18.カーチャンよ永遠に
さあ、今日はゲーム内の夏祭り。
題して『エターナルフェスティバル』略してエタフェスである。
キャッチコピーは『一度でいいから見てみたい、君がエタっているところ』だ。
さあ、俺たちの出店しているかしわもち屋はと言うと……。
「焼きそば出来ましたー」
「ゆうすけ、げっこう。ほら、げっこう」
「うん。それでは月光焼きそばお待たせしました。400Gになります」
かしわもちとクーピーちゃんの合作、月光焼きそばはよく売れている。
理由としてはまず、売っているホビホビ族の子2人が可愛いというところだろうか。
そして決定的な理由は、かしわもちによるパフォーマンスだろう。
ほかの店では完成品を並べて売っているのだが、ここでは注文を受けてから作っている。
それで味が変わるわけではないが、雰囲気は大事だ。
「かしわもちさーん、次は違うの見せてー」
「よーし、じゃあ次はサマーソルトげっこういくよー」
「おー! そんなのまでできるのか」
かしわもちが卵を上空に放り投げると、空中で卵が割れた。
そこにフライパンを持ったかしわもちがバク転をする。
着地したかしわもちの手には、目玉焼きがのったフライパンが握られているのであったとさ。
「すげー!」
「かしわもちさんサイコー!」
「俺の月光焼きそばはそれで頼む!」
うーん、いい盛り上がり。
種明かしをすると、透明になった俺がかしわもちの体を持って回転させている。
上空の卵は見えない石つぶてを飛ばして割っている。
まさに縁の下力持ちな俺であった。
商売繁盛!
「次のお客様はなんにしますか?」
「あ、月光焼きそばとかしわもちかしわもちくださーい」
「はーい、少々お待ちをー」
かしわもちかしわもちとは、かしわもちのもちの上にかしわもちのイラストの焦げ目がついている。
呼ぶのが面倒な名前である。
他にも母さんの味が染みた焼きトウモロコシとかを、ギルドメンバーが売っている。
食べ物以外だとゆうすけの作った木の彫刻も売っている。
キリンの背中にかしわもちが乗っている……その名もかしわもジラフ。
これがそこそこ可愛く、結構売れている。
みんなでわいわいと楽しく商売、楽しいものだ。
そして用意したものが売り切れたので、あとは各自祭りを見回ることにした。
ゆうすけはクーピーちゃんを誘ってどこかへ行くようだ。
かしわもちは、時間が少し取れたという父さんとデートするそうな。
俺がやるべきことはただ一つ、ゆうすけを見守ることであろう。
浴衣を着たクーピーちゃんはなんとも可愛らしい。
ゆうすけを少しうらやましく思いつつ後をつけていく。
リンゴ飴を食べつつ、人気のないところへ……。
ここで俺ははっと気付いた。
のぞきなんて兄として最低だな。
ゆうすけに心の中で応援をしてこの場を離れる。
さて……どうしようかな。
最近はほぼかしわもちを見守ることしかしてなかったので、何をしていいかわからない。
何気に俺って寂しいやつ?
ギルドメンバーで暇そうな人を探そうか……。
残念ながらファームのおっちゃんしか見つからなかった……。
「おうカーター、余った焼きトウモロコシ食うか?」
「うん、もらうよ」
「それにしてもユースのやつはすみにおけんな。あんな可愛い子とデートするたあうらやましい」
「あいつは何気に世話好きだからね。それで惚れたみたいだよ」
「なるほどな……じゃあ正解だったな」
「なにが?」
「すぐわかるさ」
なにか含みを持った言葉を言うファームのおっちゃん。
面白いことだといいけど。
そこへ、ゆうすけとクーピーちゃんが戻ってきた。
なんか手をつないでおられあらせまするぞ?
「兄ちゃん、僕クーピーちゃんとおつきあいすることになったよ」
「そうなんです。これからもよろしくお願いしますね、お兄さん」
「そ、そうなんだ。おめでとう……。つきあうってのはゲーム内だよな?」
「もちろんだよ」
夏祭りで告白して付き合うことになったわけか。
う、うらやましくなんてないんだからね!
