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千堂アリシア、千堂京一に問い掛ける

この時のエリナ・バーンズの行いは、ロボットの違法改造であり<テロ準備罪>に当たる可能性すらあるものだったが、


『先般の事件に巻き込まれたことによって発症したPTSDに起因するもの』


として、<千堂アリシアの所有者>である千堂京一(せんどうけいいち)が被害届を出さなかったこともあり、不起訴処分となった。


ただし、JAPAN-2(ジャパンセカンド)社からは、


『丁寧な経過観察が必要』


として、無期限の療養が言い渡されたが。


無論、敢えて期限を切っていないだけなので、経過が良好と見做されれば早々に復帰も有り得る。


が、さすがに常識的に考えれば復帰までには数ヶ月は要する事例だっただろう。


なお、復讐屋らの凶行が原因であることははっきりしているので、休業中の補償についてはそちらからのものが充てられることになるそうだ。


なので、生活が困窮することはないと思われる。


後は、いつ、復職できるかが問題になるのだろう。


「我が社としても優秀なスタッフの休職は大変な損失だ……」


今回のエリナ・バーンズの<処分>について一番の決定権を持つこととなった千堂京一も苦々しくそう言った。


なお、エリナの本当の狙いは、もちろん、アリシアを破壊することじゃない。生き延びた復讐屋に対してもそうだが、何より、宗近(むねちか)2122-HHSを破壊した方の復讐屋に対する報復が目的だったようだ。


ただ、千堂京一への恋慕に起因する千堂アリシアへの嫉妬がまったく影響していなかったかと言えば、そうではないかもしれない。


とは言え、復讐屋による事件がなければエリナは決してこんなことはしなかっただろう。


ジョン・牧紫栗(まきしぐり)の理不尽な逆恨みに端を発した今回の事件は、非常に後味の悪いものとなった。そして、事件が次の事件を呼ぶという何よりの実例ともなったのかもしれない。


「エリナさん……」


事件の経緯を鑑み、当面の間は顔を合わせない方がいいだろうという周囲の判断により面会を自重したアリシアは、彼女が入院する病院を離れたところから見詰め、回復を祈るしかできなかった。


ロボットであるアリシアは、事情聴取代わりのデータ提出と、破壊された右腕を証拠物件として警察に提出した後はすぐさま修理されて、翌日には新品同然になっていた。この点はロボットであることの強みだと言える。


「誰も幸せになれないのに、人間はどうして他人を恨んだりするのでしょう……?」


迎えに来た千堂に、アリシアは悲しげに問い掛けた。エリナのこともそうだが、一番には牧紫栗のことを言っているのは千堂にも分かった。そして、さらには、<クイーン・オブ・マーズ号事件>に関わったテロリスト、


<タラントゥリバヤ・マナロフ>


のことも……


「そうだな……」


アリシアの気持ちを想うと、千堂でさえ、ただ一言返すことしかできなかったのだった。



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