宗近2122-HHS、エリナ・バーンズを迎える
エリナ・バーンズのマンションを監視しているのは、ターゲットを女性に絞って復讐を請け負っているサイトの人間だった。<復讐代行>を謳っているものの、その対象を女性に絞っているということはつまりそういうことだ。復讐代行にかこつけて自身の欲求を満たしているだけの卑怯者でしかない。
それと同時に、ロボットをターゲットにしている復讐代行サイトの人間も、同じように彼女のマンションを窺っていた。<エリナ・バーンズを守ったメイトギア>ということで、彼女が所有するメイトギアに狙いを付けているわけだ。
が、それは完全に思い違いである。あの時に彼女を庇ったのは、千堂アリシア。しかしエリナ・バーンズが所有しているのは男性型のメイトギア<宗近2122-HHS>という、受注生産のみのカスタムメイトギアだった。
「おかえりなさいませ」
「ただいま」
一人暮らしのエリナは、家事の一切を宗近2122-HHSに任せていた。この暮らしもすでに二十年になる。メイトギアは二代目になるけれど。
正直、宗近2122-HHSがいれば別に結婚しなくてもなにも問題なかった。家のこともそうだし、彼女の帰りをいつも待ってくれていて、自分の能力に限界を感じて落ち込んだ時にも何時間でも愚痴を聞いてくれた。しまいには愚痴を言うのにも疲れてしまってそれで開き直れて頑張れた。
今の自分がいるのは宗近のおかげだ。
それでいいと思っていた。けれど千堂京一の存在を知ってしまったことでその考えを変えられてしまった。
彼の人間性を知るほどに惹かれていった。
なぜなら宗近は、どこまでいってもロボット。彼女を求めてはくれない。彼女を必要とはしていない。彼女でなくてもかまわない。誰にでもまったく同じ笑顔で話しかけて、何時間でも愚痴を聞いてくれる。
そういう風に作られたロボットなのだから。
だけど、千堂京一は違う。彼は誰にでもいい顔をするわけじゃない。時には厳しいことも言う。その一方で、甘い愛の言葉も囁いてくれるだろう。
それが人間だ。彼に認めてもらえて、そして甘い愛の言葉を囁いてもらえたら、どんなに幸せだろうかと考えると体の芯が熱くなる。これは、宗近には感じなかったものだった。
けれど、その彼のそばには宗近2122-HHSの流れを汲むメイトギア、アリシア2234-LMN、いや、彼の姓を貰った<千堂アリシア>がいた。
正直、嫉妬を覚えないでもない。でも、だからといって嫉妬に狂い自らの役目も忘れるような者を彼は認めてくれないのも分かる。
『アリシアはいい娘だよね……千堂さんは彼女を女性として愛してるわけじゃないかもしれないけど、でも、彼女を<家族>として愛してる。その二人の間に割り込むのは、たぶん難しいな……』




