1.少女の危機と、剣士の実力。
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ダンジョンを進むにつれて、魔素はさらに濃さを増していった。
それこそ、気を抜けば呼吸が乱れてしまうほどに。このような場所で魔物に倒されてしまえば、即刻あの世行きだろう。
自分の場合は地獄か天国か、そんなことを考えた。
しかし、そもそも生き残れば問題ないのだから、すぐに気持ちを切り替える。
「さて、手頃な魔物はいないのか……?」
俺は周囲に注意を払った。
すると、視線の先にちょうどいい奴が現れる。
「なるほど。キングデイモン、か」
奥から歩いてきたのは、大きな鉤爪をした悪魔だった。
王都の近くにいたデイモンとは比べ物にならない、発達した肉体。この魔物から放たれる魔力弾――通称【ショット】は、喰らえば簡単に骨をへし折れる。
俺は一つ呼吸を整えてから、キングデイモンの前に躍り出た。
「さぁ、一つ手合わせ願おうか!」
剣を引き抜いて。
真っすぐに、数倍はある悪魔を見上げた。
相手はこちらに気付くとすぐに、その丸太のような腕を振り下ろしてくる。横に飛んで回避すると、叩かれた地面が深く抉られた。
やはり、気を抜くことはできない相手だろう。
「次は、こっちの番だ!」
そして、そう言ってキングデイモンに向けて一気に距離を詰めた。
【ショット】を撃たせる暇すら与えない。
「はああああっ!!」
俺は、一息に剣を振り抜いた!
すると――。
ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?
そんな、断末魔の叫びが響き渡る。
胴を斬られた悪魔は、ゆっくりと魔素へと還っていった。魔素は輝く欠片として残り、人間にとって有用なものとなる。
ギルドでは、これを換金してもらえるらしい。
俺は魔素の欠片を拾い集め、ひとまず今日の食い扶持は稼げたと安堵した。
――その、瞬間だった。
「きゃあああああああああああああああああああああああ!?」
まだ幼い、少女の叫び声が響き渡ったのは。
「なんだ……!?」
俺はとっさに、その場から駆け出した。
女の子の声の聞こえた方へ。そして、たどり着いたそこには――。
「だ、誰か助けてください……!!」
一人の赤の髪をした少女が、十メイルはあるドラゴンに襲われる姿があった。彼女も必死に剣を振るうのだが、まるで牽制にもなっていない。
俺はそれを見て、考えるよりも先に走った。
「あ、貴方は!?」
「任せろ。この程度のドラゴンなら、たいしたことはない……!」
そして、剣を構えて意識を集中。
背後にいる少女を守るために、俺は――。
「悪いが、今度は手加減なしで行くぞ……!!」
そう叫び、ドラゴンへ向かって剣を振るった。すると、
「え……。う、そ……?」
少女の声が、背後から聞こえた。
次いでそれを掻き消す絶叫が木霊して、ドラゴンが息絶える。
「……大丈夫、だったか?」
呆然と尻餅をつき、俺を見上げる彼女に声をかける。
だがしばらく、少女の口から声が出ることはなかった……。