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メイトギアの功罪2

このように、農業や漁業など一部の職種においては完全にメイトギアにやらせてしまうということができてしまうこともあり、実は、


<将来なりたい職業>


というアンケートがとられると、農業や漁業が上位に来るという現象が起こってもいる。要するに、メイトギアに作業をさせて自分は悠々自適に暮らしたいという願望の表れなのだろう。


一応、行政としてもその辺りは監視もしているものの、それこそ時々現場に出て作業をしているフリをしていれば、


『メイトギアにはあくまでサポートをしてもらっているだけ』


という体裁が整えられてしまうので、有効な対策が打てない状態ではある。


加えて、そのような脱法行為で誰が苦しめられるのか?と訊かれれば別に誰も直接は困らないので、あまり深刻に受け止められていないのだ。


仕事はメイトギアに任せて自分はニートのごとく振る舞っていても、メイトギアが働いているから税金も保険料も納められ、本当に誰も困ってはいない。


が、そうやって人間が怠惰になってしまうこと、今度は<種>としての人間の活力が失われてしまい、それはやがて、緩慢な、


<種としての死>


を招くという指摘も、一部の専門家からは出ている。


ただこれについては反論もあり、


『そこまで怠惰に陥ってしまう者は実際には一部に留まる。一般的には長期間の怠惰な生活には耐えられないタイプの人間もおり、そういう者は一時的に怠惰になったとしても、それに飽きるとまた自己の確立を求めて自ら働き始める』


と唱える専門家もいる。


事実、数十年の間、メイトギアに仕事を任せきりにしていた人物が、それによって得た資金を元手に起業したという事例も現に存在する。


また、主な仕事はメイトギアに任せつつもあくまで趣味や暇潰し程度に農作業を手伝っていたらその魅力にはまってしまって、農業に関する博士号までとって専門家になった者もいる。


それらはあくまで例外的な存在としても、現にそういう事例がある以上は単純に切り捨ててしまえばいいという判断には至らないだろう。


人間が生きていくためのリソースが十分でなかった時代には敢えて切り捨てるという判断が必要だったかもしれない。


しかし現に生きるために必要なリソースがあるのだから、それを理由に切り捨てる道理はないのだ。


なにしろ、火星戦争が勃発した当時でさえ、入植者達が生きる分には十分なそれがあった。にも拘らず戦争になったのは、単純に都市間(それぞれの都市の後ろ盾になっていた国家間)の利権争いでしかなかった。


<生きるための戦い>


ではなく、


<我欲のぶつかり合い>


でしかなかったのである。



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