人間の歴史の負の部分
どうあっても人間を<悪>と断じたい者は、人間の歴史の負の部分しか見ない。本当に人間が愚かで悪辣なだけであれば、そもそもここまで生き残れなかっただろう。
目を覆いたくなるような惨状があったことは事実だとしても、その陰に隠れて英知が発揮されてきた事実もあったはずだ。そういう部分から目を背けて人間を断罪しようとしてるのは、ただ自分が誰よりも高みにいると思いたいだけの、ある種の<中二病>ではないだろうか。
そんなごく一部の思い上がった者の判断だけで人類の行く末を決められるなど、それこそが『愚か』というものだと思われる。
人間は神と呼ばれるような全知全能の存在ではないのだから過ちも犯す。しかしそれだけではないのも事実なのだ。
確かに、日がな一日悪口雑言を垂れ流しているだけの者などを見ていると絶望もしたくなるだろうが、もし、自分の身の回りにそういう者しかいないのであれば、それは自身がその者達と同類であることを疑った方がいいかもしれない。
類は友を呼ぶのだから。
エリナ達は、おそらく、歴史上で見ればこれといって名を残すこともない無名の有象無象の一人だろう。しかし、今、アリシアの身近にいる者達は、歴史の上では<名もない泡沫>でありつつも、確かに人間の幸せに資するために自身の存在を賭けている者達なのだ。
たとえ戦闘用のロボットを作っているとしても。
テロから人命を守るためにできることをしようとしているだけである。
人道を説くことでテロリストの説得を目指す者がいてもいい。しかしそれだけでは目先のテロから人の命を救うことができないものやはり現実というものだ。だからこそ楓舞1141-MPSは生みだされた。
彼の途方もない戦闘力は、テロリストの命も奪わずに制圧することを目指してのものでもあった。
現時点ではただの理想論に過ぎなくても、瞬間的に圧倒し制圧することで生きたままテロリストを捕え法の裁きを受けさせることも目的の一つとしている。
正直、この取り組みも、JAPAN-2社内でも正式に目指すことになったのはつい最近のことだ。準備を始めたどころかその<準備>を始める前段階の状態だと言えるかもしれない。なので理念を高く掲げながらも目の前の一つ一つの問題に対処していこうとしている。
ちなみに、日がな一日悪口雑言を垂れ流しているようなタイプの人間は、少なくともメイトギア課においては一部の例外を除いて重要な仕事を任されることはない。とは言っても、別に社会的に排除されるわけじゃない。
ただ、そういう形で他人とトラブルを起こしてもJAPAN-2社本体にはさほど影響のない部署に配属されるだけである。
<リサイクル資材回収業務>といった部門だが。
その処遇に不満を抱く者もいるものの、それは、
『悪口雑言を垂れ流し他人と無用な諍いを起こす』
という行状について正当な評価が行われた結果なので、自身の処遇を改めたいのであれば自らの行いを見直すべきであろうと思われる。




