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魔鱗2341-DSE(実験機)、パフォーマンスを見せ付ける

「では、御社のプランをお聞かせ願えますか?」


千堂京一(せんどうけいいち)の発言を受けて、ネルディが問い掛ける。


すると千堂は躊躇うことなくモニターの脇に立ち、ネルディの許可をもらって自身が手にした端末をリンクさせた。


同時に、大型モニターに魔鱗(マリン)2341-DSE(実験機)の画像が映し出される。


「これが、先般、我が社が開発した<ダンススイミング用メイトギア>魔鱗(マリン)2341-DSEの実験機(プロトタイプ)です。プロトタイプと言っても、製品版とほぼ同等の性能を有し、機能上は同じものです」


千堂の説明に合わせ画像が次々と切り替わり、魔鱗(マリン)2341-DSE(実験機)の詳細が映し出される。


「<ダンススイミング用メイトギア>として開発されたものですので、厳密には<水中作業用>とは異なるものですが、先ほどからの説明と考え合わせる限り、今回のオペレーションには最適な機能を有していると改めて判断します」


すると今度は、大水槽で、水中ダンスショー<ポセイドン>の一シーンを再現する魔鱗(マリン)2341-DSEの動画が再生された。それは、過去に上演されたものの中で最も<過酷>と称された、息継ぎなしで三分三十秒もの間、情熱的な愛のダンスを披露するというものだった。


<設定>としては、


『ポセイドンからの熱心な求愛にほだされたメデューサが、彼への返礼として自らの気持ちをダンスにして表した』


という形なのだが、稽古中に担当のダンサーが何度も失神、安全上の観点から実現が危ぶまれたものだという。メイトギア課に魔鱗(マリン)2341-DSEの開発が持ちかけられるきっかけともなったシーンでもある。


手足の指の一本一本にまで神経の行き届いた、水中でのウイッグの動きすら計算に入れた、息をも吐かせぬその<演技>に、ブリーフィングルームにいた全員の目が釘付けになる。


軍人であるネルディさえ心奪われていたようだ。


魔鱗(マリン)2341-DSE(実験機)はロボットなので息継ぎはそもそも必要ないものの、それでも、本来ならばメイトギアが最も苦手としている、と言うかそもそも運用が想定されていない水中でのそれは、水中でのパフォーマンスがどれほど大変なものであるか、専門家だからこそ分かる参加者達を唸らせた。


人間の成人女性とほぼ同じプロポーション。かつ、水圧や水の抵抗をものともせず激しいダンスを実現する強靭な四肢。


『なるほどこれは、今回のミッションに最適だな』


それがその場にいた全員の印象だっただろう。


こうして魔鱗(マリン)2341-DSE(実験機)を柱としたミッションが動き出すことになったのだった。



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