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いずれ最果てへ至る神殿師  作者: きりきりきりたんぽ
第二章 神殿祈祷祭編
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暁を覚えず

「はぁ、まったく朝早くからご苦労なことだ。」


 あっという間に帰っていった生徒会の面々を背後に俺は大きくため息をついていた。


「ほんとにねー。さすがはアリスちゃんだよね。」


「それに比べてうちのリーダーときたら、ただ一週間サボっていただけだもんね。祈祷祭近くだって言うのにさ。」


「サボっ……。まあ、その通りだな。」


 急に毒を吐いてくるシャルに反論しかけたが、何を言ってもその事実は変わってくれない。こういう時は素直に認めるに限る。


「それで、一体何があったのよ?生徒会長ともども一週間謹慎とか、普通ありえないでしょ。」


 まあ要件はそれだろうな。謹慎期間中はパーティーメンバーであろうと面会することはできず、何が起こったのかを知らずに放置されたのはそれなりにストレスがたまったのだろう。

 さっきまでソファーで寝息を立てていたティナも体を起こしているし。


「あー、まあお前達には話してもいいか。」


 一瞬口外厳禁を言い渡されたことが頭によぎったが、こいつらが余計なことを言いふらすとは考えらないし、そもそも話す相手がまともにいないだろう。


「一応緘口令を言い渡されてたからな、誰にも言うなよ?」


*****


「……ってなことがあったんだよ。」


 後輩が攫われたこと、そしてその首謀者がマッシュ=バイヤーという生徒だったこと、そして夜の闘技場で殺し合いをしたことを話した。


「……そうだったのか。確かに言われてみればあの後輩たちを二、三日見なかった気がするな。」


 デュランは顎に手を当て、記憶を探るように呟いた。


「そのマッシュ=バイヤーとか言うのはそんなに強かったのか?俺は聞いたこともねえが。」


「強かったな。切り札もいくつか切る羽目になった。」


 正直にそう思う。マッシュ=バイヤーはともかく、あのエリオット=ギャラルホルンと名乗った男は強かった。致命傷覚悟の突撃とか久しぶりだったな。

 あの額に着けていた魔道具が関係しているんだろうが、別の人格を憑依させる魔道具等、俺は聞いたことがない。


……おそらくあれは外法魔道具。どういう効果なのかは具体的には分からないが、間違いないだろう。さすがにこんな話はこいつらには話せんが。


「……待って。テルがそんなぽっと出の貴族なんかに苦戦するとは思えない。他に何かなかったの?」


「…………。」


 ……鋭いな。ティナが珍しく真剣な目付きで俺に問いかけてくる。他のメンバーも同じように思ったのだろう、コテージの中の空気も張り詰めてくる。

 ……さすがにこの状況で嘘をついたらバレるな。特に感知系が得意なティナはもちろん、そうじゃなくても付き合いが深いこいつらだと仕草や癖以外にも魔力の揺らぎとかでも動揺を気取られてしまう。


「……特にこれと言って思いつくものはないな。魔道具とか仮に使われたとしても通常の順位戦でも使うのは許されているから問題にはならないだろう。」


 ならどうするか。事実だけで答えればいい。嘘は絶対につかない、ついてはいけない。


「……他には?」


「そうだな。手こずった一番の要因はアイツの持っていた加護だな。」


「加護?」


 ルカの気の抜けたような声が響く。


「ああ。おそらく物体の性質を書き換えるような加護だったのだろう、俺の雷撃が利かなかった。その上剣を持っていくのを忘れていたから手間取ったんだ。」


「なんで剣もっていかなかったんだよ。お前にとっちゃ、剣は杖の役割も果たしてんだろ?」


「余裕だと思ってたんだよ。俺だって名前を知らないやつに苦戦するとか欠片も思ってなかったんだから。」


 全て事実だ。油断していたのも、アイツの加護が厄介だったのも全て。ただ魔道具については触れないようにしただけだ。


「……そう。大変だったね。」


「ああ。だが、久しぶりに本気で戦った気がする。本音を言うなら剣を持った状態であれくらいの熱戦をやりたかったけどな。」


*****


(嘘は言っていない。でもやっぱりどこかおかしい。)


 ティナの感知能力は神殿を出さずともかなり強い。それこそ触れることさえできれば心を読むことだってできる程度には。


(……そう、全部本当のことしか言っていない。)


 その結果ティナはテルが一切の嘘をついていないことに気付いた。だが、それは同時に違和感も彼女に齎していて。


(普段のテルだったら誇張して話すことだって多い。なのに、重要な今に限って本当のことだけを。

 ……これは誠意?それとも隠蔽?)


 長い付き合いの中で初めて遭遇する異常にティナは判断ができなかった。自分勝手をして一週間も留守にした事に対する誠意なのか、もしくは都合が悪いことがあってそれを隠しているのか。


(……でも、私はテルを、メンバーのみんなを信じてる。もし隠蔽していたとしても、それはテルが私達のためにした事だと私は信じてみるよ。)


 ティナは一限目の授業に向かうテルの背後を見送ってから、ゆっくりと再度眠りについた。

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