魔族撲滅派少女〜最凶最悪の魔人との死闘〜
このお話は魔人視点で進みます。
「ごきげんよう。あなたに恨みはないけど闇属性は滅ぶべきだと思うの。死んで」
その娘に初めて会った時、開口一番にそう言われて戦闘になったのは、本当にいい思い出だと思う。その時は危険を感じて逃げて、でも追いつかれて...見逃されたんだよねぇ。『思っていたよりも脅威じゃなかった。悪いことしないなら殺しはしないから、死ぬまで何もしないで過ごしてちょうだい』とか言われてさ。
苦手にならないわけ...無いよねぇ...(笑)
でも、それからは色々な力に目覚めたおかげで出くわしても負けることはなかったけれど、出会う度に不意打ちされたり、『死ね』発言受けたり...もうあたしの心のライフは0よ!!
なぜいきなりこんな話を始めたかと言うと、現在進行形で襲われてるからです...
「あら、こんなところで奇遇ね。今日は良い日になると思ってたんだけど、あなたの命日として本当に良い日になりそうね。それじゃご機嫌よう」
とある廃墟でばったり出くわし、挨拶とともに攻撃を受けたので瞬間移動で逃げつつ建物の床下に。しかし察知されたのか上から槍で刺されそうになってぎょっとしてるところですねー。余裕そうに状況解説してるけど、全く余裕ないです...誰か助けてください...!
「...いつまで逃げ回るつもり?鬼ごっこもいい加減飽きてきたわ。戦う気が無いのなら私の槍に貫かれてくれる?」
「貫かれたら死んじゃうじゃないか!!」
「それでいいじゃない。最凶最悪の魔人がいなくなるだけで人間にとって大きな進歩、よ!」
「ヒイッ!あ、あたしに人権はないのか!」
「あるわけないじゃない。あなた魔人でしょ」
ぐぬぬ。相変わらずひどいこと言いたい放題言いやがってこの女は...だんだんムカついてきた!もう一度瞬間移動を試みる。行先は近くの広いところへ!
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コロネリア・レティクル。
あたしが知る限り、最強の冒険者。対魔族のエキスパート。白いハイネックのニットセーターに赤いロングスカート、腰まで伸びた長い髪を、赤いリボンでポニーテールにして結っている。一見お淑やかで大人しそうなお嬢様の出で立ちだけど、そこからは考えられない動きで敵を翻弄する戦い方をするのだった。
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しゅたっと着地に成功。服のホコリを払って彼女が現れるのを待つ。
「【ホーリーランス】!」
彼女の声とともに光を帯びた槍が回転しながら出現する。四方八方普通には避けられない数が。
「ちょっ!!?」
もう一度瞬間移動!直後に槍があたしのいたところに飛来し突き刺さる!
「【光龍】よ!」
「わわわぁっ!!?」
移動したところに光の龍(蛇?)が数匹飛んでくる!
寸でのところで回避、回避、回避ぃっ!
「避けきっーーヒイッ!?」
殺気を撒き散らし、槍を振りかぶりながら彼女が突進してくる。瞬時に鉄棒を取り出してなぎ払いの槍に当てる。体勢が悪かった。鉄棒は弾き飛ばされてしまう。手が痺れて一瞬動きを止めてしまった!
「【光弾】よ」
隙をついて彼女が光の弾丸を連射する!すぐ張った防御障壁で抵抗する!激しい弾の嵐で砂埃が舞う。
「【ホーリーランス】」
砂埃で見えない!襲いくるであろう光の槍を避けるべく瞬間移動!直後、光の槍と彼女がブーメランのように投げた槍がいたところに襲いかかる。彼女の後ろに移動し、荒れた息を整える。
「...手応え無し、か。よくもまぁ、ぴょんぴょん逃げ回るわね。まるで蛙みたい」
彼女が後ろを振り返る。つまり、あたしの方へと。後ろ手に投げて戻ってきた槍をキャッチする。器用なヤツめ。
「死ぬかと思ったよ...」
「殺すつもりでやってるんだもの。そうじゃなきゃ困るわ。そろそろ踏み潰させて頂戴」
彼女がパチンと指を鳴らす。すると周囲に光のドームが現れた。
「さっきからすっごい魔法使ってると思うのに、まだこんな魔法つかえるの?ホントすごい魔力量だよねー。キミ、ほんとーにニンゲン?」
「誰かさんのおかげで、何度も魔力切れ起こしてるもの。増えない道理はないわね。おかげで人間の限界を更新してしまって人外扱いよ。どうしてくれるの?」
魔力切れを起こすと魔力が増える。理屈としては、溜め込んだものを全部出し、新たに溜めると質の良いものが溜まる。または、上流から時間かけて流れた石は角が取れて滑らかになる。みたいな原理と同じらしい。
「くす、それはむしろありがたく思ってほしいね」
「は?無理。絶対思わない」
返答にイラッとする。この女は〜!
