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いずれ最果てへ至る神殿師  作者: きりきりきりたんぽ
第二章 神殿祈祷祭編
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懸念

 モンスターフェスティバルという脅威を前に、冒険者ギルドと王国神殿騎士団は協力体勢に入っていた。とはいえ、パーティーで動くことが多いが、基本的には個人技に頼ることが多い冒険者と軍隊として集団行動をとる王国神殿騎士団とではあまりに在り方がずれている。そのために協力というよりは役割分担という意味合いを持っていた。


「そちらはどれだけの戦力を集められた?」


 ギルドマスターと神殿騎士団団長は王都南区にある冒険者ギルドにある一室で相談をしていた。


「今王都に残っている戦力は第一騎士団五百名のみですね。第二、三騎士団は遠征中ですし、近衛騎士団五十名が残っていますが、それは私の権限では動かせません。そもそも動いたとしても国王陛下直轄の彼らは私達の指示を聞くことはないでしょう。」


「近衛騎士団、ね。そんだけ強いのに一体何にその力を使っているのやら。」


「それ以上は不敬ですよ、ギルドマスター。

そうですね、それ以外ですとまだ配属されていない新入りが百名ほどいますが、彼らは後方支援しかできないでしょう。前線に立つにはまだ連携が取れていません。各貴族の私兵団を呼び寄せることもモンスターフェスティバル程度ではできませんし。

そちらはどうですか?」


「こっちも似たり寄ったりだ。実際に戦えるCランクが三百名、多少は信頼できるBランクが百名、期待できるAランクが十名程度だ。それ以外は、まあ後方支援くらいだな。

 ……つまり、いつもと同程度しか集まらなかったってことだ。」


 彼らの元には総勢千人にも上る戦力が集まっていた。モンスターフェスティバルに対する戦力としては十分であった。しかし、


「まずいですね。絶対的に戦力が足りません。」


「ああ、そうだな。最高司祭殿の予言の通り、バンドラッシュが目覚めるのであれば、どう考えても足りない。」


 そう、最高司祭が彼らに齎した予言は、それすなわち業炎龍バンドラッシュの目覚めであった。寝返りではない、目覚めである。それはこれまで確認されたことのない異常事態である。


 バンドラッシュが人類に敵対することはないが、それでも寝返り以上の挙動を見せる以上王都に迫る魔物の数は普段以上であろう。


「私達も前線に出るのは当然としても、どれだけ魔物が増えるかによってきますね。」


「そうだな。少なくとも倍以上の数が来ると思っておいた方が良いだろう。」


 考えれば考えるほど戦力が足りない。一体どれほどの死体を積み重ねればいいのか。そしてその死に意味を与えることができるのか。


「……やっぱり学生を使うことはできねぇのか?普段から王立セントリア学院の生徒はあそこ使ってんだろ?なら……」


「ダメです。生徒を使うわけにはいきません。成人もしていない子供を死なせるくらいなら、私は成人した大人を死地に叩き落とします。」


「そうじゃねぇよ。冒険者ギルドにだって成人してねぇガキはたくさんいるが、それはアイツらが望んだからだ。もし生徒の中に戦いたいってのがいれば話は別じゃねぇのか?」


 思わず騎士団長は言葉に詰まる。確かにギルドマスターの言うとおりだったからだ。学生の中でも上位に位置する生徒は一人前の神殿騎士と同程度の力量を持つだろう。特に上位十位以内に入る生徒はそれ以上の戦力として期待できる。


「だが!……いや、そうですね。あなたの言う通りです。やるなら早い方が良いでしょう。今日中に王都内の神殿師養成学校に通達を出しておきます。」


 言い淀んだ彼の脳裏に浮かんだのは一人の少女の姿だった。兄である自分よりもはるかに大きな才をもって生まれてきた、只一人の妹。彼女はこの知らせを受ければ間違いなくいの一番に参加するだろう。


 王侯貴族に課せられた果たすべき義務、それを全うするために。


「……浮かない顔だな。そんなにガキを戦いの場に出したくないのか?」


「そうですね。私達は先達として彼らを導かねばなりません。それは今のために死に行かせるのではなく、より良い未来へ生きるためにです。」


「そのためには俺たちが死んでも構わないと?」


「最悪そうですね。」


 そう断言する騎士団長の目は狂気に似た決意の光を秘めていて、ギルドマスターは自分より半分程度しか生きていないはずの若者に初めて個人として敬意を覚えた。


 王族だから、じゃない。鍛錬を積み、死地を乗り越えその地位を実力でつかみ取ったのだと理解した。


「……そんなのあんたにしかできないだろ。普通人間は生きたがるのが普通だ。命の取り合いをするような奴はもっと敏感になる。」


「ええ、知っています。だから戦場に出したくないんです。間違っても彼らが大人の生き汚さに倒れてはなりませんから。」


「そうだな。その点については俺も頭を悩ませているところだ。……なら、学生の指揮はそちらに任せる。その代わり分担は少しそっち多めでいいか?」


「はい。王立セントリア学院の西門付近に作戦本部を立てるので、それ以北と門前を騎士団が、南側を冒険者ギルドが守るという形でどうでしょう?」


「構わねぇ。それならうちのバカ共も騒がねえだろう。」


「ではそのように。調査隊の報告が来るまでに準備を進めておきましょう。」


 こうして来る災害への備えは進んでいく。前夜祭の準備に隠れる形で着実に。

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