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2話 ソフィアは死んでしまった

「ソフィアよ、婚約破棄を宣告する」

「私はドレム様の望みのままに従っていたつもりでしたが……。一体なぜですか?」


 婚約者ドレム様の家まで行ったら、いきなり婚約破棄宣言をされた。

 これが義父様が楽しみにしていろと言っていたことなのだろうか。

 さすがに婚約者を指名しておきながら婚約破棄を楽しみに……なんてことはないと思う。


「俺は命令に従っているまでだ。俺から婚約破棄をすれば多額の金が手に入るのだからな」

「一体誰に命令を……?」

「さぁな。どちらにしろ、お前みたいな人間は俺の好みではないし、そもそも俺には好きな女がいる。このあと入ってくる金でその女を口説くつもりだ」

「今なんと……?」

「気がつかない時点でお前はグズで間抜けなんだよ。そもそも俺が伯爵様からの命令で婚約を受け入れた理由は金だ。そんなこともわからずにお前はせっせと俺の命令に従う操り人形でいたのだよ」


 操り人形とは言うが、伯爵家での仕打ちと比べればマシだった。

 それよりも、誰に命令されたのかが気になってしまう。

 義父様ではないだろうし、一体……。


「俺は女を口説き、領地を出て共に冒険者になりたいという夢がある。おまえなど元々必要ないのだ。わかったらさっさと出ていけ。二度と顔を見せるなよ?」


 半ば強引に追い出されてしまった。

 ドレム様……、いや、ドレムからも毎日のように掃除や身の回りの世話ばかりさせられていて、全くデートというような感じはなかったな。

 それでも、まだドレムと一緒にいたほうがマシだったと思ってしまう自分が情けない。


 いっそのこと、領地から逃げ出してモンスターの餌になったほうがマシかもしれない。

 そんなことすら思考に浮かんでしまうほど追い詰められてしまった。


 だが、私は理不尽な生活の中でもやりたいことがある。

 本当の両親が誰で、どこかで生きているのなら会ってみたい。

 それまでは、私はどんな状況であっても生きていく。


 とはいえ、この状況はかなりまずい気がする。

 私は重い足取りで伯爵家へ帰った。


 ♢


「ばかものめが!! せっかくの縁談を台無しにしおって!! しかも婚約破棄だと!?」

「申し訳ありません」


 言い訳はしない。

 話の通用できる相手ではないのだから。

 今回は昨日以上にご立腹のようで、ムチや金属棒で殴ってきた。


 毎度のことで痛みも慣れてしまったが、今回も痛いフリだけはしておく。

 そうしないと、討伐で使用しそうな武器を使って暴行されてしまうかもしれないからだ。

 だが今回はそんな思惑も無駄なようで、次第にエスカレートしていく。

 まるで私を殺そうかとするような勢いだ。


 普段家でダラダラとしている義母様は、どういうわけか今日は家にいないため、容赦がない。


「そ……それはさすがに……」

「問題ないだろう? お前はどういうわけか怪我をしても翌朝には回復しているではないか。いや、むしろ今回は二度と回復できなくとも良いのだよ!」


 回復もなにも……。

 そんな武器で攻撃されたら死んじゃうと思うのですが……。

 義父様は両手で剣を持ち、私を睨みつけてくる。

 明らかに今から殺しますというような目をしていた。


 さすがにやばいと思った。

 逃げ出そうとしたが、普段まともに食事が摂れない上に日頃の過労で体力が衰弱しきっていた。

 そのため、あっというまに捕まってしまった。

 振り解くことすらできない。


「昨日、あすを楽しみにしていろと言ったことを覚えているか?」

「は……、は……い……」


 私は恐怖でまともに声が出ない。

 その間にもなんとか脱出しようと試みたがどうすることもできなかった。


「死に土産に教えてやろう。この縁談は、婚約破棄してもらうところまでが私の仕組んだものだったのだよ」

「え!?」

「先ほどの叱責はお前に向けたただの演技だ。申し訳そうな顔をしている哀れな表情は、私にとって最高の報酬だったよ」

「ひどすぎませんか……?」

「だから楽しみにしていろと言ったであろう。お前は十分に伯爵家の評判を上げるために活躍してくれた。用済みになったお前はもういらぬ」

「きゃーーーーーーーーーー!!」


 剣が私の身体を切り刻んだ感覚が一瞬あった。

 そのあと、ひどい痛みがあったが気を失うほうが早かった。


 目的も達成できないままこんな形で殺されてしまうなんて……。

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