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いずれ最果てへ至る神殿師  作者: きりきりきりたんぽ
第一章 王立セントリア学院編
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飛入り参加

「返事を伺いにまいりました。」


 ちょうど一週間後の休息日。俺たちは個別で受けていた討伐依頼を終えてコテージで集合していた。去年から週に一度しているBBQの準備に取り掛かっている時にそんな声が聞こえてきたのだ。


「……使いを出すんじゃなかったのか、生徒会長。」


「別にその使いが私ではないと言った覚えはありませんね。」


 生徒会長その人がやってきたのだ。それに彼女の側に見覚えのある少女も立っている。確か生徒会の書記だったか……。それにもかかわらずルカ達は先週とは違い、普通の顔をしてBBQの準備を進めている。デュランとルカは庭に火を起こしているし、ティナとシャルは野菜を切っている。まるで誰も来ていないかのようだ。


 まあ、ここは治外法権みたいなもんだしな。上位8位の特権というやつだ。


「そ、そうか。ええと、それで神殿祈祷祭だったな。結局出ることにしたよ。」


「おや、心変わりをしたんですか。」


「まあな。いろいろあって出てもいいと思った。」


「それはそれは。ありがたいことです。もし無理そうでも今回のことは借りにしてでも出てもらうつもりでしたから。」


「そ、そうか。思ったよりもガチだったんだな。」


 王女が借りなんて言うんじゃないよ。どんだけでかいか分からな過ぎて怖すぎるわ。最悪暗殺の心配をする必要があるだろ。それに側に立ってる書記の人が怖い顔をしてるぞ……?やっぱりダメなんじゃないか?


「では、神殿祈祷祭の参加については参加ということで受理しておきますね。」


「おう。頼む。」


「それはそれとして、……随分楽しそうなことをしていますね?」


 生徒会長が自分の前であるにもかかわらず自由に動き回っているルカ達を見ながらつぶやいた。


 まあ、こいつらいつも生徒会長の前じゃ借りてきた猫と化してるもんな。他のパーティーと合同で依頼を受ける時もほとんどしゃべらないが、それはリーダーじゃないからなんだよな。よそのパーティーと話し合いをするときはリーダーが代表として話し合いをするし、仮に喋るとしても非常時を除けば同じ役割の人とだけだもんな。


「ん?ああ、今日はBBQだな。魔物討伐に行った休息日は少し多めに討伐しておいて、残った肉とかで軽く宴会をするんだよ。」


 かつてはイベントみたいな扱いだったが、今じゃ恒例行事となっている。なんなら休息日に誰も討伐依頼を受けないことはほとんどないからほぼ毎週だな。まあ先週みたいに誰も行けないことはあるんだけどな。


そう、先週はほぼ全部ダミアン達後輩に譲ったんだよ。頼みの綱のレッドワイバーンは後からやってきた統制委員会に参考資料とかいって持っていかれたしな。だから珍しくできなかったんだが、それで火が付いたのか今日はいつも以上に豪華だ。買ってきた野菜の種類も多いし、森で取ってきたんだろうキノコや香草もある。……あれって食べても大丈夫なのか?


「……素晴らしいですね。今度生徒会でもやってみましょうか。」


「いいんじゃないか?そんなに準備に時間がかからないし、片付けもそんなに大変じゃない。学院順位4位ともなればここ以上に大きいのがあるだろうしな。」


「……そうですね。行きますよ、リア。」


 何か言いたそうにしていたが、彼女の口から出たのは短い相槌だった。え、言いたいことがあるなら言えばいいのに……。


 そんなことを思った直後だった。最初に目を合ってからは影に徹していた書記の生徒が俺に笑顔を向けた。えっ、しかも若干青筋が見えたような……。


 直後、生徒会長の頭にチョップが叩き込まれていた。


「ッ!?」(俺)


「「「「?!?!?」」」」(なんだかんだ言ってちらちらこっちの様子を伺っていたルカ達)


「……痛い。」(叩かれた張本人。若干涙目)


「……失礼しました。何か催し事をするなら事前に調査をしておくべきでしょう。テルさん、突然で申し訳ありませんが私達も参加させていただけないでしょうか?」


 こっわ。なんで思いっきりチョップをかました後にそんなきれいな笑顔が浮かべられるんですかね?そんなの当然、


「お、おう。それは別に構わないが。……会長は大丈夫そうか?」


 思わずOKしちまったよ、こんちくしょうが。っていうか本当に会長は大丈夫なのか?無防備な頭にあんなのされたらたまったもんじゃないぞ?しかも予備動作がほとんどなかったし。


 ……もしかして生徒会長よりも怖かったりする?


