表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/96

エリナ・バーンズ、油断する

『二人の間に割り込むのは、たぶん難しいな』


エリナ・バーンズがそう考えるのは、決して物分かりがいいからじゃない。綺麗事を優先してるからじゃない。もっと合理的な論理的な、いや、即物的な現実を見ているからだ。


『自分の感情ばかりを優先するような人間を千堂京一(せんどうけいいち)は評価しない』


それを知っているからである。


世の中には、『自分の気持ちに素直になる』ことを美徳とする、素晴らしいこととする考え方がある。


そしてそれを真に受けた人間が起こす様々なトラブルがある。


ストーカーやレイプ犯などはまさに、


『自分の気持ちに素直になった』


人間が起こした事件ではないか。


痴情のもつれの果ての刃傷沙汰もそうだ。


加えて、ジョン・牧紫栗(まきしぐり)も復讐代行サイトの運営者達も自分の気持ちに素直になればこそあのようなことをしているはずである。


『自分の気持ちに素直になる』


確かに甘美な響きの言葉だろう。しかしそれは同時に、破滅に誘う<罠>ともなりえるものであることを忘れてはいけない。


エリナ・バーンズはそれを知っているだけにすぎない。自衛のために誘惑に乗らないことを自らに言い聞かせているだけなのだ。


これが、ジョン・牧紫栗との決定的な違いだった。牧紫栗も彼女と同じことができていたら主任程度にはなれていたかもしれないものを、『自分の気持ちに素直になった』ばかりに棒に振ったのだ。


<分別>とは、このようなことを言うのかもしれない。


ゆえに、ジョン・牧紫栗は決して<社会の被害者>などではない。親が分別の手本を示してくれなかったことは不幸だったとしても、何十年もの人生の間にそれを学ぶ機会は何度もあったはずである。十代の子供や二十代の未熟な若者ではないのだから。にも拘らず牧紫栗はその機会を自らフイにしてきた。


しかも、自分が勝手に不幸になるだけならまだしも、他人まで巻き込もうとしている。


まさに<負の連鎖>。


「あ、しまった。メモリーカード買い忘れた…!」


私用の端末に使うつもりのメモリーカードを仕事帰りに買うはずだったのをうっかり失念していて、エリナは慌てた。


「私が買ってきましょうか?」


宗近(むねちか)2122-HHSが声を掛けるも、


「あ、いい。自分で買ってくる。ついでに他にも買いたいものあるし、コンビニで買えるし」


そう言ってエリナはそのまま部屋を出て、コンビニへと向かう。


宗近が部屋にいることで鍵を掛けずに。


それも、復讐代行サイトの人間に見られていた。こんなチャンスを見逃すはずもない。


こうして、ロボットをターゲットとした実行犯が、何食わぬ顔でエリナの部屋のドアを開けたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