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ディミトリス・メルクーリ、感心する

取り敢えず、自分達でできる準備については済ませた頃、


「そろそろブリーフィングを再開したいと思います。皆様よろしいでしょうか?」


控え室内のスピーカーから一斉放送で告げられた。


「よし、行くか」


「はい」


千堂とアリシアもそう言って立ち上がり、魔鱗(マリン)2341-DSE(実験機)はローブを羽織って二人の後に続いて控え室を出た。


そしてブリーフィングが再開される。


「これがマリンか」


「映像で見るよりは普通だな」


「まあそりゃそうだろ。演技した時に一番映えるように作られてるんだろうし」


などと、千堂とアリシアと共にモニターの脇に立った魔鱗(マリン)2341-DSE(実験機)に対して遠慮のない<感想>が述べられる。


確かに、演技の際に相応のメイクを施すことを前提にデザインされているので、素の状態ではむしろ地味な印象さえあるだろう。


いや、素の状態でも十分に<美人>ではあるものの、華やかな顔立ちを好む人間からすれば地味にも見えると言うべきか。


しかしそれは余談なので今回のミッションには何の関係もない。


彼らももちろんそれは分かっている。ただの雑談だ。


コンクィジータ社のディミトリスも当然それは承知しており、ミッションのすり合わせについては真剣そのものだった。


ただ、


「俺はもっとこう、バインバインなグラマーの方が好みだけどな!」


などと、少々、ラテンのノリと言うか、いささか品のないジョークに走る傾向は見られるようだが。


とは言え、そういうジョークに執着するわけでもないので、話の腰を折ったりもしない。


他の専門家らの意見も仰ぎながら、魔鱗(マリン)2341-DSE(実験機)とカルキノス02の連携について協議を重ねる。


実際に、魔鱗(マリン)2341-DSE(実験機)とハーネスによって連結し、その状態で作業するためのデータ更新を行う。


さらには、軍が現在の現場の状況を確認している間に、ブリーフィングルームを出、訓練用のプールを使い、水中での作業のための詰めの調整に入る。


「いい動きだ。惚れるぜ」


なるべく現場の条件に近付けようと訓練用のプールで出せる最大の流れの中で、魔鱗(マリン)2341-DSE(実験機)が四肢を踏ん張って機体を固定し、カルキノス02が遺体に見立てた工具類を回収するという形でシミュレーションを行うと、ディミトリが感心したようにそう呟いた。


正直、訓練用のプールでは水流は現場の半分の勢いにも満たなかったが、さすがに訓練ではそこまでできないという事情もあり、その辺りは止むを得ない面もある。


しかし、シミュレーションの結果自体は上々だ。そして同時に、魔鱗(マリン)2341-DSE(実験機)とカルキノス02が失敗した場合の<保険>として、カルキノス02と同系統の水中作業ロボットを複数連結させることで対応できるようにと考えられた<チーム>がさらに二組作られたのだった。



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