*****


「……はぁ。おいしいですね……。」


 本当に溜息が付くほどおいしいです。これまで食べた食事の中で本当に上位に割り込むほどに。こんな食事を定期的に摂っているとは、うらやましいですね。


 っていうか、なんでリアは無理やり参加した挙句私を置いて皆さんと楽しそうに話してるんでしょうか?


「あれー?なんでこんな端にいるのー?」


 心の中でギリギリと奥歯を噛みしめていた私の側に両手にお肉の串を持った誰かがやってきました。


 ルカ=セレンディ。迸る才能に物を言わせ、自分勝手に振る舞っている、ように見える生徒ですね。確かに彼女は勉学も加護も全てが才能によって成り立っているといっても過言ではないほどの傑物です。その可憐な見た目もあってか、どうやらファンクラブなるものがあるらしいですね。


「……おいしいごはんをありがとうございます。私に関わらず皆さんで楽しんできてください。」


「えー?それはできないよー。一緒にあっちで食べようよ!ほら、なんかバカ二人がまたやってるよー。」


 少し間延びした声で話す彼女は楽し気で、それでも私の側から動こうとはしません。彼女に言われ、視線を向けると、そこには木剣を手に持った二人が向かい合っていました。


「いつものことなんだよねー。テルが育ててたお肉をデュランが取って、喧嘩になるんだよー。結果は分かってるのによくやるよねー。」


「いつものことなんですか?」


「そうそう。デュランはテルのを狙い撃ちしてるんだけど、たまにティナのを獲っちゃうんだよー。そうなったら大変だよー。ティナのご機嫌取りに一日の稼ぎが消えるそうだし。バカだよねー。」


 不敵な笑みを浮かべる大男へ、憤懣やるかたなしと言いたげな小柄な少年が手を伸ばす。直後、大男が不自然な姿勢で一瞬固まり、その一瞬を逃さずに小柄な少年が雷もかくやというスピードで手を振りぬいた。


 大男は吹き飛ばされ、―――あれ?こっちに飛んできてません?


「あっはは。邪魔だよー。」


 隣に座るルカさんが指を軽く回すと、大男は空中で一回転してルカさんの側に着弾しました。ピクピクと震えていますが大丈夫でしょうか……?


「こらー!人がいるところに飛ばすな―!!」


「ごめん、ミスった!!」


「こちとらガールズトークの途中なんだよー?ほら、デュランもさっさと起きた!」


「……すまねぇ。ったく冗談が通じねぇなぁ……。」


 ふらふらになりながらデュランさんが元の場所に戻っていきます。


「ね?」


「すごいですね。無詠唱であそこまでの魔術を展開するなんて。」


「あははー。ああいうのは得意なんだー。テルがやってたことも十分おかしいんだけどねー。」


 そんなことを言いながらも少し照れてるのがかわいいですね。彼女の人気の一端を見たような気がします。


「でも私よりも会長の方がすごいと思うけどなー。ほら、私も一応貴族なんだけど、令嬢教育とか真っ先に切り捨てちゃったし。ティナもシャルもそうだしー。

 完璧な令嬢やりながら私達よりも強い会長の方がすごいと思うけどなー。」


「……そうでしょうか。私はただ選べなかっただけですよ。周囲が望むままに王女となり、生徒会長になりました。

 だから皆さんのことをうらやましいと思っているんですよ。我が道を進む、皆さんのことを。」


 自分でもびっくりするほどの独白にルカさんも目を瞬かせています。


「……そうだったんだー。全然気づかなかったよー。てっきり目の敵にされてるもんだと思ってたし。」


「ふふ、やっぱりそう見えていましたよね、すいません。……失礼ついでに、先ほどの話も忘れて下さい。」


「それは無理だなー。ね、アリスちゃん。今度の休息日一緒にどこか行こうよ。」


「……え?」


 その間の抜けた声が自分の口から洩れたと気づいたのは彼女の驚いたような顔を見た時でした。

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