表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/96

闇サイトの住人

『ぐぬぬ…次こそは~!』


今日も楓舞(フーマ)1141-MPSに敗れ、千堂アリシアは悔しげに地団駄(じだんだ)を踏んだ。


と言っても、仮想空間の中ではあるが。


そんなアリシアに、戦闘モードを解除した楓舞(フーマ)1141-MPSが擦り寄ってくる。


彼女を気遣っているのだ。


戦闘を離れればすぐさま確実にそれが切り替えられることの確認を行うこともシミュレーションの目的の一つなので、その意味でも良好な結果である。


「ありがとう。優しいですね、あなたは」


勝てないことは悔しくても、アリシアの方もそれとこれとは別だという切り替えはしっかりとできている。それを見ることも、千堂京一(せんどうけいいち)から申し送られた事項だった。


<心のようなもの>を持っていても彼女はメイトギア。ロボットである事実は変わらない。となれば、そこを疎かにすることはできない。


『心のようなものを持っているからといって彼女をただ人間と同じに扱う』


というのも違うのだろう。


千堂はその辺りを混同しないようには心掛けている。


そして、アリシア自身、ただ人間扱いしてもらうことを望んでいるわけでもない。千堂がいつも彼女を彼女のままで受け止めてくれているので、ないものをねだる必要がなかった。


この辺りも、ジョン・牧紫栗(まきしぐり)と違うところかもしれない。彼は結局、自分の存在を親に認めてもらえていなかった。


<呼んでもいないのに勝手に来た邪魔者>


それが、彼に対する両親の認識である。このことが彼の承認欲求を拗れさせている一番の原因なのだろうと推測される。


だからといって他人を貶めていいわけじゃない。そうすることで相対的に自分の価値が上がったような気がするのかもしれないが、それは違う。それはどこまでいってもただの錯覚でしかない。


自分の価値は自ら作り出すものなのだ。


ロボットであるアリシアですら分かっていることを彼は理解できていなかった。そこが一番の不幸なのかもしれない。


そんな不幸が、さらなる不幸を生み出そうと闇に蠢く。


ジョン・牧紫栗からの復讐依頼を受けた闇サイトの住人が、エリナ・バーンズの住むマンションを監視していた。


都市としてのJAPAN-2(ジャパンセカンド)に住む者のほとんどはJAPAN-2(ジャパンセカンド)社の社員であるものの、それ以外の人間がまったく住んでいないというわけではない。住人の一割ほどは他の都市からの移住者である。


それらも他の企業の職員であり、<出張>や<出向>という形でJAPAN-2(ジャパンセカンド)社の関係者なのだが、ごく稀に不埒な輩も紛れ込むことがある。闇サイトを運営している者の多くはそういう者であるが、中には牧紫栗と同じくJAPAN-2(ジャパンセカンド)社の職員でありながら他人を貶めることを生き甲斐としている者がいるのも残念ながら事実だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