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おまけ 復活せよカーチャン

もう書かないとは言ったが、書いてあったものを投稿しないとは言っていない!

というわけで、続編用として書いたけどボツになった原稿を発掘してみました。

捨てるのももったいないので投稿しちゃいます。

ボツ原稿なので期待しないでくださいね(保険)。

 これまでのあらすじ


 数千年前、栄華を極めたチモワシカ帝国は度重なる潮騒動により滅亡の危機に瀕していた。女王カーチャン47世は伝承に従い、神殿の地下深くに眠る秘法を目覚めさせる決意をする。

 カーチャン47世と息子のカーター21世は宇宙人よりもたらされたヴァーチャルマシンを用いて異世界へとダイブし、伝説の秘宝ユースを目覚めさせることに成功した。だが……その代償としてカーチャン47世は廃人となり、現実世界へ帰還することはなかったという。


 やがてチモワシカ帝国が神話として語られるほどの時が流れ……その神殿跡に6人の冒険者が足を踏み入れるところから物語は始まる。






 目の前には石でできた棺があった。

 ここはチモワシカ帝国の神殿跡の奥深く。

 ようやく……たどり着けたんだ。


「兄ちゃん、あれがそうなのかな?」

「そうだなユース、きっと間違いないぞ」


 俺は震える手で石棺の横を手でなぞる。

 古代ンチャーカ語でkswmtと彫られている。


「よし、目覚めさせよう」

「うん。みんなが犠牲になって取ってくれたこの道具を無駄にしないよ……」


 ファームさん、クーピーちゃん、ニャニャーゴ、あと名前知らない聖騎士……。

 俺たち頑張るよ!


 壁画にはこう書かれている。


――太陽昇りし時、月の光を捧げよ――


 石のフライパン、古代竜の卵、悪魔の瞳、千年樹の汗……これらを用いて謎を解くのだ。

 まず石のフライパンは、ちょうどこれを置けるくぼみがある。

 これを手に入れた時のファームさんの最後の言葉が脳裏をよぎる。


『なるほどな、こういう仕掛けになっていたのか……。はああああああああーんっ!』


 罠を解除して油断した直後に二重の罠があったんだ……。

 その犠牲のおかげで俺たちは助かった。


 そしてフライパンの上に千年樹の汗……油かな? を垂らして古代竜の卵を割って落として……。

 この2つをとる時に犠牲となった2人のことはよく覚えていない。

 というか……いつの間にかいて、いつのまにか倒れてた。


「兄ちゃん、もうすぐ日が昇るよ。急ごう」

「そうだな、あとはこの悪魔の瞳を置くだけだ。きっとあの場所だな」

「うん……クーピーちゃん……」

「そうだな……」


 ゆうすけの恋人であるクーピーちゃん……。

 悪魔の催眠攻撃で混乱してしまい、用事を思いついて帰ってしまったのだ。

 帰る直前に悪魔が呼びとめてメアド交換をしている隙に悪魔を倒すことに成功したが、くーぴーちゃんはそのまま帰り、ユースの心は深く傷ついてしまった。


「ユース、悲しんでいる暇はない。やるぞ」

「うん……じゃあ悪魔の瞳を置くね」


 悪魔の瞳は名前に似合わず透明で美しい……まるでレンズのようだ。

 つまり、太陽の光がこのレンズで一か所に集められてフライパンが熱される。

 そして待つこと1時間……香ばしい香りが部屋に立ち込め、目玉焼きが完成した。

 これこそが、壁画に描かれている月の光だ。


「兄ちゃん、棺が開いていくよ」

「そうだな……」

「中にいるのは……きっとそうだよね?」

「ああ、間違いない。母さんだ……」


 石の棺が開き……その中から人が起き上がる。

 この日を何千年待ち続けたことか……。

 そしてその人……母さんは口を開いた。


「タカシ、ゆうすけ、宿題は終わったのかい?」

「母さん……寝ぼけてるね」

「あれれ? 私どうしたんだっけ?」

「母さんはエターの呪いに囚われていたんだよ。だから助けに来たんだ。母さんが以前、僕をそうやって助けてくれたようにね」


 そう……俺の弟ユースは、心に誓っていた約束をようやく果たすことができたのだ。

 俺たち3人は抱き合い、再会を喜び合った。

 そして目玉焼きは美味しく食べました。


『最果てにて黄身を待つ母』ミッションコンプリート!



