プロローグ・二人目
その少女は走っていた。
槍に穿たれ、出血の止まらない肩を抑えながら、ゆっくりと、必死に。
冷たい石畳を素足で蹴りつけながら前へ、前へと。
遠のきそうになる意識を痛みと絶えず流れる流血で無理やり踏み止めて。
そこは神殿。とても危険だが、その最奥に至ればなんでも願いが叶うという伝説を持つ神殿である。
しかし少女は賢しかった。そんな甘言に乗せられないほどに。
しかし少女は人情に溢れていた。誰かのためであれば自らを犠牲にするのをためらわないほどに。
しかし少女は非力だった。魔力持ちではあるものの、身体能力は一般人のそれと大して変わらないほどに。
しかして少女は神殿へと足を踏み入れ、致命傷を負い、それでも前へと進んでいく。
陽の光は届かず、風も吹かない。ただ冷たい空気が満ちるこの空間をただ一人で。
しかしてとうとう、少女はその最奥へとたどり着いた。
なぜ?
これまで幾度も大人数の攻略隊が組まれたが、それを全て叩き返していたのに。
なぜ?
それらは全て強力な魔力持ちで構成されていたのに。
最奥に置かれた祭壇を前に少女の胸には疑問が沸き上がってきた。
しかし同時にそれらが今はどうでもいいことを本能で悟る。
そうだ。少女はただ恩人の命のために自らの命を捧げたのだ。
恩人を救うための力を。




