表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/96

千堂アリシア、姿勢を正す

いよいよ魔鱗(マリン)2341-DSE(実験機)自身のカメラでも現場が捉えられる位置まで来て、アリシアは身構えた。


千堂アリシアとしての体の方も、椅子に座ったまま姿勢を正す。


と言っても、やはり肉体を持つ人間と違って、体はロボットである彼女はずっと同じ姿勢を続けていても疲れないのでほとんど崩れていなかったが。


まあ、


『人間ならばそうする』


というのをつい再現してしまっただけだろう。


そんな彼女がコントロールしている魔鱗(マリン)2341-DSE(実験機)が取りついたロボット潜水艇は、ジェット水流を逆噴射させて船体を保持した。


これ以上近付くとそれができなくなるというギリギリの位置である。


ロボット潜水艇の船体に掴まっている魔鱗(マリン)2341-DSE(実験機)や、他のチームの探査ロボット達もうっかりすれば流されてしまいそうだ。


<水流>と言うよりは、もはや水が機体表面をゴリゴリと削ろうとでもしているかのような流れを感じ、アリシアは、


『まさかこれほどとは……』


と思った。


しかし、ここはまだロボット潜水艇で近付ける位置。本来は漁礁として設置されたらしい構造物によってさらに狭められた<水路>の流れはこれをはるかに上回る。


はっきり言って魔鱗(マリン)2341-DSE(実験機)単体でもこれに逆らって泳ぐことは不可能だと分かる。


だから、ロボット潜水艇から伸ばされたワイヤーで接近。構造物に掴まることができれば後は魔鱗(マリン)2341-DSE(実験機)のパワーと四肢の強靭さであれば自力で機体を保持しつつ接近が可能な筈だった。


他の二チームについては、カルキノス02と同様のコンセプトで作られた六肢の探査ロボット三機を連結させて、計十八肢でもって一つのマニピュレータにかかる負担を減らしつつ、魔鱗(マリン)2341-DSE(実験機)と同様の方法で現場へと近付くことになった。


ただし、万が一流されて他のチームを巻き込まないように、それぞれ別のルートを辿って接近する。


魔鱗(マリン)2341-DSE(実験機)はパワーと強靭さを活かして最短距離を。


他の二チームは、流れの影響が比較的少ないものの距離があるルートを辿って。


さすがにプロだけあって、慎重かつ確実に近付いていく。


一方、魔鱗(マリン)2341-DSE(実験機)の方も、本来はこのような作業を想定されていないことで必ずしも効率的ではないものの、その辺りは、大変な困難を乗り越えてきた経験を持つアリシアが、一瞬一瞬毎に、力の入れ方、力を込める方向、水の流れを受け流す体の向き等、総合的な判断を下し、その時点での最適解を導き出し、遅れないように進んだのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