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やっぱり犬なのか?

ちょいエロです。

 次の朝、閻魔は久しぶりに工房の鍛冶場に篭っていた。

 今作っているのは出刃包丁。

 鍛冶魔法があるから、一度槌を打つと一回の工程が終わってしまうという結構楽な作業だったりするのだ。

 一度打つと、折り返しから焼き入れまで終わった鋼になる。

 魔法を発動させたままひたすら槌を打つだけで、折り返し作業が継続して行われる。

 カーンッ

 カーンッ、カーンッ、カーンッ、カーンッ、カーンッ、カーンッ、カーンッ、カーンッ、カーンッ、カーンッ、カーンッ、カーンッ、カーンッ、カーンッ、カーンッ、カーンッ、カーンッ、カーンッ、カーンッ、カーンッ

 五分くらい続けると、もう何層になっているかわからないくらいになっていた。

 鋼としてはかなりのものになっているだろう。

 これは日本刀の作り方を模して行っている。

 まぁ、包丁なので刀よりは適当だったのだが。

 それでも最終的に手数を多くすればそれだけいい品質のものが出来上がるのだ。

 最後に鍛冶魔法の研ぎ。

 柄をつけて出来上がり。

 ものの10分くらいで仕上がってしまう。

 紙を縦に持ってすーっと包丁を滑らせる。

 それだけで薄い紙が切れてしまうくらいの切れ味。

 グレードがどうだったかは、包丁の根元を見ると解る。

 閻魔大王作、と刻まれていた。

 もちろんマスターグレードである。

 本来ならエンマと刻まれるのだが、マスターグレードになったときだけ銘を変更できるのである。

 この辺はゲーム自体の遊び心がそのまま継続されている感じだった。

「よし、いいものが出来上がったな」

 これで都合10本目。

 これが銃よりも売れるのだ。

 前に遊びで作ったものをマネキンに登録したら、一日で全部売れていた。

 武器として使っても良し、料理で使っても良しの良作なのだ。

 ちなみに、銃を作るときは各部品を作って用意し、大き目の槌で魔法を発動させて叩くだけ。

 刀などよりは部品数は多いが、簡単なのである。


 なんで包丁をまた作り始めたかというと、ナービスから言われたあの言葉。

【鍛冶屋なのに売れない銃しか置いてないという】

 ショックだった。

 ゲーム時代は結構売れていたのに、この世界では全く売れていないなんて。

 ガンナー自体が保護動物化扱いをされているようにも思えてくる。

 弾丸はストックが腐るほどあるし、銃は自分が使うくらいを作ればいいと思った。

 だから包丁を作り始めたのである。

 仕事をしなくても暮らしていけるほどのお金は持っている。

 でも鍛冶屋としてのプライドが許さないのだ。

 剣や槍などは打てばいいものが仕上がる自信はある。

 しかし、売れるとは限らないのだから作る気が起きない。

 包丁などは使う人の数が剣などより明らかに多い。

 フライパンなんて、一度槌を打てば仕上がってしまうから大量生産も可能だ。

 店を存続させるために、いっそ家庭用品の鍛冶屋としてやっていったほうがいいかと思ってしまったのだ。


 一仕事終わって、部屋で休んでいると店に人の気配が感じられた。

 おかしい、奥まで入ってくるみたいだ。

 布団に隠れて様子をみることにした。

「おかしいな。ここのはずなんだけど……」

「なんだ、ロレッタちゃんだったのか」

「あ、おじさんだ。えいっ」

 布団から出た閻魔にダイブしてくるロレッタ。

 慌ててロレッタを抱き止めた。

「ちょっと、ロレッタちゃん。なにしてんのさ」

「あのね、チロルちゃんが元気になってね、ナービス先生もね明るくなったの。だからお礼」

 まさに犬。

 閻魔の顔を舐めてきたのだ。

「うわ、ちょ、くすぐったいってば」

 ときおり唇の上を通過するのが困る。

「ちょっと、唇舐めてるって。それじゃキスしてるのと同じだってば。もっと自分を大切にしなさい」

「ん? あっ、そうだった。じゃ」

 んちゅっ

 なんと、唇同士が重なっている。

 もろキス状態。

「んむー! なにろしれあろろ」

 間違って口を開けてしまった。

 更にロレッタの下が絡んでくる。

「あむあむっ、んっ、ぷぁ。れろ、んはっ。えへへへ。これで気にならないよね?」

「なんで、また?」

「だって、おじさん。あたしのこと可愛いって言ってくれたし」

「そりゃ言ったけど」

「だったらいいでしょ?」

 ちゅっ

 やばい、やばすぎる。

 ロレッタの目がとろんとしてきた。

 ちょっと長めの舌が閻魔の唇をこじ開けてまた入ってくる。

「あむ、あむ。んふぅ」

 鼻息まで荒くなってきた。

「ちょっと、まずいって。ロレッタちゃんストップ、ストップ」

「あ、またここ腫れてるよ。痛いの?」

 ロレッタが股間を見ながら優しく擦ってくる。

