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エリナ・バーンズ、アリシアに助けを請う

就業時間まであと一時間となった頃、やはり暇を持て余していたアリシアに、


「千堂さん! ごめんなさい。少し手伝ってもらえますか?」


と、パーテーションの陰から覗き込んで声を掛けたのは、第一ラボの技術者、エリナ・バーンズだった。


「は、はい!」


不意に声を掛けられて戸惑ったものの、アリシアは席を立ち、第一ラボに向かったエリナの後をついていく。


エアシャワーを浴び、クリーンルームに入ると、そこにはどこか動物を思わせる、しかし一見してロボットと分かるものが台の上に乗せられていた。


シルエット的には猫科の大型獣のようでもある。


それについて、エリナが説明する。


「この子は、第一ラボが今開発中の機体なんだけど、どうも拗ねちゃったみたいで起きてくれないの。だから同じPAの千堂さんならと思って。この子と話をしてもらえる?」


『この子』と、まるで本当にペットか何かについてのように獣型ロボットについて語るエリナだったが、アリシアはその部分は気にする様子もなかった。


なお、<PA>とは、パーソナルエージェントのことで、先にも述べたとおりJAPAN-2(ジャパンセカンド)社内における人型(もしくはそれに順ずる)ロボットの総称である。


自分の前で台の上に臥せってまったく動こうともしない獣型ロボットに、アリシアは戸惑うこともなく、ややしゃがみこむようにして顔を寄せて、


「こんにちは。はじめまして、千堂アリシアです」


と話しかけた。


もっとも、それは人間に見せるためのデモンストレーションの一種であって、これと同時にロボット同士の通信によってアクセスもしている。


しかし反応がない。そんな様子に、アリシアは顔を上げて


「こちらからのアクセスを拒絶してます。表層部分でブロックされてますね。確かにこれは、人間で言うところの『拗ねてる』状態だと思います」


とエリナに告げた。


なお、<心のようなもの>を持つアリシアはともかく、そういうものを持つとはされていないロボットが『拗ねる』などおかしな話のように思うだろうが、非常に高度に進化し極めて複雑な思考を行うようになったAIを搭載するロボットは、特に試作段階においては、様々な部分で論理的衝突が発生し、フリーズに近い状態になることがある。


人間で言うなら、


『あれやこれや面倒臭いことがのしかかってきて嫌になり頭が働かない状態』≒『拗ねている』


といった感じか。


しかし、今のAIは二十一世紀頃のパソコンとは違い、独立したいくつものAIが複合的に組み合わされて一つのAIを構成していることもあり、完全に停止してしまったりはしない。ただ、外部からの入力を極力減らし内部での処理を優先するため、外から見ると反応していないように見えるだけである。



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