ロボットへのハッキングについて
人間が端末を使ってネットに接続し、それが原因で端末がウイルスに感染したりハッキングされたとしても、人間そのものは汚染されることはない。それと同じ形で、ロボットの多くはネットワークを利用することができる。
加えて、万が一、何らかの形でハッキングされたとしても、それが検出された瞬間に自動的にシャットダウンが行われるようになっている。それによって被害が拡大することを防ぐのだ。
だからハッキングされたロボットは基本的にその時点で機能を停止、もしくは大きく制限されることになる。
テロリストなどが使う<ハッキングツール>は、主にそういう形でロボットを停止させることを目的に使う。そしてそのようにして停止させられたロボットは、完全に初期化され、物理的にウイルスを完全に除去するために部品を交換されたりもすることになる。つまり、原則としてメーカー修理に出さなければ復帰できなくなるのだ。
これはつまり、初期化されてしまっては事実上の<死>となる千堂アリシアにとっては、まさに命に関わることでもあった。
そうとも知らず、エリナ・バーンズも千堂アリシアも、共に家に帰って寛いでいた。
まあさすがに、<復讐サイト>も依頼を受けてその日のうちに実行とはいかないので、この日は問題なかったのだが……
翌日以降も、アリシアは楓舞1141-MPSのテストに協力していた。
さまざまなシチュエーションでのシミュレーションである。
さすがに楓舞1141-MPSの方も、アリシアにあわやというところまで追い詰められた経験を活かし、しっかりと対処してきた。
それにより、アリシアも善戦はするものの楓舞1141-MPSに勝つことはできないでいた。
けれど彼女は諦めない。だが、それが大事でもあった。
テロリストはテロを成功させるためにありとあらゆる手段を講じてくる。テロに対処するためにはそんなテロリストの対抗手段を上回り続けなければいけないのだ。
これは決して容易なことではないもののだからといって諦めてしまえばテロに屈したことになる。そういう意味でも人間的な発想であの手この手の対抗策を練ってくるアリシアは絶好の相手と言えた。
その中で、アリシアは、自らが経験したデータを基に再現した<ハッキングツール>まで用意してみせた。
最初はそれをそのまま使ったが、自身がテロリスト相手にやってみせたように寸でで躱され反撃された。
そこで次には、袖口に隠して狙ったが、これも、端子が射出されてそれが確認できてからでも対応できる楓舞1141-MPSの反射速度の前に敗れ去ったのだった。
「悔し~っ!」




