稽古2
レスター・シェン・ジュラスの稽古2日目
「よっしゃっ、鍛錬始めるぞ」
「はいっ、アルフリードさん」
訓練場にやってきたアルフリード達を待っていたレスターは嬉しそうにアルフリードに返事をした。訓練場の中央ではジュラス伯爵家の兵士達が訓練を行っている。チラチラと兵士達がアルフリード達の様子を伺っているが無視してアルフリードは声をあげた。
「まずは走り込みだ、戦場では体力のないやつから死ぬ、とにかく走れ」
「はいっ」
レスターとアルフリードは訓練場の外側を走り出す。
「ソラさんとサラさんは走らないんですか?」
「あいつらは強いからいいんだよ」
レスターの質問にアルフリードは答える。ソラとサラはアルフリードが認めるほど強い。それを理解したレスターは、叶うなら稽古依頼期間中に手合わせを願いたい、そう頭の片隅にメモをした。
「俺はもっとペースを上げる、お前は自分のペースで走れ」
そう言ったアルフリードはレスターを置き去りにして走っていく。レスターも負けじと走るが、差は縮まらない。むしろ差は開くばかりだ。気がつけば一周差をつけて追い抜かれる。走るだけでもこんなに差があるのかとレスターは自分のことが情けなってしまう。いや、まだ稽古は始まったばかりだ、ここから少しでも追いつける様になればいい。そう切り替えたレスターはひたすら走る。どれくらいの時間走っただろうか?
もう何周走ったのかも覚えていない。体のあちこちが悲鳴をあげ、もう止まれと警告を鳴らす。それでもレスターはガクガクと震える足を動かし続ける。チラリと目をやれば、アルフリードは息も切らさずレスターの全力疾走より速く走り続けていた。レスターのアルフリードに対する尊敬の念がさらに強まる。もう辞めたい、楽になりたい、そう言った邪念がレスターを支配していく。
(俺は根性のある男だ、アルフリードさんにそう言って貰えたんだ)
レスターはアルフリードに褒められた根性を精一杯振り絞り、ふらふらと歩くよりも遅くなってしまったスピードで走る。
(根性、根性、根性、根性、根性、根性、根性)
レスターは根性でがむしゃらに走っていく。
(根性、根性、根性、こんじょっ...)
ドサッ
限界を超え走り続けたレスターはついに倒れた。レスターが倒れたのを見たアルフリードは、訓練中の兵士達が駆け寄るよりも速くレスターの元に駆けつけた。
アルフリードはレスターを担ぐと、ソラとサラのいる木陰へと向かう。
「冷やしてやれ」
「「承知しました」」
アルフリードの指示にソラとサラは息のあった返事して、レスターの介抱をし始める。レスターを芝生の上に寝かせて魔術を発動させた。
〈冷却〉
サラの手のひらの先に魔法陣が浮かび、魔法陣から冷気が放出されレスターの体を冷やしていく。
「っす、すみません」
意識が戻ったレスターが謝罪を口にする。
「気にするな、休むのも鍛錬の内だ」
「はい」
レスターはアルフリードの言葉を素直に受け入れ体力の回復に専念した。
「こちらをどうぞ」
「あ、ありがとうございます」
ソラから水の入ったコップを照れながら受け取ったレスターはごくごくと水を飲み喉を潤す。
体力何回復するまで休憩し次の鍛錬に移る。
「次は素振りだ」
「はいっ」
アルフリードとレスター2人とも訓練用の武器では無く、普段から使用している武器を構え素振りを行う。
上段から剣を振り下ろし、お腹の正面でピタリと止める。アルフリードの素振りは、無駄な力みもブレも無く自然な動作でとても美しい。レスターはアルフリードを参考に素振りを行う。
「力みすぎだ、肩の力を抜け」
レスターの隣で素振りを行うアルフリードからの助言が飛ぶ。素振りをしながら時折アルフリードからの助言を受け修正していく。何度も、何度も素振りをし数えきれない回数をこなすと、徐々にレスターの腕が悲鳴をあげ始める。
「武器を手放すな、武器を落としたものから死ぬと思え」
「はいっ」
(根性、根性、根性、根性、根性、根性、根性...)
レスターは持ち前の根性で悲鳴をあげる体に鞭を打ち素振りを続けた。しかしすぐに限界が訪れた。レスターは地面についた剣を必死に持ち上げようとするが、体が言うことを聞かない。
「そこまで、休憩だ」
「はっ、はい」
レスターはもう一度休憩を挟み次の鍛錬へと備える。
「後は模擬戦をやって今日は終わりだ」
2人は訓練用の剣を持ち向かい合う。
「いつでもいいぞ」
アルフリードそう言い切るが速くレスターは抜剣し、アルフリードとの距離を詰める。横薙ぎを繰り出すが当然の様に躱される。すかさず突きを放つ。これも躱される。振り下ろし、袈裟斬り、逆袈裟、蹴り、あらゆる技を繰り出すもそのことごとくがアルフリードには通じない。それでもレスターは、挫けることなく愚直にアルフリードに挑み続ける。
「ここからは反撃する」
そこからは模擬戦というよりもアルフリードによる一方的な暴虐だった。レスターが何とか防御しようにも、防御の上から撃ち抜き、フェイントで翻弄し、隙があればすかさずそこを攻める。もちろん手加減は忘れていない。レスターが意識を失ったり、大怪我をしない様に加減し攻撃を繰り出す。
レスターは何度も倒れ、何度も起き上がり必死にアルフリードに喰らい付いた。強くなれると信じて。レスターが倒れ、起き上がれなくなり、鍛錬は終了した。




