1.翌朝の決闘前。
ダリス師匠の教え(*‘ω‘ *)
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――雨が、降っている。
これが夢だということは、すぐに分かった。
何故ならもう、幾度となく見続けた夢であったから。大雨に打たれながら、俺は一人の女の子を右腕一本で抱きしめていた。
泣きじゃくる彼女は、俺の胸に顔を埋めてこう言い続ける。
『ごめんなさい……!』――と。
俺はその子の頭を撫で、大丈夫だと語りかけた。
それでも、女の子は泣き止まず――。
『ごめんなさい、先生……!』
そうずっと、謝罪を続けるのだった……。
◆
――翌朝。
宿を出てターニャと合流し、俺はギルドへと向かった。
先日の一件で初めて知ったことだが、世界各地のギルドのルールは共通のものであるらしい。そして決闘についてはすべて、各地のギルド管轄で行われる。
シルディの場合は、ギルド内に造られた闘技場で。
なかなかに広い舞台にはすでに、多くの人だかりができていた。
「うぅ……!」
「どうした、ターニャ」
控室に到着し、時間まで剣の手入れをしていると。
弟子の少女が小さく唸りながら、唇を噛んで足を震わせていた。
「す、すみません。緊張しちゃって……」
こちらの問いかけに、ターニャは素直にそう答える。
少しだけ恥ずかしそうに頬を掻きながら、しかし苦笑いが貼り付いていた。そんな彼女に俺は、小さく笑いかける。
そして、しっかりと頷いてからこう伝えるのだ。
「大丈夫だ。緊張していると理解できるのは、立ち向かう意思がある、ということに他ならないからな」
「師匠……?」
俺は彼女に歩み寄り、頭にポンと手を乗せて。
「ターニャは、俺よりも才能に恵まれている。なにかに恐怖することは、決して悪いことではない。そして、乗り越えることで心は強くなるんだ」――と。
いつかの日を、思い出しながら。
俺がそう言うと少女は、瞬間だけ呆けてからにっこりと笑った。
「ありがとう、ございます……!」
どうやら、ある程度の緊張は解けたようだ。
そのことに安心して、俺はまた剣の手入れをするために――。
「あの、師匠! ……一つ、いいですか?」
「……ん? どうしたんだ」
少し離れた席に戻ろうとすると。
ターニャはどこか、意を決したようにそう言った。だが、
「あ、やっぱり……いいです!」
すぐに、そう言って誤魔化すように笑う。
俺は首を傾げてしまったが、ひとまず彼女がそれでいいと言うならいいのだろう。そう思って、剣を手に取った時だった。
「ダリスさん、ターニャさん。間もなく、入場です」
「あぁ、もうそんな時間なのか……」
ギルドの職員が、俺たちを呼びに現れる。
俺がターニャに目配せをすると、少女は迷うことなく頷いた。
「行きましょう、師匠!!」
そんな力強い弟子の言葉を聞いて。
俺は自然と笑みを浮かべながら、舞台へと向かうのだった。
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