「お願いだからちょっと、やめってー!」

 なんとかこの場から逃げる方法はないか。

「あ、あれしかない。テレポートセルフ〔俺の家〕」

 みょーん

 相変わらずの変な音と共に、一瞬で店の売り場に転移できた。

「あ、あれ? おじさん?」

「今だ!」

 ロレッタをシーツで簀巻きにする。

「おじさん、お願い」

「駄目」

 背から抱くようにして、動きを止める。

「あのね。そうしてくれるのは俺も嬉しいよ。でもね、好きあった同士じゃないと駄目」

「あたしね、おじさんのこと好きなの」

「それは気の迷いじゃなく?」

「うん。大好き」

「あー、困ったな」

 実際、これがゲームだと思っていたらやっちゃってたかもしれない。

 間違いなく、この後無茶苦茶えっちしました、ってなったかもしれない。

 でもこれは現実だ、だから困ったのだ。

「駄目?」

「駄目ではないんだけど、俺がお金持ちだから?」

「ううん、お金なんていらないの」

「そっか」

「あのね。チロルちゃんに薬を飲ませようとしたときね、飲む前に味見したでしょ?」

「うん」

「優しい人だなーって思ったの」

「あー、そんなとこ見てたのね」

 これがあらかじめ用意されたセリフだとは考えられない。

 閻魔は、これは現実なんだと再確認する。

「チロルちゃんがね、薬を飲んでたときの目もね、とても優しかったの」

「そっか」

「それでね、膝枕してるときにね、おじさんの顔見てたらね」

「うん」

「胸のあたりがね、きゅーって苦しくなったの」

「あー……」

「それでね、ナービス先生がいなくなったらね。おじさんの唇にね、何度もキスしたの」

「ありゃ、もうされちゃってたのね」

「うん、ごめんね。そしたらね。横向いちゃったから頭撫でてたの」

「うーむ。困ったもんだ」

「たぶんね、ナービス先生もね、おじさんのこと好きになっちゃってると思うの。だからね、取られたくなかったの」

「うは。まさかー」

「おじさんが帰ったあとのナービス先生の目。すごく幸せそうな目してた。あたしも女の子だからわかっちゃったんだ。ナービス先生も、おじさんのこと好きなんだなって」

 ちょっとだけロレッタを強めに抱いた。

「あのね、ロレッタちゃん」

「うん」

「俺はまだロレッタちゃんのことをよく知らない。それはナービスさんも同じだよ」

「うん」

「俺は何も、こんなことしてほしくて、優しくしたわけじゃない。いや、男だからないとは言えない。でもね、俺実は彼女に振られたばかりなんだ。だからまだ女性がちょっと怖いんだ」

 それだけではなかった。

 もし万が一、こっちの世界で愛する人ができてしまったあと、もし、何かの拍子で元の世界に戻ってしまったら。

 閻魔は耐えられないと思う。

 だから怖いのだ。

 こればかりは、言っても信じてもらえないだろう。

「そっかー」

「でもね、嬉しかったよ」

「うんっ」

「今度あんなことを無理にしたら、またさっきみたいに逃げちゃうからね」

「うん、あれはずるいと思った」

「あははは。逃げることに関しては俺も得意なんだよ」

 閻魔はゲーム時のステータスを筋力と回避を極振りしているのだから。

 回避特化型のガンナーとして、変態と言われた時期があったくらいだ。

「俺はね、ロレッタちゃんも、ナービスさんも、チロルちゃんも幸せになって欲しいと思ってるんだ」

「うん、ありがと」

「だからね、おじさんはやめてほしいな……」

「んー、だったら、お兄ちゃん」

「それ、ぞくぞくくるから……」

「えへへ。あのねお兄ちゃん」

「んんん、ん?」

「ナービス先生からもちゃんと逃げてね」

「それも本当なら困ったもんだ……」


 閻魔は、もう大丈夫だろうと思ってロレッタを開放した。

「お兄ちゃん、さっきはごめんね」

「いいよ。俺もちょっと嬉しかったし」

「えへへへ」

 ロレッタは無意識に立膝になった。

 そのとき見えてしまった。

「ちょっと、ロレッタちゃん」

「ん?」

「下着、濡れて透けちゃってる……」

「ほんとだ。ちょっと気持ち悪いかも。でもなんでこんな風になっちゃったんだろう……」

 そう言いながらロレッタはショーツのクロッチの部分を横に引っ張ったもんだから。

「いや、そういう意味じゃな、ぐはっ」

 閻魔は鼻を押さえてベッドに倒れ込んだ。

「お兄ちゃん、どうしたの? 大丈夫?」

「いや、ロレッタちゃん。下着の中、見えちゃってるから……」

「あっ、お兄ちゃんのえっち……」

「見せたんでしょうに……」

「全部見られちゃったし、もうお嫁さんにもらってもらうしかないかなー」

 わざと棒読みするような言い方で閻魔をからかうロレッタ。

「勘弁してー……」


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