9話 ソフィアは衝撃的な事実を知る
「これは……」
「実は先日の王女の護衛の際、ケルベロスと遭遇する数日前でしょうか。不意をつかれて別のモンスターに深傷を負わされていましてね。情けない話でしょう?」
「よくこの怪我で今まで平然としていられましたね……」
私だったら痛みで動けなかったと思う。
義父様からの暴行でもここまでひどい怪我は負わされたことはさすがにない。
最後に私を殺そうとしてきた件は別として。
「やってみます。こればかりはしっかり詠唱もしますね。『安らかな癒しを与えたまえ、ヒール』」
アーヴァイン様の深傷がみるみるうちに治っていき、本来の姿であろう割れた腹筋へと戻った。
「おぉ……。元どおりになった……」
これを見ていた騎士団たちは大歓声をあげて喜んでくれているようだった。
「ありがとうございます! なんとお礼を言って良いのやら……」
「気にしないでください。むしろ、私に色々な魔法を使えることを教えてくれたのはアーヴァイン様なのですから。お礼を言うのは私ですよ」
「ソフィア様は自分のした偉業を理解してください……」
アーヴァイン様には本当に感謝している。
おかげで今まで不思議に感じていた謎が解けたのだから。
「もしかして、ソフィア様の回復魔法は病気にも効くのでは?」
「誰か病気にかかっているのですか? 試してみたいです」
「病気にかかっているのは陛下です」
「え!?」
ビックリしてしまい、大きめの声を出してしまった。
♢
国王陛下は医師でも原因がわからないような病気にかかっている。
わかっていることとしては、陛下の命はもう長くない。
立ったり歩いたりすることすら困難な状況である。
私が目覚めたときに陛下が来てくれたこと自体が、寿命を縮めてしまう無謀な行為だったそうだ。
だからアーヴァイン様は最初、陛下に対して歩いてはいけないようなことを言っていた。
陛下のいる王室へ向かう途中、アーヴァイン様が詳しく話してくれた。
「こんなことを急に頼んでしまい申し訳ないと思っています……。ですが、陛下は我が国にとってのかなめであり、民衆からも絶大な人気を維持しております。陛下がこのまま亡くなられてしまっては……」
アーヴァイン様が今にも涙をこぼしそうな顔になっていた。
私は貴族に対してのイメージがあまり良く想っていなかった。
義父様からの奴隷と虐待。
そして婚約者だったドレムからも無理難題を押し付けられていた。
貴族とはそういうものなのかと考えていたのだ。
だが、王都へ来てみてよくわかった。
貴族全員が悪い人ではないんだと。
アーヴァイン様や王女、そして国王陛下が気づかせてくれた。
恩人でもある陛下の病気は、私の魔法で治せるかどうかはわからない。
私は、心の底から陛下をなんとか治したいと願っていた。
次第に私の歩行速度は速くなっていった。
「あ……団長……。陛下の容態が……」
前方から警備兵らしき男が顔が青ざめた表情でそんなことを言ってきた。
「すぐ向かう! ソフィア様、こちらへ」
「陛下……。生きていてください……」
長い回廊を全力疾走で王室へと向かった。
おはようございます。
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