それにしてもゆうすけ、ちょっと前までは自分に自信がなかったのに今は問題なさそうだ。
バイトをし始めたことで自信を持ったのだろうか?
「おうユース、こんな可愛い子つかまえやがって。大切にしろよ」
「うん、ありがとうファームさん」
「クーピーちゃんだっけか。こいつはいいやつだから幸せにな」
「はい! ありがとうございます」
「ところでリアルでは会わないのか」
「それはまあそのうち……」
クーピーちゃんは顔を赤らめて答える。
もしご近所さんであれば、ゆうすけはリアルでも彼女持ちになれるわけか。
まったくもってうらやましい話である。
みんなでわいわいしていると、かしわもちもやってきた。
どうやら父さんはログアウトしたようだ。
「みんなー、なにしてるんだい?」
「この2人、つきあいはじめたってさ」
「えーーーーーーーー!?」
「そうなんだ、それと僕就職決まったよ」
「えーーーーーーーー!?」
「えーーーーーーーー!?」
付き合い始めたことに驚いたかしわもち。
さらに就職決まったと言い出して、かしわもちと共に俺も驚く。
いつの間に??
「よーし、んじゃあ説明するか」
「ファームさん? もしや……」
「そうだ、ゆうすけはうちで本格的に働いてもらうことになった。信用できる助手が欲しかったんだが、ゆうすけは条件にぴったりだ。タカシの弟でもあるしな」
「うん、兄ちゃんのおかげだよ。ありがとうね」
「お、おう……」
「うーん、ばたっ!」
展開の早さについていけなくなったかしわもちは、擬音を口にして倒れた。
きっと嬉しさで倒れたんだろうから大丈夫だろう。
かしわもちを介抱して、目覚めたところで話をまとめた。
と言っても、ゆうすけに彼女ができて仕事も見つかったという簡単な2つのことだ。
でも母さんにとっては大事件だろう。
じっくりと何度も聞き返し、ようやく理解したようだ。
理解すると今度は泣き出してしまったけど……。
「ゆうすけ……おめでとう……」
ようやくその一言が出せたようだ。
「ありがとう、母さん。僕がんばるから応援しててね」
「うん……おいしいものたくさん作るよ……」
「楽しみ……」
ふう、なんだかとんとん拍子に話が進んだな。
ゆうすけの成長が著しい。
これもすべて母さん……かしわもちがこのゲーム世界に来たおかげだろう。
この後俺たちは、夏祭りをみんなで楽しんだ。
***
さて、もうすぐ俺の夏休みも終わる。
あれからゆうすけは真面目に働いているらしい。
おっちゃんはもう一生働いて後を継いでもらう、と言うくらいゆうすけを気に入っているようだ。
俺も来年卒業したら働き始めるからゆうすけに負けないようにしないとな。
なお、俺の初給料が出たらゆうすけと協力して母さんに温泉旅行をプレゼントする予定だ。
これからどうなるかはわからないが、今の俺たち一家は幸せそのものだ。
ゆうすけがリアルでクーピーちゃんと出会って、その子がすごい可愛かったりするかもしれない。
母さんがゆうすけの侍に憧れてレベル上げをして、2人でダブル月光という技を開発するかもしれない。
ゆうすけに続いて俺が可愛い彼女を見つけるかもしれない。
てゆうか見つけたい。
でもそれはすべて……別のお話。
俺はこれまでの感動をほかの人にも伝えたくて、例のエタコンに応募する小説を本格的に書くことにした。
きっとみんな楽しんで読んでくれるに違いない。
タイトルはそうだな……。
【母さんがエタったワロタwwwwwwwww】
一部の人よりこの小説は問題があるのではないかと指摘されたので、一旦切りのいいところ完結させておきます。読んでいただいてありがとうございました。もし問題なければそのうち再開するかもしれません。




