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千堂とアリシア、空母に到着する

「現場を捉えることができました。ミッションを開始します」


実にまた三機のプローブを失いながらも、軍はどうにか現場を確認した。やはりさらに遺体の位置は二メートルほどずれていたものの映像でも捉えることができる。


もっともこれすら、半ば<まぐれ>の要素が多かっただろう。何しろ、ワイヤーが漁礁に絡まり、それが逆に機体を絶好の位置に固定する形になって、合わせて機体そのもののマニピュレータで何とか漁礁にしがみついている状態だった。それがいつまで保持できるかはまったく分からないにせよ、五分や十分で流されることはないと見られている。


千堂達はわずか二分で二機の大型高速飛行艇に分乗し、現場へと向かった。


いつでも出られるように準備万端の状態で待機していたのだ。


飛行艇によく見られるプロペラではなくジェット推進を採用した高速飛行艇は時速八百キロを超える速度で飛行。三十分で千堂達を現場まで送り届けた。


現場海域では排水量一万四千トンクラスの小型空母が待機しており、これが実質的な<基地>となる。


本当ならまずここに千堂達を集めてブリーフィング等を行うべきだったのでは?と思うだろうが、その辺りはやはり

<軍>という組織の性格上、軍事機密の塊である空母にあまり民間人を滞在させたくなかったという事情があったようだ。


事実、空母滞在中は指定された区域以外には立ち入らないこと。映像や音声を記録するのは禁止。滞在時間は五時間を厳守という事項について、飛行艇の中で誓約書まで書かされた。


加えて、見たまま聞いたままを記録できるメイトギアには専用のゴーグルの装着が義務付けられ、千堂アリシアも、当然、それに従う。


そのゴーグルは、軍事上、差し障りのない部分をデータ的に再現した映像と音声を映し出すもので、これを装着させることで記録させないというわけだ。


この辺りは千堂も慣れたものなので、これといって不満を抱くこともない。ましてやメイトギアであるアリシアは逆らったりはしない。


見た目には少々異様になるものの、他の業者達もわきまえていて、それを笑ったりもしなかった。


自分達はプロとしてここに来ている。そしてすでに<仕事>は始まっているのだ。


ならば、迅速に確実にそれを終わらせるだけだ。支払われる代金はもう決まっていて、いくら時間をかけても残業代は出ない。


ならば手早く終わらせた方が得だというものだ。


それぞれのチームはすぐさま準備を済ませ、早いところは一分で作業を開始した。


正直、この種の仕事には慣れていない千堂達が最も時間が掛かってしまっていただろう。



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