恋華の第二イベント
ピピピピッカチッーー
芦原はとてつもなくスッキリとした朝を迎えた。普段ならアラームが数分鳴り響いているのだが今日はすぐにその音が消えた。
昨日は美少女で今日も美少女とのお出かけだからだ。
美少女と出かけられるだけでも奇跡なのにそれが二日連続となってはもう幸福以外の感情は芦原の心には存在しないのだ。
待ち合わせ時間が九時にもかかわらず集合場所ーーショッピングモールの近くの駅に一時間も早く着いてしまった。
「あ、ああああ君?もう着いてたの?待たせちゃったね」
芦原が恋華を待つために近くにあった椅子に腰をかけようとした瞬間に横から聞き慣れた美少女の声が聞こえて来た。
「いや、今来たところだから大丈夫だよ。待ち遠しくて一時間も早く来ちゃって」
「ああああ君もだったんだ。私も早く空いたくてすぐ家を出ちゃった」
「ははっ、似たもの同士だな」
「そ、そうだね……」
つい芦原が微笑んだのだがそれを見た恋華が頬を朱色に染めていた。
「ちなみになんだけど今日の服にあってる?」
「うん、すっごく可愛いよ」
「あ、ありがと……」
芦原が恋華を褒めると頬を朱色に染めていたが耳にまで広がってしまった。
「た、確か映画を観に行く予定だったよね?」
「そうだけど一時間も早く集まっちゃったし始まるまでどこか行こっか。東雲はどこか行きたい場所ある?」
「うん、ちょっと行ってみたかったアクセサリーショップがあったんだ!」
「そうなんだ、ならそこに行こうか」
「ありがとう!」
恋華の横を歩いていると昨日と同じ光景が芦原の眼前には広がっていた。
通りすがりの人々に睨まれながらも歩いていると恋華が言っていたアクセサリーショップが見えて来たのだがどうにも既視感があった。
そう、昨日愛生一緒に行ったアクセサリーショップだった。
「着いたよ!ここに来てみたかったんだ!」
「そ、そうなんだ」
「それでも二つのネックレスで悩んでるんだけどどーしても決められなくてああああ君に見てもらおうと思ってたんだ!」
「そ、そうか」
芦原がまさかな、と思ったのだがそのまさかであった。
恋華が持って来たものは二つとも昨日愛生が悩んでいたものだった。
「これとこれどっちが良いかな?」
ーーピコンーー
ーーーーーーーーー
1.ハート型のピンクゴールドのネックレス
2.星型のシルバーのネックレス
3.どっちも似合ってて選べない
4.スカートをめくる
ーーーーーーーーー
選択肢も昨日と全く一緒で驚いたが流石に愛生と一緒のネックレスは選べないなと思い芦原は2を選ぶ他ならなかった。
「そっちのネックレスだな」
芦原の返答も昨日と全く同じである。
「そっか!ならこのネックレスにするね!」
「あ、あぁ。とっても似合ってる」
「ありがとう。ん?何出してるの?」
恋華が芦原に向かって言ったのだが何のことだか芦原には分からなかった。
「何のことだ?」
「何って財布出してることだよ?」
「え?買うんじゃないのか?」
「買いますけど、流石に払ってもらうことは出来ません。選んでもらっただけで十分です!」
「そ、そうか?」
「そうです!」
芦原が出していた財布を恋華の圧倒する気迫にやられポケットの中にしまい直した。
「では、そろそろ良い時間なんで映画館に移動しましょうか」
「そうだな」
毎度ながら睨まれながらの移動となったが流石に慣れた芦原は気にすることをやめた。
「聞くの忘れてたが何の映画を見るんだ?」
「それは見てからのお楽しみです」
「そうか。なら楽しみにしておくよ」
「是非そうしてください」
映画館に着いた時にちょうど恋華が見たいと言っていた映画が上映されるようですぐにシアター内に入った。
内容はカップルで見るような甘々な恋愛ものだった。
「えっ、」
芦原が驚いたのは仕方がない。芦原が手を置いていた肘掛に恋華の手が置かれたからである。
それも所謂恋人つなぎに近い状態でだ。
「いきなりどうしたんだ?」
「えっと、その、手を繋ぎたくて……」
「な、なんで?」
「それは、、し、知りません!」
「そ、そうか?」
「そうです!」
察しが悪い芦原に対して恋華がプイッと頬を膨らまして視線を上映されている映画に移した。
芦原にも言い分があるのだが生まれてこの方モテたこと、まず女子と会話をすることが無かったため鈍感にもそこまでの奴はいないだろ!っと言いたくなるようなレベルで鈍いのだ。
まして、こんな美少女が好きになるわけがない。
出会って間もないのに恋に落ちるわけがない。と思っている芦原だから気付くことは皆無だろう。
「はぁ、面白かったな」
「そうですね」
「うん?どうしたんだ?」
「どうもしていません」
「そうか?」
「………………」
明らかに機嫌が悪くなっているのは分かるのだがそれ以外の事は何も分からないため芦原は言及をやめた。
ーーーー
「では、今日はこのぐらいでお開きにしましょうか」
「あぁ、分かった。じゃあな」
「はい、ありがとうございました。さようなら」
「あ、恋華。今日はほんとに楽しかったからまた誘ってくれよ」
「はい!分かりました!」
昼頃までは良い雰囲気であった筈が帰る頃には冷徹な空気が漂っていた。が、最後の芦原の一言によって恋華はパァッと言う効果音が出ていそうなように暗い表情が瞬時に明るくなりニッコリと笑っていた。
芦原の鈍さが腹立つ!
ギャルゲーなんだから恋華ルートを早くクリアしろよ!
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