作業室、絶叫が響く
流されてきた石が頭部に当たるというトラブルはあったものの、魔鱗2341-DSE(実験機)はそれに怯むことなく進んだ。
アリシアの報告どおり、頭部には小さな凹みができたが、内部の構造に損傷はなく、耐水皮膜にも敗れはなかった。
作業の邪魔にならないようにとウィッグをがっちりとまとめていたことが功を奏したのかもしれない。それがダメージを緩和してくれた可能性がある。
そういう幸運にも助けられつつ、魔鱗2341-DSEは(実験機)は先を急いだ。
しかし今度は、
「NOOOOOOO!!」
<作業室>内に絶叫が響く。
「!?」
千堂が思わず身構える。
だが、その理由はすぐに分かった。
バックアップとして現場に向かっていた二チームのうちの一つのロボットが、流されたのだ。
どうやら、魔鱗2341-DSE(実験機)と同じように流されてきた石が当ったらしい。それにより漁礁に掴まって機体を支えていたマニピュレータの一本が折れ、バランスを崩し、海流の流れをもろに受けて保持しきれなくなり、流されてしまったようだ。
その瞬間を目撃してしまった魔鱗2341-DSE(実験機)だったが、救いの手を差し伸べることすらできなかった。迂闊に動けば今度は自分が流されるのが分かってしまっていたからだ。
流されたロボットは、自力での脱出を試みるものの、三機を連結させていることが逆に仇となり、推力に比べ体積が大きくなってしまっていて、ただ激流に翻弄されるだけだった。
せめて推力の向きを揃えていられればまだ僅かにでも激流からの脱出の可能性もあったかもしれないがそれさえ叶わずコントロールを失い、何度も漁礁に叩きつけられてマニピュレータが次々と折れ、本体もカバーが割れ、破片や部品を撒き散らしつつ、やがて信号も途絶えて<LOST>の表示がモニターにされ、機能を全喪失したことが告げられた。
そのロボットを運用していたチームの者達は、ある者はうなだれ、ある者は天を仰ぎ、またある者は両手で顔を覆ってその場に跪いた。
たかがロボットとはいえ、やはり彼らにとってはかけがえのない<仲間>だったことがその様子からも分かる。
「……」
千堂もディミトリスも、掛ける言葉がなかった。
自分達も決して他人事ではないし、何より今は仕事中だ。感傷に浸っている場合じゃない。
「……」
アリシアも当然、それは分かっている。
だから今は自分のことに集中する。
なお、流されたロボットの方は、連結していたハーネスさえちぎれてなす術なくばらばらに流され、そして潮力発電所のタービンに巻き込まれて消えたのであった。




