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千堂アリシア、楓舞1141-MPSと決着をつける

「今日が最後のテストですね。楽しかったです。今日も無事に終えられるようにお互い努力しましょう」


最終日、千堂アリシアは笑顔で楓舞(フーマ)1141-MPSに語りかけていた。一度とは言え、人間はそれを<まぐれ>だとして評価しないとは言え、確かに彼に勝ってみせたことでアリシアは満足していたのだ。


彼が自分よりも優秀であることはむしろ人間にとっては好ましい事実だ。これによってテロの被害も経るかもしれない。アリシアにとってはそちらの方が重要だった。


清清しく微笑む彼女に対し、しかしこの時の楓舞(フーマ)1141-MPSはいつもは返すはずの<返事>をしなかった。


「…?」


アリシアはそれについて『あれ?』と違和感を覚えたものの、別に返事をする必要はこれまでもなかったのだからそういうものだとしてすぐに気持ちを切り替える。


そんな中、最後のテストは始まった。これが終われば楓舞(フーマ)1141-MPSは正式に次のコンペティションで発表されることになるはずだった。なので今日はお互いに<怪我>がないように終わることが望まれていた。データそのものはここまでで十分に蓄積されている。


なにも無理をする必要はなかったのだ。


なのに……


「始め……」


そう合図を口にしたエリナ・バーンズにも、アリシアは違和感を覚えた。


『何か……おかしい……』


などという思考が彼女のメインフレームをよぎる。


いや、今、合図を口にしたのは、病室のベッドの上で横になっているエリナが操っているだけのメイトギアのボディなのだから、エリナと違っている方が当然なのだ。事実、その場にいた他の職員達は誰も気にしていなかった。ただ一人、アリシアだけが特に根拠もなく違和感を覚えているだけにすぎない。


が、その<違和感>は、具体的な現実としてそこに形を成してしまった。


「!?」


ガキャッという嫌な音と共に、アリシアの右腕がちぎれ、床に転がる。


それまでは勝負が決まった時点で動きを止めていたはずの楓舞(フーマ)1141-MPSがそのままアリシアの右腕に牙を立て、食いちぎったのである。


「な……!?」


その場にいた者達は皆、困惑の表情を向けた。アリシア当人さえも。


しかし、ただ一人、エリナ・バーンズが操るメイトギアのボディだけがまったくの無表情で佇んでいた。


「……」


瞬間、アリシアの全身から力が抜けた。とどめを刺そうとするかのように楓舞(フーマ)1141-MPSが動くのに合わせゆるりと空気が流れるようにアリシアの体もゆるりと流れる。


すると、それを見ていた人間達は、一瞬、アリシアの姿を見失った。いや、正確には、


『見えているはずなのに認識できなくなった』


と言うべきか。


直後、彼女の揃えられた左手の指先が、空手で言う<四本貫手>が、楓舞(フーマ)1141-MPSの装甲の隙間から突き入れられ、彼のメインフレームを貫いていたのだった。



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