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メイトギアの効用2

なお、メイトギアの職場への導入には、


『いわゆる障碍者の雇用に資する』


という形もかつてはあった。


つまり、障碍を持った従業員のサポート役としてメイトギアを配することによって、他の従業員が障碍を持つ従業員のサポートに回ることで生産性が下がってしまうというジレンマの解消にも寄与したと言われている。


もっとも、これについては、医療技術の進歩により障碍が軽減されるにつれ負担割合も減り、現在では極めて限られた事例でのみの運用となっていたが。


なお、現在の医療技術は、遺伝子疾患の九割を完治させることができ、再生医療の進歩により失われた肉体の機能さえほぼ回復させることができると言われている。


それは、四肢欠損はもとより、疾病により機能不全に陥った内臓さえ再生させることができるのだ。


故に、倫理的にも難しい面を抱えていた臓器移植も過去のものとなっている。なにしろ、先天的に心臓に疾患を持つ事例であっても、問題のある部分の細胞を健康なそれで補うことによって機能を回復させることができるのだから。


元の細胞に遺伝子的な問題があったとしてもそれ自体を治療した上で置き換えるので、当然、健康な組織となっていく。


なので、ガンなどももはや軽い風邪と大差ない疾患となっていた。


しかしそれでもなお、不老不死の実現には至っていない。ある程度は老化を抑制することで、百二十年以上、健康な肉体を維持することが可能にはなったものの、その効果が切れるとその後は普通に年老いていき、およそ二十年から三十年ほどで寿命を迎える。


これについては研究も進められているものの、一足飛びには行かないようだ。


それでも、認知症の類も克服されており、老化による認知機能の低下はあっても、自身の名前すら思い出せなくなるような事例はまずない。


終末ケアについても進歩しており、たいていは穏やかな最後を迎えることができるようになった。


人間のように感情を持たないことで苦痛を感じることのないメイトギアは、認知症患者の介護でも活躍したという。


何しろどんなに理不尽なことをされてもまったく堪えないし、何度同じ話を聞かされても常に穏やかにその話に耳を傾けることができるので、患者自身の負担も大きく減らすことができた。


また、この際に研究が進められたメンタルケアが、日常の中でも役立てられている。


メイトギアが穏やかな笑みを湛えているのもこのためだ。


初期の<アンドロイド>と称された人型ロボットはどうしても強い不自然さがあって、それは<不気味の壁>などとも評されたものの、現在ではその部分も解消されていると言えた。


ただ、それでも、千堂アリシアの主人の千堂京一(せんどうけいいち)のように、メイトギアが浮かべる笑みに嫌悪感を覚える者は一定数いて、現在もそれについての研究も行われてはいるのだった。



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