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いずれ最果てへ至る神殿師  作者: きりきりきりたんぽ
第二章 神殿祈祷祭編
38/54

開催

「定刻になりました。それでは神殿師養成学校同士による対抗戦を執り行います。

 審判は神殿統括府所属の助祭が行います。それでは各校代表者の入場です。」


 時刻を告げる鐘の音が鳴り終わった直後、裁断の間にいたマーガレット司祭の側に立つ司祭が対抗戦の始まりを宣言した。


「学生、入場!」


 側に控えていた聖騎士が手にしていた儀礼用の戦斧で地面を衝きながら号令をかけた。すると4つの出入り口から学生が十六名ずつ列になって入場してきた。


 それぞれの制服に身を包んだ彼らは学校代表としての誇りと熱意と共に背筋を伸ばして堂々とした佇まいで歩いている。


 最前を歩く生徒が裁断の間のちょうど中間あたりで立ち止まる。そして一呼吸置いた後、その中の一人が壇上に立つマーガレット司祭の前で膝をついた。


「昨年度最優秀校、養成学校ブレイバー代表シスイ=ルートがマーガレット司祭様、並びに最高司祭猊下に申し上げます。

 私達は競い、高め合う同士として、正々堂々と戦うことをここに誓わせていただきます。」


 高く澄んだ少女の声が裁断の間に小さく反響する。マーガレット司祭はその様子を穏やかな笑みを浮かべて受け止めると、隣に立つ号令をかけていた助祭から一枚の紙を受け取りながら口を開いた。


「拝受いたしました。そしてここにいらっしゃらない最高司祭猊下から伝言を預かっておりますので、ご傾聴ください。


 ―――運命は水面のように揺蕩うもの。皆さんがその波紋を乗り越えられることを強く望みます。そして神殿の加護が皆様にもあらんことを。」


 それだけ話すとその紙を畳み、助祭に渡した。頭を下げながら受け取った助祭はマーガレット司祭が少し後ろに下がったのを確認したのち、再度号令をかけた。


「マーガレット司祭様、最高司祭猊下のお言葉をもって、開会の儀といたします。

 それではまずは養成学校ブレイバーとボーダー魔術学院の対抗戦を行います。両校参加者以外が上階の傍聴席へとおあがりください。」


*****


 ―――とうとう始まりましたか。


階下の喧騒は神殿総督府の最上階にある彼女の居室にまで響いていた。


「猊下、学生たちによる対抗戦が先ほど始まりました。」


「そのようですね。光を映さないこの瞳にも若葉が芽吹く姿が浮かぶようです。」


 彼女の居室は天街付きのベッドがその大半を占めていた。机や棚は置かれておらず、初めて部屋の入ったものはそのあまりの生活感のない、ベッドだけが置かれた部屋に驚愕するであろう。


 そのベッドの中で横になっている彼女は変わらず目に包帯を付けている。そのために何も見えていないはずなのであるが、どこか彼方を見ているかのようである。


「今回はどんな生徒が参加しているのですか?」


「集められた情報によりますと優秀であることに違いはありませんが、やはり大半が貴族となっておりますね。」


「……仕方のないことです。この過酷な世界でか弱き民が生きていくためには貴族が優秀でなければなりませんから。」


「しかし平民で参加している生徒の中で一人異質な生徒がいるようです。」


「異質?」


「はい。飛行の加護を持つ少年がいるとマーガレットより報告がありました。」


「……少し待っていなさい。私が見てみます。」


 彼女はそれだけ言うと、包帯で隠された目を凝らすように顔をわずかにしかめた。


 しかし、それもわずかな間のみ。すぐに表情を戻すと体を起こし、司祭から受け取った水で喉を湿らせた。


「どのように見えましたか?」


「そうですね。確かに彼は我らが求めた主になり得る魂を持っています。前回よりおよそ百五十年ほど経ちましたか。」


「主、ですか?」


「ああ、こちらの話です。忘れてください。ですが、このまま成長すれば希代の神殿師となることは間違いないでしょう。それこそ遥か昔にいたという賢者の再来と言われるかもしれません。」


「そうなんですね。それは是非ともこのまま成長していってほしいものです。」


「そうですね。」


 ―――まあ、その未来はもう存在しないんですけどね。


 最高司祭、彼女の持つ加護である予知はただ単純に未来を見るものではない。彼女の見た物が未来となるのである。つまり、言ってしまえば予知ではなく、未来における事象の操作とでもいうべき加護なのである。


 彼女はただの一瞥で一人の少年の未来から安寧を取り去ったのだった。


 ―――はてさて、大成し救世の英雄となるか。はたまた大逆の徒となるか。それとも道半ばで地に伏すか。それくらいの選択肢は用意してあげましょう。

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