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千堂京一、最終確認をする

現場の二キロ先には、潮力発電所があり、その激しい潮の流れを利用して発電用のタービンが回されるのだが、それをタービンへと導く水路へとプローブは吸い込まれ、遂にはタービンのブレードによって細切れに粉砕されてしまった。


もちろん。水路の入り口には異物を巻き込まないようにするための柵が設けられてはいるものの、それは結局、船などの大きなものが巻き込まれてタービンが破壊されることを防ごうというものでしかなく、今回のプローブ程度の大きさのものまでは防げなかった。


柵の目をあまり細かくしてしまうとせっかくの潮流が弱まってしまい、発電効率が下がるからだ。しかも発電用タービンのブレードは非常に強靭で、流木程度ならば容易く切り刻んでしまうようにも元々設計されている。


正直、今回のプローブ程度であれば何の問題もなかった。


それは、魔鱗(マリン)2341-DSE(実験機)でも同じということだ。


非常に堅牢な構造を持つ要人警護仕様のメイトギアでさえ巻き込まれれば無事では済まないだろう。


ましてや、基本のコンポーネントは一般仕様のメイトギアからの流用である魔鱗(マリン)2341-DSE(実験機)など、タービンブレードの前では生身の人間と大差ない。


ミンチ同然に切り刻まれると思われる。


今回、千堂アリシアはリンクによって魔鱗(マリン)2341-DSE(実験機)を運用することになるので、たとえ破壊されてもアリシア自身には物理的なダメージは一切ないものの、<のようなもの>を持つ彼女にとってそれによる<心理的負担>はおそらく無視できるようなものではなく、人間であればPTSDの発症さえ懸念されるほどのものと予測されていた。


だから、万が一にもそのようなことがあってはいけない。ゆえに慎重の上にも慎重を期して行われなければいけないだろう。


「アリシア。正直言って決して楽観できるような簡単なミッションでないことは事実だろう。君への負担も大きくなると思う。


君も承知している通り、現在はまだミッションが実現可能であるかどうかを検討している段階なので、今ならば断ることもできるが、どうする? 君が拒むなら私は強制はしない。


これは決して、体裁を取り繕うために訊いているわけではない。責任ある立場の者としてその責任を負った上で最終確認を取っている」


一旦、休憩を取ることになり、各人に充てられた控え室で二人きりになったアリシアに、千堂京一(せんどうけいいち)は改めて問い掛けた。


そんな彼に、アリシアは真っ直ぐに見詰め返して応える。


「千堂様。私自身、仮にもJAPAN-2(ジャパンセカンド)の一員である以上、その職責を果たすべくこの現場に臨んでいます。その覚悟に揺らぎはありません」



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