「そんなことより、このままならもう逃げ場はないわ。死にゆく覚悟は出来たかしら?」
「ふふん。それはこっちのセリフだよ!そろそろ本気で君を潰そうと思ってたんだ!」
あたしの言ったことに、コロネリアの表情がピクリと変化する。
「...あなた、今まで本気じゃなかったというの...?」
「ふふふ、驚いた?そう!まだ本気じゃなかったんだよ!」
「...どうにもハッタリのように聞こえるわ...でも、どうだったとしても、あなたをぶちのめせばいいだけの事」
「そうだね。君からすればそうだよね。でもあえて言わせてもらうよ。『できるもんならやってみな』」
直後に光龍がビュンビュン飛んでくる。さっきは始点が見えなかったから避けるの大変だったけど、今は彼女の位置もわかってる。直線的な攻撃なんて簡単に避けられる。
避けつつ大鎌を魔力で生成、彼女に近づき間合いに入ったら大鎌を振り下ろす!
「そんな単純な攻撃、防げないとでも思ってるの!?」
「もちろん、思ってないよ。これはただの小手調べさ!」
間合いを切り、一旦離れる。
「変身もしないみたいだし、まだ本気出してる感じではない...余裕そうね?」
「...ふふ」
「何がおかしいの?」
込み上げる笑いを抑えきれず出してしまう。変身してないから本気じゃない?彼女も間違ってるなー!
「みんなそう思うんだよ...『魔族や魔人が変身したら本気出した証』って。確かに魔族なんかは最終手段的に変身するもんね。でも、あたしは違うよ。変身するのは相手を下に見てる時。部分的な変化はあれど、この姿のまま戦うのがあたしの本気なのさ!そして、あたしの一番得意な武器はこれ!」
話しながら大鎌を消す。そして新たに手にするのは2本の剣。
「覚悟してね、コロネリア・レティクル!魔人フィーニャに双剣を抜かせたのは、あなたが初めてだよ!」
言い終わるなり一気に間合いを詰め、初撃を×印に交差させて切りつける!彼女は後ろに跳んで避けたが、すぐさま隙無く左右交互に剣を動かして切り続ける!
剣の舞を舞い踊るかのように、また相手の攻撃を避けつつも即座に反撃する戦い方が、あたしの双剣術だ。双剣だけじゃなく、瞬時に別の武器に持ち替えて攻撃を加えることもできる!相手が間合いを広げれば銃をぶっぱなすとか、間合いを縮めれば大斧を振り落とすとか。自慢じゃないけど大体の武器は扱えるんだよ!
ただ、彼女もやられっぱなしじゃない。所々で反撃を加えてあたしにダメージを与えてくる。一瞬の隙を狙って強めの攻撃を当ててくることも!
「あははははは!すごいすごい!!あははははは!」
「くっ!これが魔人フィーニャの本気...!強い...!でも、私だって負けない!!」
コロネリアが決意の籠った瞳で睨む。槍を握り直して、一瞬で間合いを詰めてくる。
「受けてみなさい!光速の突撃を!!【無明百裂槍】!!」
目に見えない程の速さで連撃を繰り出してくる。あまりの勢いに体勢が少し崩れてしまう!
「まだまだぁっ!!【光龍】よ!!」
「くううぅぅっ!!」
崩れたところに光龍が襲いかかる。彼女の攻撃は止まらない。
「【炎獄陣・爆】!!」
槍が描いた円の中で爆発が起きてあたしを吹き飛ばす。そして!
「これで終わり、滅びよ!!【ジャッジメント・ランス】!!!」
彼女の持つ槍が光輝く巨大な槍に変化し、あたしを貫く!!轟音とともに、光のドームがひび割れて砕けた。
「手応えあり...!はぁっ...はぁっ...どうかな...?」
コロネリアがつぶやく。残念だけど、ギリギリあたしも生きてる。立ち上がって彼女の前に姿を見せる。
「...っ...化け、もの...っく、もう、魔力が...」
「魔人よりも、化け物な、あなたに言われたく、ないよ...」
ただ、これで勝負はあったみたい。コロネリアが目を閉じて倒れ込む。
「あたしの勝ち、だね」
「...殺しなさいよ...情けなんて受けない...!」
「やだね」
「っ!?」
驚いた目であたしを睨むコロネリア。
「なんで...!?」
「あたしの旅は、それが目的じゃないんだもん」
倒れたまま動けない彼女に背を向けて立ち去る。
「楽しかったよ、コロネリア」
「私を殺さなかったこと...いつか絶対後悔させてやるんだから...っ!!」
「うん、楽しみにしてるね♪」
そうして、コロネリア・レティクルとの死闘は決着した。彼女、すっごく強いから、あたしももっともっと頑張らないとね!
その後も、何度か戦うことになるのだけど、それはまた別のお話。
つづく
オリキャラ妄想シリーズ第3弾です。
Twitterでツッコミ役してるコロナことコロネリア・レティクルを出すことが出来ました。
言葉遣いが悪すぎますねwww
『死ね』とか『殺す』とか...非常に教育に悪いですこの子。良い子のみんなは真似しちゃ駄目ですよ!
ネタバレすると、この娘、フィアラ(魔人フィーニャ)の大親友になります。Twitterの彼女たちは友としての繋がりができた後という設定になりますね。その辺のお話も近いうちに書けたらと思います。
余談ですが、このお話を考えながらお仕事すると、不思議と言葉遣いが悪くなりました。自作に影響されるってどういうことなんでしょうかw
では今回はこの辺で。