アームドエージェント、お披露目される
獣型メイトギア<アームドエージェント>は、要人警護仕様のメイトギアをさらに突き詰めた、<戦闘用メイトギア>でもあった。獣の形をしているのも、戦闘力という面では人間型よりもやはり有利なのでは?という発想からである。
頻発するテロに対抗するために高い攻撃力が求められ、かつ、どうしても大型化の傾向があった戦闘用レイバーギアや、そもそも戦車に近い運用方法が想定されているランドギアでは狭い屋内での柔軟な対応力という点では難があり、しかし人型のメイトギアでは成しえなかった相手の意表を突く戦術などを取り入れることも求められた結果、第一ラボは<獣型メイトギア>という結論に達したのだった。
しかし、今回のように従来とは全くことなる形状を与えるというのはノウハウの積み重ねもないことであり、大変な冒険でもあっただろう。事実、生み出されたアームドエージェントはすぐには起動しなかったのだから。
それを起動に導いたのは、やはり千堂アリシアの力が大きかったのだと言わざるを得ない。
「では改めて紹介します。アームドエージェント。楓舞1141-MPSです」
千堂アリシアの語り掛けにより起動に成功したアームドエージェントは<楓舞1141-MPS>と名付けられ、役員にお披露目された。
この時に列席した役員の中には、当然、千堂京一の姿もあった。
千堂が問う。
「それで、この機体で何ができるのかね?」
「従来型のメイトギアでは、人間型であるが故に攻撃方法などがテロリストなどに推測されやすかったという弱点がありました。しかしこちらのアームドエージェントでは、敢えて獣型の形状を採ることによりテロリストの予測を上回る柔軟な戦術を可能としています」
「具体的には?」
さらに突っ込んで尋ねてくる千堂に、エレナ・バーンズはニヤリと不敵な笑みを浮かべ、言った。
「それについては、ここにおられる千堂氏が遭遇なさった<クイーン・オブ・マーズ号事件>にこそ答があると申し上げます」
「……!」
ややセンシティブとも言える単語を出してきたエリナに、その場にいた役員の一人が、
「君! それはいささか不謹慎というものじゃないかね?」
険しい表情で苦言を呈した。だが当の千堂は、それに対して手をかざし制した上で、
「聞こう。どういうことかね?」
と正した。
するとエリナも、引き締まった表情で、言ったのだった。
「テロリスト<クグリ>と、我が社のメイトギア<アリシアシリーズ>との戦闘記録を解析すると、クグリは明らかにメイトギアの戦闘パターンを読んで対応しているのが分かります。これが、人型のメイトギアの最大の弱点であると私達は考えました」