嚇している後輩を前に先輩らは思わず視線を試合からそらし、まじまじとその身じろぎ一つしないその姿を眺めていた。


「お前らしっかり試合見ろ。誰かが連戦してきてもおかしくない。それにそいつは生徒会長のお墨付きだ、なんか考えがあるんだろう。ほっとけ。」


 そんな彼らに活を入れたのは学院順位1位その人である。マクスウェル=ボナパルトはちらりとテルに視線を向けたもののすぐに試合に視線を戻した。


 何でもないことのようにふるまっている彼だが、しかしその実心は動揺で占められていた。


 ―――え?何、あいつ。強者が過ぎんだろ。わけわからんって。なんでこんな時にそんな瞑想みたいなことができるんだよ。相手になるかもしれないのが今戦ってるんだぞ?少しは意識を向けろよ。対策なんていらないってか?

そういえばあいつ順位戦も大して事前準備せずに突っ込むんだっけ?はぁー、わけわかんねぇー。しかもなんでそれで勝ててんだよ。順位戦の度に相手の対策しまくってる俺がバカみたいじゃねえか。


 彼は天才であるが、努力の人でもある。与えられた才能に慢心することなく、弛まぬ努力を積み重ねた結果が学院順位1位という称号なのである。しかも同級生の中には同じく三大公爵の内の一つであるシャーウッド家マリナ=シャーウッドを下しての1位なのである。間違いなく同世代の中では一番強い。はずだった。


 そのプライドは彼の中に生じる前にけた外れの後輩たちによって粉々に吹き飛ばされていた。


 三年生のアリス王女殿下もおかしい。なんで三年生なのに学院順位4位なの?しかも生徒会長もやってるよね?……はぁー。意味不明、理解不能。


 いや、まだアリス王女殿下はまだ理解できる。あの偉大な国王陛下のお子なのだから。むしろ当たり前と捉えるのが普通かもしれない。だって彼女の兄も姉もとんでもない人だからね。方や神殿騎士団の団長を務め、片や魔境の中一人で生きているSランク冒険者だ。だから、まあしょうがない。


 でもお前は違うだろ、テル=ガーディ。なんでもうそんなに達観してるの?相手に勝つために相手の対策をしよう、じゃなくて自分を極限まで高めようなんてそこら辺の大人でもできないようなことを、なんで後輩の癖にできてるんだ?というかおまえ平民だったよね?そんな強くなくてもいいんじゃないのか?なんでそこまで強くなろうとするんだよ。


「しっかり試合見てる?随分ボーっとしてるみたいだけど。」


 思わず声が出そうになった。隣に視線を送るとそこには胡乱気な視線を俺に向ける少女が立っていた。ライバルでもあり幼馴染でもあるマリナ=シャーウッドである。


 声の代わりに溜息をついて努めて震えないように声を出した。


「……ボーっとなどしてない。あの魔道具の構造を考えていただけだ。」


「どーだか。どうせあの後輩君に気圧されただけでしょ。相変わらずポーカーフェイスだけはうまいんだから。」


「俺が後輩に気圧されるだと?俺は1位だぞ?アイツよりも順位は上なんだが。」


 しまった。思わずムキになってしまったかもしれん。


「はいはい。それなら別にいいんだけどね。しっかり1位としての行動をとってよ?じゃないと容赦しないからね。」


 ……そりゃそうだ。俺は彼女を下して1位となったのだから。彼女には言う権利があるだろう。


 図星なのバレてないといいけどな。……無理な話か。

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