約束のひまわり
この作品は、『第4回「下野紘・巽悠衣子の 小説家になろうラジオ」大賞』への応募作品です。
「一週間後。もし、あのひまわりが咲いてたら……キミと付き合うこと、考えてもいいよ」
*
僕は、来る日も来る日も、あのひまわりがある家に通った。
まだ、咲かない。
まだ、咲かない……
天気予報は執拗にチェックした。
いいお天気が続いていたけれど、あと何日……というところで、並んだ曇りマーク。
家中のティッシュでてるてる坊主を作って、母さんに怒られた。
ーーそもそも、そもそもだ。
あのひまわりが咲いたところで、僕との交際を“考えてもいい”という段階なのだ。
願うだけ、無駄なのではないか……
夏の日差し。
ダラダラ肌を伝う汗。
僕は途方に暮れながら、ひまわりを見つめる。
タイムリミットは、明日。
「アンタ」
僕のすぐ傍で、声がした。
思わず振り返ると、呆れ顔のおばあさんが立っていた。
「ここんとこ数日、何してんの」
*
僕は成り行きで、事のあらましをおばあさんに話した。
初対面の、しかも、家のひまわりをジロジロと見つめていた怪しい男子高校生の話を、おばあさんは真剣に聞いてくれた。
「……アンタの想いは、運任せにできるほど、軽いものなのかい?」
「え」
そう言うと、おばあさんは立ち上がり、家の裏手へ消えてしまった。
置いてけぼりを食らった僕は、また途方に暮れてしまう。
「咲くか咲かないかわからないひまわりに運命を託す暇があったら」
ギョッとした。
気がつくと、おばあさんは僕の隣にいたのだ。
「自分で運命を動かしたらどうなんだい」
そう言って、おばあさんは僕に“あるもの”を渡した。
*
「これ……ひょっとして“あの”ひまわり?どうしてキミが」
「違う。“あの”ひまわりじゃないよ」
厳密に言うと、これがあの家のひまわりであることに間違いはないのだが……説明は後だ。
「屁理屈だと思われてもいい。もし本当に叶えたい願いがあるなら、待つだけじゃダメだって思ったんだ。“あの”ひまわりが今日までに咲かなかったとしても、僕とのこと、真剣に考えてよ」
そう言って僕は想い人に、美しく咲いたひまわりの花を差し出した。
彼女は黙ってひまわりを見つめた後、おもむろにカバンから何かを取り出した。
それはーーやはり、ひまわりの花だった。
「私も、同じこと思ってた……偶然に任せるんじゃなくて、自分でハッキリ言わなきゃダメだよね」
彼女は、手にしたひまわりを僕に差し出して、笑った。
「私で良ければ……よろしくお願いします」
それは、太陽の下のひまわりにも負けないくらいの、眩しい笑顔だった。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。「なろうラジオ大賞4」へは、他にも作品を投稿しています。もしご興味がありましたら、ぜひ覗いてみてくださいませ。