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いずれ最果てへ至る神殿師  作者: きりきりきりたんぽ
第一章 王立セントリア学院編
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加護

「で?どういうつもりなんだ?」


 生徒会長から神殿祈祷祭について言われた後、俺はパーティーメンバーから詰められていた。コテージに帰ってきてすぐのことだった。


「神殿祈祷祭か?別に俺は出るつもりはないよ。」


「そうじゃねぇ。なんで出ないんだ?別に生徒会長の肩を持つつもりもねぇ、この学院のことを考えろなんてことも言わねぇ。だが、俺たちにはその理由を教えろ。」


 デュランの背後でルカ達が俺の方を見ている。お前達も知りたいんかい。まあ、別にいいけどさ。


「あー、まあお前達には言ってもいいか。それがな、最近新しい加護を授かったんだよ。その研究がしたい。」


 加護。神殿との契約によってヒトにもたらされる特別な力の一つだ。


一つは魔力。体力とは違う、純粋なエネルギー。これを術式という鋳型に入れることで魔術となって放つことができる。戦闘や研究を繰り返すことで上がっていく神殿とのリンク率に比例してその総量は増えていく。


 もう一つは加護。仕組みとしては魔術と同じだが、その鋳型の複雑性が違いすぎる。魔術が二次元の鋳型だとしたら、加護は三次元の鋳型である。文字通りの次元違いであるため、最も単純な加護であったとしても、魔術で再現するのは不可能と言われている。

 契約当初から一つ持っているが、リンク率を上げていくことでその数は増えていき、最大で四つまで増えるらしい。とはいえ、それは大昔の賢者とかにいたかもしれないっていう程度で、通常最大三つだ。


 俺の場合は一つ目が雷撃で、二つ目が飛行だった。一年生の間は雷撃だけだったから戦うのがしんどかったな。


「えー!?もう三つ目なの!?あたしまだ二つも使いこなせてないのに!相変わらず早いね。え、三つ目何だったの!?」


「それはまたのお楽しみだな。それに正直使いこなせないどころか、まだまだ理解しきれてもないんだ。」


「……それもそう。通常、加護は後に授かるものほど複雑で、強力になる。でも、そう……。もうテルは三つ目まで行ったんだ。すごいね。」


 ティナが平坦な声でありながらも嬉しそうに呟いた。普段は乏しい表情も今は緩んでいる。なにせ実質人生最後の加護を身近な人間が授かったのだから。三つ葉祝いと言って、加護を授かるたびにお祝いをするのがこの国の常識であり、パーティーを組んで以来、誰かが加護を授かるたびにお祝いをしていた。


「すげーなぁ、テル!それって飛行よりもすごいのか?」


「そうだな。少なくとも俺は聞いたことがなかった。そもそもの系統からしてずれているんだと思う。」


 そもそもとして二つ目に授かった加護が飛行だったから三つ目も特殊なものになったんだろう。授けられる加護はそのすべてが同じか近い系統にあるからな。


「そっかー。ならしょうがないかー。」


 ここにいる全員が新しい加護を授かってからの研究熱の高さを自覚しているために、俺が例の神殿祈祷祭に出たくないという感情を理解してしまうのだろう。なんなら学院も申請さえすれば一時的な休学も認めてくれる以上、協力的であると言える。


「でもさ、せっかくならそのお披露目も派手にやりたくない?あたしはやってほしいんだけど。」


 シャルが何か悪いことが重いついたいたずらっ子のような笑みを浮かべながら言ってきた。


「ん?まあ、どうせまた順位戦を受けることもあるだろうから、その時でいいんじゃないか?あれってどうせ全校生徒が見に来るだろ。」


 順位戦はほぼ毎日行われているが、その順位が上がれば上がるほど観客は増え、上位10位以内が絡むとなるとほぼ全校生徒が集まる。そのため、学院屈指の最大施設である総合競技場がほぼ埋まるほどである。


「いやー、そんなんじゃ足りないよ。せいぜいがこの学院の生徒じゃん?あたしたちのリーダーなんだ、この王都中に知らしめようよ!」


「はぁ?何を言ってんだよ。やりたくてもそんな機会はないだろ。」


 王都中って、俺はただの平民だぞ?


「……いや、あるよー。神殿祈祷祭の本祭の方、セントリア国宝祭は確か映像魔道具を使って全国に放送されるはず。」


 しかもあんのかい。……えー、知らなかったけど、本当かよ?


「そう言えばそうだったな。俺も親父に何回も見せられた。」


「……私も。あれは結構参考になる。」


 ……本当っぽいな。しかも話しぶりから映像まで残るらしい。


「やってみようよ!本祭は三か月以上先だから研究もし終わるでしょ?」


 ……なんでこんな嬉しそうなんだか。ここまで嬉しそうにされると自分のことだっていう感覚が薄れてくるな。

 えー、でも出るのかー?本当に?めんど、……いや、だるいな。


「いやいや、声に出てるからね?しかも言い直しても内容変わってないし。……よし、なら分かった!」


「ん?何が?」


「もし、本祭に出ることができたら、美少女天才神殿師のあたしが何か一つ言うことを聞いてあげる!」


 そのシャルの宣言の後、一陣の冷たい風が吹いた気がする。……おかしいな、窓も扉も空けてないんだが。


 ……え?突然何を言い出すんだ、コイツ。美少女天才神殿師?そんなこと自称したことなかったろ、これまで。あってるかもしれないけどさ。

 しかも言うことを聞く?思わずシャルの顔を凝視してしまった。


「もちろんエロいことでもいいよ?テルに覚悟があるなら、だけど。」


 蠱惑的な笑みを浮かべながら何か言っている。暗にヘタレと言われている気がするのは気のせいじゃないだろう。


 ……はぁー。なんだかんだ言って俺のパーティーメンバーは(俺を除いて)人気者なんだよ、一応。生徒会長とまではいかなくても、みんな忖度なしでかわいい。今でも定期的に告白されてんじゃないの?

 デュランは顔こそいかついが、血筋とか剣とかあるしさ。


 何もないのは俺くらいだよ?まったく。そんなのがシャルに手を出してみろ、何が起こるか分かったもんじゃない。


「はぁー、そんなこと言うかよ。自分の体は大切にしろよ。」


「……チッ。」(ほっ……)


 ん?なんか言ったか?良く聞こえなかったが、まあいいだろう。でもさすがにメンバーにここまで言われて動かないリーダーは情けなさすぎるな。


「神殿祈祷祭には出るよ。でも研究の方が大事だから結果は期待するなよ?」


「……うん。分かってる。」


 ティナも嬉しそうだし、まあそれでいっか。ちらっとデュランとルカを見てみると二人とも微妙そうな顔をしていた。


 いやいや、お前達が出ろって言ったんだろうが。なんつー顔しとんじゃ。

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