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約束のひまわり

この作品は、『第4回「下野紘・巽悠衣子の 小説家になろうラジオ」大賞』への応募作品です。

「一週間後。もし、あのひまわりが咲いてたら……キミと付き合うこと、考えてもいいよ」



 僕は、来る日も来る日も、あのひまわりがある家に通った。

 

 まだ、咲かない。

 まだ、咲かない……


 天気予報は執拗にチェックした。

 いいお天気が続いていたけれど、あと何日……というところで、並んだ曇りマーク。


 家中のティッシュでてるてる坊主を作って、母さんに怒られた。


 ーーそもそも、そもそもだ。

 あのひまわりが咲いたところで、僕との交際を“考えてもいい”という段階なのだ。


 願うだけ、無駄なのではないか……


 夏の日差し。

 ダラダラ肌を伝う汗。

 僕は途方に暮れながら、ひまわりを見つめる。

 

 タイムリミットは、明日。


「アンタ」


 僕のすぐ傍で、声がした。

 思わず振り返ると、呆れ顔のおばあさんが立っていた。


「ここんとこ数日、何してんの」



 僕は成り行きで、事のあらましをおばあさんに話した。

 初対面の、しかも、家のひまわりをジロジロと見つめていた怪しい男子高校生の話を、おばあさんは真剣に聞いてくれた。


「……アンタの想いは、運任せ(ひとまかせ)にできるほど、軽いものなのかい?」

「え」


 そう言うと、おばあさんは立ち上がり、家の裏手へ消えてしまった。

 置いてけぼりを食らった僕は、また途方に暮れてしまう。


「咲くか咲かないかわからないひまわりに運命を託す暇があったら」


 ギョッとした。

 気がつくと、おばあさんは僕の隣にいたのだ。


「自分で運命を動かしたらどうなんだい」


 そう言って、おばあさんは僕に“あるもの”を渡した。



「これ……ひょっとして“あの”ひまわり?どうしてキミが」

「違う。“あの”ひまわりじゃないよ」


 厳密に言うと、これがあの家のひまわりであることに間違いはないのだが……説明は後だ。


「屁理屈だと思われてもいい。もし本当に叶えたい願いがあるなら、待つだけじゃダメだって思ったんだ。“あの”ひまわりが今日までに咲かなかったとしても、僕とのこと、真剣に考えてよ」


 そう言って僕は想い人に、美しく咲いたひまわりの花を差し出した。


 彼女は黙ってひまわりを見つめた後、おもむろにカバンから何かを取り出した。

 それはーーやはり、ひまわりの花だった。


「私も、同じこと思ってた……偶然に任せるんじゃなくて、自分でハッキリ言わなきゃダメだよね」


 彼女は、手にしたひまわりを僕に差し出して、笑った。


「私で良ければ……よろしくお願いします」


 それは、太陽の下のひまわりにも負けないくらいの、眩しい笑顔だった。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。「なろうラジオ大賞4」へは、他にも作品を投稿しています。もしご興味がありましたら、ぜひ覗いてみてくださいませ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] そりゃもお おばあさん! 勇気を有難う!! [一言] 途中で 不思議な話 なのかな?と思いました。 おばあさん=ひまわりを理由に告白されなかった彼女 だったりして。
[良い点] かっこいい彼らに幸あれ!思わず叫びたくなりますね! 青春っっ。噛み締めて、爽やかに晴れやかで、楽しかったです!!! 真剣さと一歩踏み出す勇気がかっこいい作品をありがとうございました!
[良い点] 夏らしい青春の一コマでキュンキュンしました! [一言] 先日は素敵なコメントをいただきありがとうございましたm(_ _)m
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