   ***



 俺は最近小説を書くのにはまっている。

 それと言うのも、以前やったエターナルノベル大賞に応募した作品がちょっとした賞をもらえたからだ。

 順位では7位だったのだが、他の小説が戦闘を主に描いている中、母さんのほのぼの冒険を描いたことが評価されて特別賞をもらえた。

 だから他にもいろいろ書いているわけだ。


 しかし現実は厳しい。

 母さんの話をそのまま書いたらえらく評価されたが、オリジナル作品はどうもうまくいかない。

 今書いているチモワシカ帝国の秘宝もさっぱり評価されないしな……。

 やはり母さんを追っているのが一番いいのかもしれない。

 俺も楽しいし。


「タカシー、来たよー」

「おーい、兄ちゃーん」

「お兄さーん」


 いつもの3人が手を振りながらやってきた。

 他にもギルドメンバーが俺の元へ続々集まってきている。

 今日の主役は母さんでなく、なんと俺だったりするんだ。

 例の小説の特別賞の賞品が届いたので、みんなの前でお披露目する。

 なんでもこの賞のために作られた、このゲーム世界で唯一の装備となるらしい。


「兄ちゃん、みんな集まったみたいだよ。早く見せてよ」

「ふふっ、ユース君ったら興奮しちゃって」

「よくわかんないけど、タカシが強くなれるのだといいねえ」

「よし、じゃあ出すぞ!」


 開けるまで中身のわからないサプライズ箱をいざ開封だ!

 出てきたアイテム名は『月光の籠手』腕につける装備のようだ。

 満月をあしらったような装飾が施されている。


「まず名前だ。月光の籠手という腕装備だぞ」

「おお! げっこう、げっこう! かっこよさそうだねえ」

「応募した小説の内容が反映されたのかな?」

「きっとそうだね。だとしたら……MP回復の効果があったりするんでしょうか?」

「よし、今効果を見るぞ」


 名前はそれなりにかっこいい気がする。

 見た目も和風でかっこいいぞ。

 肝心の効果はと……。


「えっと……目玉焼きの真の味がわかる……」


 俺がアイテムの説明を読むと、あたりはまるで時間が止まったように静まりかえった。

 そして……大爆笑の嵐が巻き起こる。

 

「目玉焼きって……ぷぷぷ……ごめん兄ちゃん」

「ユ、ユース君。笑ったら失礼……うう……」

「よーし、じゃあ作るから食べてね。げっこう、げっこう」

「おいみんな、カーターの称号を見てみろ!」

「すげえ! 目玉焼きマイスターだってよ。ぷぷぷ……」


 俺は期待が打ち砕かれ……石となって固まってしまった……。

 こんなネタ装備を作った運営には抗議デモだよ……。



 2000年後、石の呪いが解けた俺の前に目玉焼きが差し出された。

 とりあえず月光の籠手を装備してみる。

 あれ? すっげえいい匂いがするぞ。

 おそるおそる目玉焼きを口にすると……。


「んっまあああああい! なにこれ! 目玉焼き超うめえっ!」

「あらあら、タカシってばお行儀悪い食べ方して」


 今まで笑っていたやつらが、俺を見て笑うのをやめた。

 俺はと言うと、涙が出るくらい感動している。


「お、おいカーター。俺にもその籠手貸してくれよ」

「悪いがこの装備……人には渡せないアイテムなんだ」

「くうっ……やっぱりか。じゃあどんな風に上手いのか教えてくれよ」

「そうだな……俺はもう一生目玉焼きだけで生きていくよ」

「そ、そこまで言うのか? なあ、いつだったか一緒にドラゴンの肉を食っただろう。あれよりもうまいってのか?」

「あったなあ。きっと今食ってもドラゴン程度じゃまずいだろうなあ」


 強がりでも何でもなく、本気でこう思っている。

 今度から卵とフライパンを常備するとしよう。

 あ、でも母さんが使っている守り神鳥の卵だからおいしいのかもしれない。

 母さんにたくさん作ってもらうか。


「兄ちゃんよかったね。でも目玉焼き中毒には気をつけてね」

「お兄さんすごいです。醤油もソースも無しでそんな美味しく食べられるなんて……減塩もできますね」

「ああ、ありがとう。いいものを手に入れたよ」

「ところでそれ、ステータスの上がり方も変わるの?」


 どうだろうか?

 確か普通の目玉焼きはHPが少し上がっていたはずだ。

 今のステータスを確認すると、なんと全パラメーターが上昇していた。

 高級料理にはさすがに負けるが、これは経済的でいいぞ。


「ああ、そこそこ強くなれるみたいだ。もしかしたら月光焼きそばとか食べればもっと強くなれるかもしれない」

「へー、うらやましいなあ」

「じゃあ今から焼きそば作りますね。お母様、一緒に……」

「あいよー!」


 クーピーちゃんと母さんの合作、月光焼きそば……要は焼きそばに目玉焼きが乗ったものが完成した。

 これも超うめえ!

 一緒に食べることで、焼きそばもすごい美味しく感じられる。

 食事効果も先ほどよりいいみたいだ。

 いつか母さんにはドラゴンのステーキ目玉焼き乗せを作ってほしい。


「よーし、じゃあ今日も冒険いくかー」

「おー!」


 というわけで俺の目玉焼き試食会は終了。解散だ。

 今日も母さんと弟とその恋人と冒険するぞ。

 俺の願いはひとつ……また面白いことが起こりますように!

というわけで、これでもう出し切りました。

今度こそ完全に終了です。


誰か続きとか似たような話を書いてくれたらいいのにと思う今日この頃です。

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